《【書籍化】馴染彼のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった》手札はそろった

今のところ大道寺絵里花が疑っている様子は見られない。

アカウントも、ラインで花火が使ってる『flower_sou_honey』というものをそのまま用いたし、発言にさえ注意を払えばバレることはないはずだ。

俺はさっそく花火のふりをしてメッセージを送りはじめた。

花火の言葉の選び方、思考回路、顔文字を使うのが嫌いなこと、全部うんざりするぐらい頭に焼き付いているから、花火になりきるのは笑っちゃうくらい容易かった。

hanasou : 登録どうもです

hanasou : 家に來たって件ですけど、そのことについて話があって連絡しました

えりかち@リバ地雷死ねや : 話? なになに?o(^▽^)o

hanasou : 雪代先輩が來た時、他にも連れがいませんでした?

えりかち@リバ地雷死ねや : ! そう! あの、男子二人連れてきたんですよ! ありえなくないですか!?

えりかち@リバ地雷死ねや : 何いきものがかりやってんだよっていう(΄◉◞౪◟◉`)

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えりかち@リバ地雷死ねや : あれ? でもなんでそのこと知ってたんですか??Σ(-`Д´-;)

hanasou : 一緒にいた一ノ瀬先輩が馴染なんです

えりかち@リバ地雷死ねや : え!?

hanasou : それで大道寺さんの家で門前払いにされた後、うちに相談しにきたんですよ

えりかち@リバ地雷死ねや : えええええΣ( ̄。 ̄ノ)ノ

hanasou : だから「思い當たる點がなくても無自覚で傷つけたんじゃないですか? とりあえず謝ったほうがいいと思いますよ」って言ったんです

えりかち@リバ地雷死ねや : ∑(゜Д゜il!) ハゥッ!!

hanasou : そしたら明日みんなの前で謝るって

えりかち@リバ地雷死ねや : キタ━━ヾ(*・∀・)ツ━━YO!!!

やってもいないいじめについて謝るなんて、雪代のやつよっぽどメンタルやられてるんですねwwwww

えりかち@リバ地雷死ねや : だいたいいつも一人で本読んでるようなに私がいじめられるわけないだろっていうww

おまえこそいじめられるタイプだよww

えりかち@リバ地雷死ねや : それ謝ったからって許されないんですけどね∴ゞ(´ε`。) ブ!!

えりかち@リバ地雷死ねや : 謝罪させたあとの展開も今から楽しみすぎますヽ(。ゝω・)ノ★

hanasou : そのあとどうするかちゃんと覚えてます?

えりかち@リバ地雷死ねや : リスカ寫真を送りつけて、林間學校を中止にしないと教育委員會にめのことを訴えるって脅すんですよね!

えりかち@リバ地雷死ねや : ほんと名案すぎません!?

大道寺絵里花が的に教えてくれた計畫を見た途端、俺は頭を抱えたくなった。

自分たちの都合で多くの人間を巻き込もうとしているうえ、悪びれることなく嬉々として語るなんてどうかしている。

これ以上、大道寺絵里花と話したくは無いし、さっさと本題にろう。

えりかち@リバ地雷死ねや : 林間學校が潰れるとか最高です((o(^∇^)o))

どうせ派手系グループのやつらが仕切りまくるんだろうし゜з゜)、ペッ

それをみなくて済むだけでやる価値ありますよ

えりかち@リバ地雷死ねや : あとリスカはお手のなんで!^_−☆

hanasou : とりあえず明日謝るってことなんで、登校してくれます?

えりかち@リバ地雷死ねや : え? 私は行かないはずじゃなかったです?

hanasou : でも謝るとこみたくありません? 絶対おもしろいですよ

えりかち@リバ地雷死ねや : たしかに!!

hanasou : あと、あなたがその場にいて、「許せない」って泣いてくれたほうが、後の展開もスムーズに運ぶと思うんですよ

えりかち@リバ地雷死ねや : なるほど!じゃあ私、明日登校しますね☆〜(ゝ。∂)

hanasou : 一応擔任にも謝罪されることになったから、登校するって連絡しといてください

えりかち@リバ地雷死ねや : 了解です〜!( ˙³˙)

◇◇◇

翌朝。

教室に向かった俺は、すでに登校していた雪代さんに聲をかけた。

「ごめん、ちょっとだけいいかな」

文庫本を読んでいた手を止めて、雪代さんがこくりと頷く。

周囲の生徒たちが聞き耳を立てているのは気配でわかったので、雪代さんを連れてベランダに出る。

「ーー実は今日、大道寺絵里花が登校してくることになったんだ」

「……! 一ノ瀬くんが説得してくれたの?」

「説得というか……」

炙り出したというほうが正しいだろう。

「でも、これで全部終わらせられると思う」

そう伝えた瞬間、雪代さんはホッとしたように肩の力を抜いた。

いつも通りに振舞っているように見えても、きっと本當はすごく気を張っていたのだ。

俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、強引な方法でも解決させる道を選んで良かったと思った。

絶対に今日のホームルームで全てを終わらせよう。

「大道寺絵里花にはみんなの前で今回のことが噓だったと認めてもらうつもりなんだ。ただ、そこに至る途中で、もしかしたら大道寺絵里花が雪代さんにひどいことを言う可能があって……」

また雪代さんを傷つけてしまうかもしれない。

それが何より心配だったのだけれど、雪代さんは安心させるように俺の腕にそっとれてきた。

「私なら何を言われても大丈夫だから。たしかに先生に疑われたり、クラスのみんなから噂されるのは辛かったけど……。でも、一ノ瀬くんが私を信じてくれたでしょ? それで、もう全部大丈夫になっちゃった」

「えっ」

「誰になんて思われてもいいの。一ノ瀬くんに、嫌われなければ」

上目遣いで俺を見上げたまま、雪代さんが微かに頬を赤く染める。

雪代さんの言葉と、この表の意味について考える間もなく、予鈴が鳴りはじめた。

「教室戻ろ?」

「あ、うん」

俺がベランダのドアを開けるの同時に、教室がざわついた。

クラスメイトたちの視線は教室の口に向かっている。

大道寺絵里花が登校してきたのだ。

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