《【書籍化】馴染彼のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった》傍にいさせてしいと言われてしまった
「好きだったって……」
「最近まで一度もしゃべったことがなかったのに、いきなりそんなこと言われてもびっくりするよね」
俺は無言で頷き返した。
「一之瀬くん、初めて話した日に私が言ったこと覚えてる?」
雪代さんの発言で、そのときの記憶が蘇ってくる。
それは花火と絶縁した日の翌日。
髪を切った俺が、ここからすべてをやり直すんだと思いながら登校した朝のことだ。
雪代さんが落とした栞を拾うというきっかけで、初めて會話をわした俺たち。
その時に彼はなんて言っていた?
そう、たしか――。
『実は私、一ノ瀬くんとずっと話してみたいと思ってたんだ』
『え? どうして?』
『一ノ瀬くんって放課後、花瓶の水をれ替えたり、ベランダのプランターに水を撒いたりしてたでしょ? それで優しい人なんだなあって思ったの』
あのとき言われた『話してみたいと思ってた』という言葉。
その裏側に隠されていた彼の。
好きだと思ってくれていたから、話してみたかったってこと……?
Advertisement
そう思い當たった瞬間、さすがに揺した。
だって、噓だろ……。
今だって別に自分の容姿を誇ってるわけじゃないけど、當時の俺は暖簾前髪の暗男だったのに……。
そんなやつを好きになってくれる子なんて本當にいるのか。
そんなことを考えながら俺がまじまじと見つめると、雪代さんは恥ずかしそうに頬を赤くして、俺を睨み返してきた。
「もう、一ノ瀬くんってば。信じられないって顔しすぎだよ」
「ご、ごめん。でも本當に? 暖簾ヤローのことを好きになるなんてありえる?」
「どうして? 前髪が長いだけで、その人を好きにならない理由になるの?」
「いや、だって……。清潔もないし、何考えてるかわからないと思うし、妖怪みたいで気持ち悪いよね」
「たしかに何を考えてるのかなって興味はいつもあったけど、でも心を覗かせてくれない君が、優しい人だってことは些細な立ち振る舞いから伝わってきてたよ。私は一ノ瀬くんのそういう行を見るたび、『素敵な人だな』って思って、気づいたら目で追うようになって、君を見つけるだけでドキドキするようになってたの」
「……っ」
「それに……一ノ瀬くんと話せるようになってから、前よりもっと好きになっていってるんだよ」
「そ、そうなんだ……」
「……迷だった?」
「え!? まさか」
迷なんてことはない。
……雪代さんはいい子だし、格も振る舞いもかわいいなって思うし、そんな子に好かれて嫌なわけがなかった。
だから単純に舞い上がれないのは、俺の心の問題だ。
十年以上、花火に人格否定されてきたせいで、自分の存在を好いてくれる人がいるという事実がすんなり心にってこない。
花火と離れた今、卑屈に生きるつもりなんてもちろんない。
ただ、あいつが殘していった負の産は、まだ俺の中から完全に消えてはいなかった。
「ごめんね。迷なんて思ってるわけじゃないんだ。ただ、その……花火とのことがあったから……。多分、に対する俺のがおかしくなってるんだと思う。雪代さんの気持ちを疑ってるわけじゃないのに、俺なんかが好かれるわけないって心のどっかで否定してる自分がいて……」
「それなら私が信じさせてあげたいな……」
「え?」
「一ノ瀬くんに伝わるまで、何度でも好きだって伝えるから。……だから、今よりしだけ一ノ瀬くんの傍にいてもいい?」
「雪代さん……」
雪代さんが傍にいてくれたら、花火の落とした影もいつか俺の心から完全に消えてなくなるんじゃないだろうか。
そんなふうになれたらいい。
「雪代さんさえよければ……」
俺がそう答えると、彼は頬を赤らめたまま「うれしい」と言って、ふわっと笑った。
……って、突然の告白に揺しまくって相談しなければいけないことを忘れていた。
もちろん花火の件だ。
「雪代さん、今回のことに花火が絡んでいたってのはさっき話したとおりなんだけれど」
構ったりすれば花火の思うつぼだから、敢えて無視をした。
けれど、その対応でよかったのか悩んでいるのだと俺は雪代さんに相談した。
「花火が関與していることを、學校側に話すこともできる。でも、花火が的にしたのは、大道寺絵里花をそそのかしただけだから、多分厳重注意されるぐらいだと思うんだ。となると學校側はあんまり當てにならない」
雪代さんは真剣に俺の話を聞いている。
「正直俺には、こないだのじでは花火が改心するとは思えてなくて。でも、もう二度と雪代さんを傷つけさせたくないから、花火とちゃんと話し合いを重ねる必要があるんじゃないかって考えたんだ」
「待って……! それが私のためなら、やめてほしい……。私は大丈夫だから」
「やめてって、花火と話し合うことを?」
「うん……。話し合ったり接點を持ってる間は、花火ちゃんきっと諦められないと思うから」
俺への復讐を?
……まあ、でも雪代さんの言うこともわかる。
俺の存在を意識している間は、花火の中から俺への憎悪が消えることはないだろう。
でも、花火を放置していて、いつかあいつの中で俺がどうでもいい存在になるまで待っていたら、そこまでの過程できっとまた雪代さんを巻き込んでしまう。
「雪代さんが思ってる以上に、花火ってやばいやつなんだよ。雪代さんに何をするかわからない」
「それでも平気。一ノ瀬くんがそばにいてくれれば……」
雪代さんが寄せてくれる好意を信じられないなんて思っていたけれど、さすがに今のはドキッとなった。
ここまで想って寄り添ってくれるなら、俺がこの子をなんとしても守らなくちゃ。
心からそう思った。
私が読みたい馴染ざまぁを書いてみました
需要があったら頑張って更新にしますね!
「需要あるよ」「読んでやってもいいよ」と思ってくださったら、
スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆で、
『★5』をつけて応援してくれるとうれしいです
たとえ夜を明かすのに幾億の剣戟が必要だとしても【Web版】(書籍版タイトル:幾億もの剣戟が黎明を告げる)
【書籍版①発売中&②は6/25発売予定】【第8回オーバーラップ文庫大賞『銀賞』受賞】 夜で固定された世界。 陽光で魔力を生み出す人類は、宵闇で魔力を生み出す魔族との戦爭に敗北。 人類の生き殘りは城塞都市を建造し、そこに逃げ込んだ。 それからどれだけの時が流れたろう。 人工太陽によって魔力を生み出すことも出來ない人間は、壁の外に追放される時代。 ヤクモは五歳の時に放り出された。本來であれば、魔物に食われて終わり。 だが、ヤクモはそれから十年間も生き延びた。 自分を兄と慕う少女と共に戦い続けたヤクモに、ある日チャンスが降ってくる。 都市內で年に一度行われる大會に參加しないかという誘い。 優勝すれば、都市內で暮らせる。 兄妹は迷わず參加を決めた。自らの力で、幸福を摑もうと。 ※最高順位【アクション】日間1位、週間2位、月間3位※ ※カクヨムにも掲載※
8 193仏舎利塔と青い手毬花
田舎ではないが、発展から取り殘された地方の街。 誰しもが口にしないキャンプ場での出來事。 同級生たちは忘れていなかった。 忘れてしまった者たちに、忘れられた者が現実に向って牙をむく。 不可解な同窓會。會場で語られる事実。そして、大量の不可解な死。 同級生だけではない。因果を紡いだ者たちが全員が思い出すまで、野に放たれた牙は止まらない。 ただ、自分を見つけてくれることを願っている。自分は”ここ”に居るのだと叫んでいる。誰に屆くでもない叫び聲。 そして、ただ1人の友人の娘に手紙を託すのだった。 手紙が全ての真実をさらけ出す時、本當の復讐が始まる。
8 124転生したら龍...ではなく世界最強神獣になってた(何故?!)
普通に日本で暮らしている同じ高校の三人組 青城疾風 黒鉄耀 白崎脩翔はゲームショップに入ったはずが全く知らない所に來てた(´・ω・`) 小説でお馴染みの異世界に行くことになったので神様にチート(かもしれない...)を貰ってみんなで暴れるお話です!それでは3人の異世界ライフご鑑賞ください!(作品は橫書きで読んでください(〃・д・) -д-))ペコリン)
8 120美女女神から授かったチートスキル〜魅了〜を駆使して現代社會でたくさんの嫁を娶りたい!
幼児に戻って美少女開拓!一妻制には大反対!--- 結婚式の主役の新郎。彼の名は佐藤篤樹(サトウ アツキ)。彼は結婚式の途中で何故かしら神界へと飛ばされてしまった。 飛ばされた理由は彼が愛に関して不満があったからだ、と愛を司る美女の女神が言う。彼の不満の正體、それは女神の全てを見通す神眼によって明らかになった。 それは現代の日本では1人の女性としか結婚できないことである、 彼は女神そうに指摘されて、納得する部分があった。 そんな指摘を受け、今度こそ欲望に忠実に突き進もうとする彼に女神は力をいくつか授けた。その一つに【魅了】がある。 その力を駆使して主人公がいろんな可愛いヒロインを社會の常識に囚われることなくひたすらに攻略していく。 そんなわがままな主人公のハーレム作成の物語。 この主人公の行為が現代日本を救うことになるとは……
8 160姉さん(神)に育てられ、異世界で無雙することになりました
矢代天使は物心ついたときから、姉の矢代神奈と二人で暮らしていた。そんなある日、矢代神奈の正體が実の姉ではなく、女神であることを知らされる。 そして、神奈の上司の神によって、異世界に行き、侵略者βから世界を守るように命令されてしまった。 異世界はまるでファンタジーのような世界。 神奈の弟ラブのせいで、異世界に行くための準備を念入りにしていたせいで、圧倒的な強さで異世界に降り立つことになる。 ……はずなのだけれども、過保護な姉が、大事な場面で干渉してきて、いろいろと場をかき亂してしまうことに!? 姉(神)萌え異世界転移ファンタジー、ここに開幕!
8 106異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~
ある日突然、美の女神アフロディーテにより異世界《アーテルハイド》に送りこまれた少年・カゼハヤソータ。 その際ソータに與えられた職業は、ぶっちぎりの不人気職業「魔物使い」だった! どうしたものかと途方に暮れるソータであったが、想定外のバグが発生! 「ふぎゃああああぁぁぁ! 噓でしょ!? どうして!?」 ソータは本來仲間にできないはずの女神アフロディーテを使役してしまう。 女神ゲットで大量の経験値を得たソータは、楽しく自由な生活を送ることに――!?
8 130