《【書籍化】馴染彼のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった》エピローグ
――それからどうなったかというと、蹲って花火が泣き出したし後に、俺はクラスメイトたちによって無事見つけ出してもらえた。
後から聞いた話によると、最初に雪代さんがキャンプファイヤーに姿を見せない俺のことを不思議に思って、蓮池に尋ねてくれたらしい。
そこから夕食以降誰も俺を見ていないことが発覚し、クラスメイト全員で俺の捜索を行ってくれたのだという。
その結果、うちのクラスの生徒は誰一人キャンプファイヤーに參加できなくなってしまったというのに、誰一人俺を責めたりはせず、「大変な目に遭った」と言って俺のを案じてくれたのだった。
花火と桐ケ谷たちのしでかしたことはすべて教師の知ることとなり、全員停學処分が決定した。
その場で病院に運ばれた花火は、右足を複雑骨折していて手をしなければならなくなったため、院をすることになったそうだ。
それについては、林間學校の二日後に花火から屆いた謝罪の手紙の中に短く書いてあった。
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「はっきり言ってすべてが気持ち悪いと思うんだ。これまで敵意をむき出しにいて絡んでいたくせに、突然謝ってきたり。挙句の果てに俺を好きだと言い出したり」
花火から手紙が屆いた日。
そのことを雪代さんに電話で伝えると、休日だというのにすぐに彼は會いに來てくれた。今は俺の家の近所の公園で話をしているところだ。
並んで座ったベンチの真ん中には、花火が寄越した手紙が置いてある。
手紙の中には雪代さんへの謝罪の言葉も書いてあったので、その部分を先ほど雪代さんに見せたのだった。
「やっぱり花火はプライドを捨ててでも、俺をハメようとしてるのかな」
「でも、一ノ瀬くんの知ってる花火ちゃんはそんなことをする子じゃないんだよね? となると、一ノ瀬くんの飴と鞭作戦が功したってことじゃないのかな」
「俺がちょっと優しくした程度で改心するかな……」
「ちょっとの優しさではない気がする。一番弱っている時に、救いの手を差しべられたんだよ? しかもそれをしてくれたのは、自分のことを嫌いになってしまった片思いの相手だったんだから。花火ちゃんも素直な気持ちで一ノ瀬くんの言葉をけ止めることができたんじゃないかな」
「俺は花火が俺を好きだってことも噓としか思えないよ」
「それは……」
雪代さんは眉を下げたまま、考え込むように沈黙した。
「……花火ちゃんが今まで一ノ瀬くんにしてきたことは、絶対に間違っているよ。一ノ瀬くんは花火ちゃんを許すこともないし。ただ、これはひとつの考えとして聞いてしいんだけど、いいかな?」
「うん、もちろん」
「花火ちゃんは一ノ瀬くんを好きだったんだと思う。ただ、想い方、し方を間違えてしまったの。一ノ瀬くんのことが好きすぎて、その気持ちに飲み込まれて、大事にすることや幸せを願うことより、自分の傍にいてほしい、他の人に取られたくないっていう獨占ばかりが強くなってしまったようにじるの」
「……」
「すごく好きだからって、それは決して言い訳にも免罪符にもならないけれど。をしてると自分でコントロールできないほどのに襲われることが何度もあるから、そのときに間違った方向に流されてしまうと、自分も相手も不幸にしちゃうのかもしれないね……」
「……なるほど」
花火の好意を認めるつもりはまったくなかったけれど、不思議なことに雪代さんの口から聞いた言葉は、俺の中にすんなりってきた。
「でも、百歩譲ってそんなふうに人を好きになるのは、やっぱり花火がまともじゃないからだよね」
「……どうかな。私も嫉妬したりしちゃうよ……。一ノ瀬くんが、私以外のの子と話してると、私だけと喋ってほしいなって思っちゃうし……。ごめんね」
「えっ、い、いや……」
「……そういうの嫌な部分を聞いちゃうと、一ノ瀬くんはもう誰からも好かれたくないって思っちゃう……?」
「誰からも……?」
「……私が一ノ瀬くんを好きなことで、一ノ瀬くんを苦しめてしまう……?」
雪代さんが俺のことで嫉妬しているという事実が、まだちょっと信じられないけれど、たとえそうだとしても花火にされたように嫌悪を抱いたり、恐怖をじることはない。
むしろ、そこまで俺を好きでいてくれているのかと思うと、正直ドキッとさせられた。
隣の雪代さんに視線を向けると、彼は不安そうに俯いている。
花火と雪代さんは別の人間だと俺はちゃんとわかっている。
それに、花火に苦しめられた過去のせいで、雪代さんとの未來を描けないなんて絶対に嫌だ。
俺のけない過去をそのままけ止め、いつも優しく寄り添ってくれている雪代さん。
今だって、雪代さんが傍にいて、話を聞いてくれたからこそ、冷靜な気持ちを取り戻すことができたのだ。
「……雪代さんが俺を好きだと思ってくれていることは、正直未だにほんとかなって気がしてるんだけど、でもそのことを嫌だなんてじたことは一度だってないよ。それに、今は、雪代さんのこと俺にとって欠かせない大事な人だって思ってる」
雪代さんの瞳を見つめて、まっすぐ伝える。
ハッと息を呑んだ雪代さんの頬が朱に染まっていく。
「うれしい……」
そういうと、雪代さんはベンチの上に置いていた俺の手にそっとれてきた。
その溫もりがとても落ち著く。
「雪代さんがいてくれなかったら、俺はというものにトラウマを持って、なんて絶対したくないって考えになっていた気がする」
「一ノ瀬くん……」
「ありがとう、雪代さん。の暖かい部分を俺に教えてくれて。雪代さんのおかげで本當に救われたんだ」
雪代さんは目に涙を浮かべながら、にっこりと笑ってくれた。
――苦しみを與えるがあれば、その傷を癒してくれるもある。
その事実を學べたからこそ、これから先の人生で俺自は、絶対に好きな人を傷つけるようなことはしたくない。
そんなふうに決意して、俺は雪代さんの手のひらをできるだけそっと握り返したのだった――。
(おわり)
今までお付き合いいただきありがとうございました!
これにて本編は完結です。
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