《12ハロンの閑話道【書籍化】》別次元からの刺客(5)

《大観衆に見守られ、寶塚記念、今……スタートしましたぁッ!

好スタートは……外の馬! 外の馬3頭がぽーんと飛び出しました他は橫一線、いやトキノシガラミやや出が悪いかその他は無事ゲートを出ました。

さあ大歓聲をけながら、選ばれし夢の16傑とその騎手達がこれから正面スタンド前を通過していきます。

さて外の方からへ寄せつつ、おっとこれは珍しい。ハナを切るのは⑮番サタンマルッコですが競りかけるように⑭番キャリオンナイト、今日はなんと前目につけた八騎手。そして外に半馬ほどに⑯番スティールソード、しかしどうか、おっとこれはっ、これは八騎手、細原騎手どちらも、いやこれは橫田騎手も手綱を引いているぞ!

これはかかった、あーかかったか! ジャパンカップの再來か!

外の馬3頭が猛烈な勢いで1コーナーへ差し掛かって行きます。

はどよめき! どよめきに満ちております!

ついで6~7馬程切れてセヴンスターズ、そこから3馬程切れて馬群が形されつつありますが、ご覧のように第NN回寶塚記念は縦長! 縦長だ!

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思い起こされるのは二年前の寶塚記念、あの時サタンマルッコはただ1頭先頭を駆けましたが今年はなんと3頭!

どのようなレースになってしまうのでしょうか、隊列は向こう流しへかかって參ります――……》

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8萬超の観衆の聲援やどよめきは、ガラス一枚隔てた程度では防ぎようも無く、関係者席のスタンドへも振となって伝わっていた。

「いけーマルッコ! そのままゴールしちまえーっ!」

熱にあてられた中川がぶ橫で、ジェイクは己が激を堪えるように組んだ腕の中で拳を握り締めた。

(フランコフぅ、分かってるだろうな)

呪詛でも送るように向こう正面へ遠ざかる馬の鞍上を視やる。

事前の作戦で前目を追走する事は決定されていた。キレ味勝負の戦いでは分が悪い。先頭をゴールするであろう馬をマークし、力勝負へ持ち込む……そして今回陣営がマーク先へ選んだのは、他でもないサタンマルッコである。

スタート直後からの追走は無理でも、向こう正面中ほどまでに2馬程度に、そしてそのまま3コーナー以降は併走してゴールへ雪崩れ込む。しかしこのプランは既に崩壊していた。前3頭のペースがあまりにも速過ぎるのだ。

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(そうだ、それでいい)

視線の先、小さくなった馬の鞍上が前後を確認し、そっと手綱を引いたのを確認してジェイクはそっと息を吐いた。牧場育ちは目がいいのだ。

追走するとは言っても潰れてしまっては意味が無い。前の馬は明らかに制を失っている。しかし完全に消していいかと問われればそれも難しい。何せ阪神競馬場回りは直線が短く3、4コーナーの侵角が厳しいため加速が一度途切れる。萬が一先を行く馬が足を殘していた場合そのままという事が常よりも多く起こりえる構造だ。ましてや先を行くのは稀代の逃げ馬サタンマルッコ。ロンシャンのコースを逃げ勝った馬がそう易々と潰れるとは考え難かった。

付かず離れず、しかし遠からず。この難しいミッションに世界一の騎手は応えて見せた。

先頭集団の1000m通過が58.1秒。しかし向こう正面中間でもペースはあまり落ちていない。そこから5馬、馬場狀態を考えても十分程圏。世界一の心肺機能を持ってすれば競り合いで負けるはずが無い。

『フフフいいぞいいぞ、展開が向いている!』

「いけーマルッコー! もっとちぎれー!」

《離れた二番手セヴンスターズやや下げまして馬群が続きます。

に⑨番グラッチェシモン、⑫番サミダレミツキ、その後ろに④番ストームライダーはここにいました。し空いて①番ハナレホマレ③番ゴウロディアスなどが居て中団。また馬群が切れて後方集団、②番ウーサワイアー、⑪番トキノシガラミ、ダービーコンビは外ここで並んでいます。そして⑩番ラストラプソディー、ドバイ、安田記念で見せた末腳が今日は見られるのかどうか、最後方にパカパカモフモフといった隊列です。

先頭から終わりまででもう、10……7、8馬は離れているでしょうか。先頭集団はもう3コーナーに差し掛かろうかと言う所。前は持つのか。後ろは屆くのか。ターフの上の騎手達に私達の夢が託されます》

「あ、あれで大丈夫なのかマルッコ? いやもう行くしかねぇ! いっちまえ!」

3コーナー。半分先頭はサタンマルッコ。にキャリオンナイト、その後をスティールソードが追走する形でここまで進んできた。さすがにスタートからここまでかなりのハイペースで飛ばしていたため、前3頭は息をれにかかっている。お互いの走りに"かかって"いるにも関わらず、そのタイミングまで同じなのは不思議な連帯をじさせる。

一時休戦。彼らがお互いの間合いを測っている間、後方の集団は一気に差を詰めにかかった。ざわざわとしていた場が、意志を持った隊列のきに反応して歓聲を上げ始める。

「うおおおおおマルッコォォォッ! 負けるなァァッ!」

気の早い中川もぶ。勢い余って隣に居たジェイクの肩を摑むがジェイクも気にはしていられない。

『スタァァァァズッ! 君の輝きを見せる時が來たぞッ!』

後方のきに呼応して、レースのペースメーカーのような役目になっていたセヴンスターズもき出す。早め早めの仕掛けにより3コーナー中間までにスティールソードの背後まで差を詰めたのだ。躍する灰の馬馬の闘にジェイクのボルテージも盛大に上がっていく。摑まれた肩にクロスカウンターを決めるように腕を差し込み、中川の首に腕を回す。彼は興すると近場の者を抱き寄せる癖があるのだ。

「ぬおッ!? ぬおお負けんぞ! うおおおお負けるなマルッコォッ!」

『行くのだスタァァァズッ!』

組んず解れず男二人は摑みあったまま絶を続けた。

《さあ先頭との差が一気に詰まって、しかし4コーナーを先頭で駆け抜け直線へ向いたのはサタンマルッコか! 殆ど並んでにキャリオンナイト! スティールソードはどうか、追うセヴンスターズは腳が良い! 前はどうかさすがに一杯か!

殘り300m、後続は橫に広がって追い込み勢だ、ストームライダーウーサワイアー鞭がる前まではまだ6馬弱あるぞ!

だが流石に前が垂れた!

先頭サタンマル……いやキャリオンナイトが僅かに先頭! スティールソードはびが苦しいか追走するもびてこない!

れ替わるようにセヴンスターズが迫って馬を併せる差は半馬! サタンマルッコはまだ粘っている、後続は、後続はどうだ! 坂に差し掛かる殘り200m!》

「マァァァルッコオオオオオオオオォォッ!

のこせー! のこせえええええええぇぇぇ!」

『スタァァァァズッ! させ、さすのだァァァッ!』

《キャリオンナイト先頭、キャリオンナイト先頭だ、サタンマルッコ、セヴンスターズ殆ど差がない! 三頭だ、三頭のレースになるのか!

坂を上ってサタンマルッコ前に出たか!?》

「よおおおおおおし、いけぇぇぇぇッ!」

《いやセヴンスターズだ! セヴンスターズ半分前ッ!》

『よおぉおぉぉぉぉし、そうだああぁぁッ!』

「うわああああぁぁぁなんとかしろマルッコぉぉぉっ!」

《セヴンスターズ勢有利! セヴ……あ、外の方、馬場の外側凄い腳ッ!

⑩番のラストラプソディーだッ!

後続を引き連れてラストラプソディーが突っ込んできたがもう殘り50m切っている!

屆くのか!

屆いた! わした! ラストラプソディー先頭ッ!

いや、

これは――……》

ラストラプソディーは次元の異なる豪腳で先行勢を差し切った。

中川とジェイクは、それから続く景がまるでスローモーションのようにじられた。

で応戦するキャリオンナイト、サタンマルッコ、セヴンスターズ。

それらを外から切り裂いたラストラプソディー。

ではそのラストラプソディーの更に外。

その外から弾丸のように飛來する、この馬は一なんだ?

ゼッケン番號⑦番、その馬の名は――

《これは、パカパカモフモフだッ!?

パカパカモフモフだッ!

なんとビックリ! パカパカモフモフで切ったゴールインッ!》

『「はああああああああああああああぁぁぁぁ!?」』

競馬界に激震走る。

次回どうして彼は走るのか~島の王~

ちょっと間あくかもしれません

想欄でパカパカモフモフに目敏く目を付けられていたので、割とこの展開はバレてそうだなあと思っていましたが如何でしたでしょうか。

やるやらないは別にして、アーモンドアイが51キロだったら寶塚かてちゃった気がするんですよね……(53キロのJCでアレですし)

関東は臺風直撃でひどい目に遭いましたが、皆さんご無事でしょうか。

さすがに東側の競馬場開催はないようですが、西じゃ秋華賞ですね。ピンクダイヤちゃんがんばえ(尚買わない)

あけたGⅠっていうとサンドピアリスなんかが有名ですが、當時競馬やってなかったので前後の事をよくしらないのですが、その後の績からしたらコパノリッキーのフェブラリーSはどうして人気しなかったんでしょうねw

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