俺に聲をかけてきたのは、しい銀セミロングの髪をなびかせ、冷たい印象を與えるアイスブルーの瞳を持つ白なをした同年齢くらいのだった。

「ノエリアお嬢様！？」

俺に聲をかけてきた人の顔を見てレベッカがびっくりしていた。

ノエリアって、この水晶玉を割った人だったよな。

こんなに若い人でしかもだったのか。

えっと、徽章は……へー、白金等級か……冒険者ギルドも実力を認める魔師ってことか。

冒険者の格を示す白金等級の徽章は、彼の控えめな元を隠すよう羽織られた皮の外套に付けられていた。

等級が示すとおり、二つ名を持つ魔師としてかなりの実績を上げている冒険者なのだろう。

「さきほどから拝見していましたが、どうやらものすごい魔力量をお持ちの様子。どうでしょうか、検査をするよりもわたくしと魔力合わせをしてみませんか？」

彼からじる冷たい印象を強めているのは、アイスブルーの瞳もそうだが、それ以上にの抑揚がない聲の方だった。

容姿はアルフィーネと同じように非常に整っているが、喋り方がどこか人っぽくなかった。

そんな彼が俺に魔力合わせしないかと申し出てきていたのだ。

「はぁ？　魔力合わせってなんです？」

アルフィーネが魔師とパーティーを組むことを斷固として拒否してきたため、魔法に関しての知識は全くと言っていいほどなかった。

おかげで魔力合わせという行為が何をするのかが、さっぱりわからないのだ。

「お互いに手を合わせ、魔力を高め合いながら潛在魔力量などを調べ合う行為ですよ。魔師同士なら日常的に行っていますので危なくもないですし、基本さきほどの水晶玉にれるのと同じですから簡単です」

ノエリアが淡々と魔力合わせについて説明をしてくれていた。

要は水晶玉の代わりを、手を合わせる魔師が務めることが、魔力合わせという行為らしい。

そんなに簡単なら試してみてもいいかな。

どう考えてもさっきの水晶玉は壊れてたみたいだし、この冒険者ギルドで一番だと思われる魔師に自分の魔力量を測定してもらっておいて損はなさそうな気もする。

俺がノエリアの提案に乗ろうかとした時、野次馬たちの聲が聞こえてきた――

「お、おいっ！　あの野郎にノエリア様が自ら魔力合わせを申し出たぞ！」

「まじかよ。でも、並みの魔師くらいじゃ、魔力合わせにれただけで中からを噴き出して絶命したとか言われるノエリア様だろ。あいつだって死んじまうだろ」

「きっとノエリア様は、自分と同じく水晶玉を割ったのが気にらないんだろうぜ。こりゃあ、が流れるのは確定だな」

野次馬からは々と騒な話が聞こえてきていた。

どうやら彼との魔力合わせはやらない方がよい気がしてきた。

「ノエリアお嬢様、勝手な魔力合わせは父上より止されておりますが」

相を変えたレベッカが、俺とノエリアの魔力合わせを止めていた。

だが、ノエリアは我関せずといったじで、勝手に俺の手を取ってれてきた。

「大丈夫、死なない程度にはしておきます。フリック様は魔法の発が不得手のようですし、まずはわたくしがけ役で――」

ノエリアが俺の手にれると、見た目とは違い、彼の手は非常に溫かった。

そして、溫かさをじると同時に自分のから何かが吸い出される覚がしていた。

彼との魔力合わせは死ぬとか、なんかとっても騒なこと言われてたけど、みんな大げさに言ってたみたいだな。

ちょっとだるさもじるけど、アルフィーネにしごかれた剣の修行の方が何倍もしんどかった気がするんだが。

「あふぅ、なにこの量は……普通じゃない……噓……まだ、盡きないの。そんな……このわたくしの魔力量を超えて……くるの」

俺から魔力を吸い取っているらしいノエリアが、荒い呼吸を繰り返し、白いを赤く染めて悶えていた。

そんなノエリアの様子を見ていた野次馬たちがざわざわし始める。

「普段全く表を変えないノエリア様があんなに悶えてるぞ。あいつ、まじでやばいやつじゃね？」

「でも、あの『無限の魔師』が吸い取り切れない魔力なんて……化けクラスだぞ」

「何者だよ、あいつ……」

なんか俺が悪いことしてるみたいな気がするんだが……。

そもそも、勝手に魔力合わせ始められてるから止め方も知らないんだけどな。

「スト―ップ！　ノエリアお嬢様、そこまでです。フリック様、すぐに手を離してください」

ノエリアの様子を見たレベッカが、窓口を乗り越えて俺たちの間にっていた。

「手を離せばいいの？」

「ええ、それで魔力合わせは中斷されますから。早くしないと、このままだとノエリアお嬢様が死んでしまいますから！」

「だ、大丈夫。まだ、わたくしは……いけます……まだぁ、あふぁ……」

悶えているノエリアの目からが消えていくのを見て、レベッカが危ないと言った意味が分かり、俺はすぐに手を離した。

手を離すとノエリアはそのままレベッカに倒れかかるように気絶していたのだ。

「フリック様……これは非常にマズいですよ。この方はエネストローサ家のご令嬢なのです。ロイド・エネストローサ様は、この辺境都市ユグハノーツを治める辺境伯です。そのご令嬢をこのような目に遭わせたと知られたら……」

「えっと、俺は巻き込まれただけなんだが……こういう場合も俺のせいなの？」

顔を紅させ気絶しているノエリアが、この街を治める貴族の令嬢だって知らなかったし。

事故だよね、事故。

貴族の令嬢であるノエリアが倒れたことで、関わり合いを避けようとする野次馬がすっと待合室の方へ消えていった。

殘されたのは俺とレベッカの二人だけであった。

日間総合一位ありがとうございました。