《剣聖の馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】》11:俺は魔剣士フリックとして生きることにした
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「では、次は実戦で使えるかどうかを試してまいりましょう。最初に放った火の矢(ファイアアロー)がジャイアントアントの巣をちょうど刺激してしまったようです。わたくしは昨日みたいな失態はいたしませんので、フリック様は安心して魔法の実戦練習を行ってください」
ノエリアが指差した先の地面に開いた大から、黒く大きなをしたアリの群れがわちゃわちゃと大量に這い出してきていた。
五〇、いやもっといる六〇以上か。
強い相手ではないけど、集団で囲まれるとやっかいな相手だ。
剣だけだと絶対に相手にしたくない類の相手だな。
けど、今は魔法がある。
地面から続々と現れるジャイアントアントの群れを見て、俺はすぐさま火の矢(ファイアアロー)を発させた。
飛び出した火の矢は、先頭で迫っていたジャイアントアントの頭部に命中し吹き飛ばすと、を燃やし始めていた。
あのジャイアントアントの堅い表皮を一発で抜けるのか……魔法ってすごいな。
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けど、一ずつ仕留めてると手數が足りなさそうだ。
そう言えば魔法は想像力だってノエリアが言っていたな。
火の矢(ファイアアロー)を複數に撃つってことを想像すればそのまま発するだろうか。
呪文的なやつは、ちょっと改変してみるとかしてみたらいけそうな気もする。
俺は迫るジャイアントアントの群れに向かって、複數の火の矢(ファイアアロー)を放てるか試してみることにした。
「『熱く燃えたる一群の矢となりて我が敵を狩りつくせ』、火矢の弾幕《ファイアアローバラッジ》」
一〇〇本以上の複數の火の矢(ファイアアロー)が、敵に向かって飛び出すのを想像して固定化する。
そして、剣を引き抜くと向かってくるジャイアントアントの群れに向かって振り下ろした。
「フリック様、なんの魔法を!? それ、火の矢(ファイアアロー)の呪文じゃ!?」
自己防衛のための詠唱をしていたノエリアが、俺の呪文を聞いて目を丸くしていた。
「どうせなら実戦に即した魔法が発するか試してる。ミスったら援護よろしく」
俺がそう言うと、振り下ろした剣先からまぶしいを放つ火の矢(ファイアアロー)たちが一斉に撃ち出されていった。
どうやら発は功したようで、放たれた火の矢(ファイアアロー)は、俺が敵だと認識し視線におさまったジャイアントアントたちを追いかけ回して次々に命中していく。
その様子を見ていたノエリアが茫然として杖を地面に落としていた。
「こ、こんな魔法はわたくし知りませんけど……なんという殲滅速度と命中力……」
放たれた火の矢(ファイアアロー)は、最後のジャイアントアントの頭部を吹き飛ばすと、目標を失ったものは地面に向かって突き立ち炎を噴き上げていた。
「想像だけで呪文も考えたが、意外と使えるもんだな。ノエリアが言っていたとおり『魔法は想像力』だな」
「ち、違います。フリック様の言ってる『魔法は想像力』は、わたくしが言った言葉とはなにか違いますから!」
いつもは表と聲が違うノエリアだが、今は表と聲が一致していた。
どうやら俺が使った魔法はなにか違うらしい。
ちゃんと呪文で想像を固定化し、威力を調整して、実戦に即した形で発させただけなんだがなぁ。
剣士として生きてきた俺としては、この魔法の威力も対多數の殲滅力も実戦向きで申し分ないと思う。
「もしかして、ダメだったか?」
「ダメじゃないです。フリック様の発させた魔法が素晴らしすぎてビックリしてるんです。あのような複雑なきで飛ぶ複數の火の矢(ファイアアロー)なんて、想像してこなかった」
ノエリアが俺の魔法で頭部を吹き飛ばされ、まだ炎上しているジャイアントアントたちの姿を凝視していた。
とりあえず怒ってはいなさそうなので、さっきの魔法は認めてくれているようだ。
それにしてもノエリアのおかげで威力の調整ができるようにもなったし、案外魔法も簡単に作り出せそうなことも理解できた。
剣だけだと固いやつとか、集団で襲ってくるやつに苦戦するけど、そういった時に魔法が使えると心強い。
剣だけで冒険者として食っていこうと思っていたが、魔法も使える剣士なら一人でも対多數戦闘がこなせそうだし、幸いにして俺には無駄に多い魔力がある。
王都でも剣と魔法を使う冒険者がいたが、たしか魔剣士とか魔法剣士とか言われてたよな。
アルフィーネは邪道だって嫌いしてたけど、彼に見つからないようにするには魔剣士を名乗った方がいいかもしれない。
魔剣士フリック……これなら、誰も俺が剣士フィーンだなんて思わないだろうな。
「ノエリア、君のおかげで魔法が使えるようになったし、俺は今日から魔剣士を名乗ることにするよ。あらためて魔剣士フリックとして、無限の魔師ノエリア嬢に今後とも魔法の指導を頼むことにする。けてくれるか?」
俺はジャイアントアントの炎上する死骸を見て呆けていたノエリアの前に手を差し出す。
「え? あ、はい。わたくしのつたない魔法でよろしければ、フリック様が長するための糧となりましょう」
ノエリアは差し出した俺の手に気が付くと、その手を握り返してくれた。
彼はちょっと変わった行が多い子ではあるけど、は悪い子ではなさそうである。
ただ、魔法に関して異常なほどの関心を示す子で、気になったら周りが見えなくなってしまうのが難點ではありそうだ。
とはいえ、レベッカに聞いた話では、この年齢で魔法知識に関してはユグハノーツ隨一の知識量を誇るらしい。
魔法の指導者として教えを乞うには、彼以上の人材はこの辺境にはいない。
俺は自らの隠れた才能だったありあまる魔力を生かすため、ノエリアを魔法の師匠として才能をばすことに決めた。
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