《剣聖の馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】》24:強化魔法の使い手でもやっぱり変人だった
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目が覚めると、見慣れない天井が見えた。
どうやら俺はベッドに寢かされているらしい。
「気付かれましたか? すみません、わたくしが注意していれば、フリック様が被害に遭うこともなかったのですが……」
俺が目覚めたのに気付いたノエリアが覗き込んできた。
「ノエリアー。ごめんてー、小僧をからかったわたしが悪かった。だから、れてくれー」
外からガウェインの聲とドアを叩く音が聞こえる。ここは彼の母屋のベッドらしいな。
「ガウェイン師匠、フリック様への悪戯が過ぎます。しばらく、外で反省しててください」
ノエリアはガウェインに対し、『反省してください』とピシャリと言い放っていた。
それにしても、ガウェインは格に見合わぬ俊敏さと怪力の持ち主だったな。
まさか、ふりほどけないとは思わなかった。
「ノエリア……ガウェイン様はいったい何者なんだ? ただの鍛冶師とは思えないけど……」
「ガウェイン師匠は強化の魔法を極めておられる方です。わたくしも習得しておりますが、し苦手な部類の魔法でして……。フリック様には支援魔法を教え終わってからお教えしようと思っておりました」
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強化魔法……そんな魔法があるなんて初耳だった。
攻撃魔法や支援魔法は魔師たちも結構使ってるからある程度は知っていたけど。
「それってどういった魔法?」
「文字通り、自分のを強化する魔法です。ガウェイン師匠は鍛冶の腕を上げるために必要な筋力を魔法で強化できることに気付きました。強化魔法で筋力を人外にまで育てたため『変人』と呼ばれるようになったそうですが、それだけでは……」
「自分のを強化する……支援魔法とは違うのか?」
「はい、支援魔法は他者か範囲の人へ影響を與える魔法ですが、強化は者本人のみの強化に特化した魔法でして……。ガウェイン師匠が作り出した強化魔法は、的強化をあまり必要としない魔師たちからは異端と言われている魔法です」
たしかに普通の魔師だと、接近戦はほとんどしないし、的強化で魔力を消費するよりは攻撃魔法や支援魔法を選ぶよな。
魔師たちから異端と言われるのも理解できる。
「こらー、ノエリア! わたしの作り出した強化魔法をほんのりと馬鹿にしておるだろー。聞こえとるぞ」
ノエリアの聲が聞こえたのか、外でガウェインが騒いでいた。
「ガウェイン師匠は強化魔法を常用しておりまして……わたくしが事前に空気壁(ウィンドバリア)を張ったのもれ合いで怪我をしない予防措置だったと申し上げておくべきでした。ガウェイン師匠が変人であることに変わりはないのですが、フリック様に変な先観を與えてはマズいと思い言葉を濁したのも失敗でした」
ノエリアが自分の失態だと言わんばかりに、申し訳なさそうに頭を下げていた。
「いい経験をさせてもらった。俺も今後は空気壁(ウィンドバリア)を使わせてもらうよ」
アレをまともに何度もけると、ヤバそうだしな。
自分のは自分で守らないと。
「そうされることをお勧めします。ガウェイン師匠に気にられてしまいましたからね。ですから、きっと剣は材料費で作ってくれるはずですよ。気にった人にしか剣を打ちませんし」
「はぁ……そうなのか。あの洗禮をけた人しか剣を打ってもらえないとかだと……ガウェイン様の剣が出回らないのも頷ける気がする」
「父上は若い時にアレをかわして、叩き伏せたとマイスが言ってましたが」
「若い時の辺境伯様はすごいな……アレをかわすのか」
魔法で強化されたで突進してきたガウェインは、きが見定められなかったし、捕まったらふりほどけないほどの怪力だった。
あれだけの能力を得られるなら、強化魔法が俺の剣をもっと強化してくれるかも。
覚えてみる価値は大いにありそうだ。
「ノエリア、ガウェイン様に剣の製作を依頼したらすぐに強化魔法を教えてもらっていいか? 自分で試してみたいんだ」
「いいですが……わたくしはどうもを強化するという想像が苦手でして……。発はさせられると思うんですが、なにぶん自分のでしかできないので伝え方が難しく……」
魔法のことになると、なんでも顔を輝かせて喋るノエリアだったが、どうも強化魔法は苦手な魔法の部類にるようだ。
「フリーック! お前が強化魔法使いたいなら、わたしが教えてもいいぞー。ロイドの使いからお前がものすごい魔力量の持ち主だって聞いておるからな。一週間で使えるようにしてやる」
外で俺たちの話を立ち聞きしてるガウェインが騒いでいた。
あれだけの筋力があるなら、この家のドアくらい簡単に壊してってこれるだろうに……。
あ、家を壊したくないのか……。
って、そんなことはどうでもよかった。
場違いな考えが思い浮かんだため、慌てて打ち消す。
大事なのは強化魔法を彼から習って大丈夫なのかだった。
いちおう、俺の師匠はノエリアなのだ。
「って、言ってるけど。大丈夫かな?」
「強化魔法の使い手としては最高の人ですが……なにぶんアレなので……。ただ、強化魔法の教え方は、わたくしより上手いとは思います。わたくしでも使えるようになったので」
ノエリアも々と難がある変人師匠に弟子である俺を預けるべきか悩んでいる様子が見えた。
んー、悪い人ではないというのは分かったが、アレがあるからなー。
でも、能力が底上げできる魔法が使えれば、剣をもっと鍛え上げられるかもしれない。
多の難は目を瞑ってでも習得をするべきだろうな。
「まぁ、アレは何とかするさ」
「では、わたくしもガウェイン師匠の監視のため殘ります。魔法習得中、フリック様に萬が一のことがあれば、世界の損失になりかねませんので」
「え? いやいやいや、大丈夫だって――」
そう俺が言った瞬間、外で大きな羽ばたきの音が聞こえた。
この音は翼竜の羽ばたき! ヤスバの狩場の翼竜がこの家にまで!?
「ノエリア、翼竜だ! この中に隠れてて、ガウェイン様は俺が助け出してくるから」
「あ、いや、フリック様。この音は多分――」
俺はサイドテーブルに置かれていた自分の剣を手に取ると、ドアのかんぬきを外し、家の外に出た。
するとそこに居たのは翼竜とガウェインだった。
「よう、今からちょっとロイドのところ行って『娘は預かった』って言ってくる。食材は適當に使っていいんで夕飯を作っといてくれ。晩飯くらいには戻るから。じゃあ、留守番よろしくなー」
翼竜にったガウェインがそれだけ告げると、ふたたび羽ばたき始めた翼竜に乗って、ガウェインの姿が俺たちのやってきたユグハノーツの方に飛び立っていった。
俺はその姿を茫然と見送ることしかできないでいた。
本當に俺、あの人に俺の相棒となる剣の製作依頼と魔法教えてもらって大丈夫だろうか……。
こうして、俺は変人鍛冶師ガウェインのもとで剣を製作してもらう傍ら、強化の魔法を習うことになった。
誤字字を訂正して頂いてる皆さまへ、いつも謝しております。
修正して頂けるおかげより多くの方にで読んでいただいていると思っております。
さて、魔剣製作しつつ変人ガウェイン修行編にる前に次話はアルフィーネターンです。
ギャグから一転、シリアスパートになるかと思いますが、よろしくお願いします。
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