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筋力強化の魔法で消費するのをから酸素に変更しました。

ガウェインがユグハノーツにいるロイドのもとから帰ってきたのは、予定通りの日暮れ間近だった。

使役していた翼竜の翼に何本も矢が刺さっているのがし気になったが、本人が『問題ない』と言ったので深くは追及しないでおいた。

それと、いちおうロイドからノエリアの滯在許可ももらったらしい。

出かける際に言っていた『娘は預かった』という言葉を、あのロイドにそのまま伝えていないか不安だが古い知り合いらしいので言葉の行き違いはなかったと思いたい。

夕食の席でガウェインの話を聞き、そんなことを思いつつ、翌朝からはガウェインを指導役として屋外で強化魔法の訓練を行うことにした。

隣では強化に苦手意識を持つノエリアも、再訓練の名目で訓練を一緒にけていた。

「強化魔法の基礎である筋力強化(ストレングス)は、の中の筋繊維を想像し、魔力でその筋繊維を一本ごとに太くして、自分の筋力を向上させる魔法だぞ」

強化魔法を常用しているガウェインが、パンパンに盛り上がっている大筋を指差して魔法の効果を説明していた。

言ってることは理解できるんだけども、ああやって上半で筋をピクピクする必要はあるんだろうか。

あの筋のことが気になり過ぎて、話してる容の半分もってこないんだが。

すでに習得しているノエリアもガウェインの姿を見て、半ばあきらめ気味のため息を吐いていた。

「フリック、ノエリア。さぁ、やってみろ。筋を一本ずつ魔力で太くする想像をするんだ」

「はい、やってみます」

「いい返事だ。だが、フリックみたいに無駄に魔力あるからって急にたくさん筋を太くすると酸素が足りなくなってぶっ倒れるから気を付けろ」

魔法で太くなった筋に酸素が大量に流れ込んで酸欠になるってことか。

だとすると、強化魔法には呼吸の量も増やせる魔法があるのかな。

強化魔法は、の仕組みをよく知して使わないと危険な魔法になりそうな気がする。

俺は目を閉じると、まずは腕の筋を思い浮かべる。

そして、筋力強化(ストレングス)の呪文を唱えた。

「溢れし魔力よ。我がへの新たなとなれ。筋力強化(ストレングス)」

剣での隅々の筋のきを意識することには慣れているので、ガウェインの言った通り、一気に多くの筋を太くして酸素が不足しないよう一本ずつ慎重に魔力を込めていく。

注ぎ込んだ魔力によって、腕の筋がどんどんと盛り上がっていた。

呼吸の方も息苦しさはじないで済んでいた。

「ほぅ、わたしが編み出した強化魔法を一発で発させるとはな……。聞いてた通り、魔法に対して理解度が高いようだ。それでこそわたしがれ合いを許した男だ」

目を開けると、目の前でガウェインが俺の腕を見て満足そうな顔をしていた。

「これで発してますか？」

「ああ、しているな。たった一度で腕だけとはいえ発させるとはな。フリックは強化魔法の素質が大いにありそうだ」

俺の隣ではノエリアも発に功していたが、元々のつきが小柄なので肺も小さいため、酸素が足りないようで蒼い顔をしていた。

「これだから、強化の魔法は苦手です……魔力とは別に心をある程度鍛えることも必要になりますし……ふぅ、ふぅ」

魔法を発させたノエリアは荒い息のままであった。

「呼吸量を増やす魔法もあるが、あれは強化でも特に危ない部類だから、まだ使わない方がいい。ノエリア、無理はするな」

多くの魔師が、この強化の魔法を異端扱いする理由もうかがい知れた。

遠距離から攻撃できる魔法が使えるのに、弾戦を選ぶ魔師はほぼ皆無であるし、魔力以外にある程度心を鍛えることが必要になるとすれば、自分たち魔師の持つ特を消してしまう可能があった。

だが、俺みたいに剣でを鍛えていて、魔法も使う才能がある魔剣士などであれば、を強化できるこの魔法は垂涎の魔法だった。

「剣を振ってみていいですか？」

腕の筋力を強化して、どれくらいの効果が出たかを確かめたくてガウェインに剣を振る許可を求めた。

「ああ、いいぞ。振ってみろ」

許可をもらい自分のなまくらな剣を引き抜く。

筋力強化により倍くらいに膨らんだ腕だと、剣の重さは元の半分以下になった気がした。

「軽い……この剣がこれだけ軽くなるとは……」

抜いた剣を構え、剣を何度も振り抜いてみた。

振り抜く速度は見違えるほど速まり、アルフィーネの斬撃を超えるほどになっていた。

「速い……フリック様はお會いした時から、かなりの剣の使い手でしたが。強化でこれほどの効果が出るとは……」

酸欠を起こしかけ座って休んでいたノエリアが、俺の剣のきを見て嘆していた。

腕だけでこの効果か……。

なるほど、これを全に常用発させてるガウェインがあれだけの筋力を持っているのも納得だ。

全を強化したら、この剣でも固い魔を一刀両斷できそうだ。

これ以上、びないと思ってた剣の方も魔法の補助をければまだ上を目指せそうだ。

俺は強化の魔法によって、限界をじていた剣の腕もさらに向上できる道筋を見出していた。

「フリックの剣をロイドが見たら、悔しがるな。あいつは魔法の才能が皆無だったから、わたしの強化魔法を覚えられなかったし」

「辺境伯様に比べたら俺の剣はまだまだですよ」

「たしかにまだ強化魔法を全部使いこなしていないからな。だが、使いこなせばお前は紛れもなく超一流の剣士にもなれる」

ガウェインが腕を組んで、俺の方を向き一人で頷いていた。

俺に足りてない筋力や瞬発力などを魔法で補助していけば、ガウェインに言われたとおりもう一段上の剣士になれる気がしていた。

魔剣士として剣も魔法も極めようと思っているが、長年鍛錬を続けてきた剣がまだ長させられると分かって嬉しさがこみあげていた。

「なれるかどうかは分かりませんが、ガウェイン様の強化魔法で明を見いだした気がします」

「わたしもノエリア以外に魔法をけ継ぐ人材ができたと謝しているぞ。こうなると、フリックの剣は特別製にしておく方がよさそうだな」

頷いていたガウェインが、ズボンのポケットから自分の手帳を出し、何かを書き留めていた。

今の素振りを見て、これから作る剣の構想を書き留めていたのかもしれない。

「さて、次は――」

休憩する間もなく、次の強化魔法の練習が始まっていた。

ガウェインの指導はけっこう厳しいのかもしれないが、の方は剣で鍛えてきてそれなりに自信があった。

「わ、わたくしは次の魔法から見學させてもらいます」

青白い顔をしたノエリアが地面に座ったまま見學を申し出ていた。

「ノエリア、大丈夫か？」

「はい、呼吸がちょっと苦しいだけですのでご心配なく」

酸欠癥狀が酷そうに見える。

ノエリアの場合、を強化するメリットよりも、酸欠でけなくなるデメリットの方が大きそうだった。

「ノエリア、無理はするな。前にも何度もぶっ倒れてるから、わたしもお前には無理強いはせん」

ガウェインも心配そうにノエリアの様子を見ている。

「この強化魔法は即座に命に関わる魔法だからな。フリックもくれぐれも気を付けるように」

「はい」

俺はそう返事をすると、あらためて強化魔法の訓練を再開した。

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