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數十頭の狂気豬(マッドネスボア)の群れの突進を前にして剣を構えた。

さっきのじで剣を使えば、狂気豬(マッドネスボア)に対して、剣を傷めることなく倒すことができそうだ。

魔素木(マナウッド)を次々になぎ倒しながら、數十頭の狂気豬(マッドネスボア)たちが一斉に突進してきた。

「いきますっ！」

突進してきた數十頭の狂気豬(マッドネスボア)たちから、素早いきでをかわすと剣で一気に斬り裂く。

「「「ぶもおおおおおおぉっ！」」」

仲間から発せられたの匂いに狂気豬(マッドネスボア)たちがさらに興をする。

興した狂気豬(マッドネスボア)は仲間が傷つくこともためらわず、俺を目がけて牙を突き立てようと突進してきた。

「おっと、當たると痛そうだから、避けさせてもらうよ」

殺到する狂気豬(マッドネスボア)の突進を軽になったで次々に避ける。

「フリック、いちおう持ち帰るのは頭に付いてる吸い茸だけだからな。の方は晝飯用にしたいから、綺麗に首を飛ばして抜きしといてくれ」

最初に斬った狂気豬(マッドネスボア)の頭部から、のように真っ赤なをした傘の部分を持つ吸い茸を慎重に切り分けていたガウェインから、晝飯用に狂気豬(マッドネスボア)を処理しろと注文がった。

「はぁ、頑張ってみます」

そういえば、腹減ってきたな……。

強化魔法を常時発させてるからお腹が減るのも早い。

とはいえ、これだけの量は食い切れないと思うんだが。

食べきれなかった分は、軽量化して翼竜に積めるだけ積んで帰るか。

皮とか牙とか置いていくにはもったいないし。

俺は自分に群がってきている狂気豬(マッドネスボア)の群れを晝食にするため、なまくらな剣を振り抜き、衝撃波で首を飛ばしていった。

「ふぅ、ガウェイン様終わりましたよ」

俺を襲ってきて、首を失った狂気豬(マッドネスボア)たちの流すで地面が真っ赤に染まっていた。

狂気豬(マッドネスボア)の群れは一頭殘らずかぬ死となっていた。

「ご苦労さん、ご苦労さん。きちんと首を飛ばしてくれとるな。これで吸い茸は十分に手にりそうだ。さて、飯にするからフリックの魔法でサッと手早く皮ごと丸焼きにしてくれ。わたしは三つくらいでいいぞ」

「え？　そのままですか？　さばかなくてもいいんです？」

「時間もないからな。サッと食って次の材料集めに行かないと」

「はぁ……分かりました。俺は一つくらいで腹いっぱいになりそうですから四つ丸焼きにしますね」

俺は手近にあった狂気豬(マッドネスボア)の死を四つ分綺麗に並べると、ポーチに常備している塩を取りだし多めにふりかけた。

下処理というわけではないけど、多の塩気があれば旨味もじられるはずだ。

綺麗に並べて塩を振った狂気豬(マッドネスボア)に向かって火の壁(ファイヤーウォール)の魔法を詠唱した。

火の壁(ファイヤーウォール)が発し、狂気豬(マッドネスボア)が炎に包まれ、しばらくすると、の焼ける香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。

その匂いに、くぅ～っと俺の腹が鳴き、栄養を補給してくれと訴えてきた。

「こっちも吸い茸は取り終えた。ついでにこれはお前にやる。牙も売れば金になるだろ？」

を焼いている間、狂気豬(マッドネスボア)の頭部から吸い茸を切り取っていたガウェインから、大量の牙を渡された。

狂気豬(マッドネスボア)の討伐依頼をけているわけではないが、これらの素材を冒険者ギルドに持ち込めば相場の価値で引き取ってくれるのでもらっておいて損はない。

「ありがたくもらっておきますね。も焼けたようですし、サッと晝飯を食べて次の材料集めに行きましょうか」

「おぅ、そうしよう。次はちょっとばかしくてすばしっこいやつで生け捕りしないといけないからな」

「くてすばしっこいやつですか……」

「まぁ、今は飯だ。飯」

そう言ったガウェインが、ほどよく火がった狂気豬(マッドネスボア)を自分のナイフで切り分け、かぶりつき始めていた。

俺もそんなガウェインに倣い、空腹を訴えるに狂気豬(マッドネスボア)の焼いたを與えることにした。

晝食を終えると、木に止まって律儀に待ってくれていた翼竜―ディモルと名付けた―を呼び、軽量化した狂気豬(マッドネスボア)の死を山のように括りつけ、次の場所に向け地上要塞亀《グランドフォートレスタートル》に撃ち落とされないよう木の高さスレスレの低空飛行をしていた。

見た目だけならディモルは絶対に飛べるようには見えないけど……。

普通に飛んでるな……これ見たらノエリアがびっくりするだろうか……。

ディモルの背には一〇頭ほどの狂気豬(マッドネスボア)が括りつけられているが、軽量化されているため全部まとめても俺と同じくらいの重さしかない。

「ディモル、重くないか？」

「クェエエ！」

他の翼竜に比べ軀がデカいディモルにとってはあまり苦にならない重さのようだ。

軽快に羽ばたきながら、低空をすいすいと飛んでいた。

「帰ったら、お前にもおをおすそ分けしてやるから楽しみにしてろよ」

「クェエエ！」

そう言って首筋をでてやると、俺の言葉を理解したのか喜んだような鳴き聲で鳴いた。

「さて、そろそろ最後の材料である生金屬生(メタルスライム)がいる古代跡が見えてくるはず。あった、あった。アレだ、アレ」

先行するガウェインが指差す先には、半分崩れかけた石造りの跡が見えてきた。

王都に居た時、古代跡の調査、探索、発掘を専門にした冒険者の『エクスカベーター』をやっていた人にチラリと聞いたが、ああいった場所は王國ができる前に繁栄していた文明が殘したらしい。

大半が崩れているらしいけど、たまに古代の文書等の出土品が見つかったりして、そういったをコレクターに売り捌いて稼いでいるそうだ。

ちなみに俺はこういった跡にはったことがない。

主に依頼を選んでいたアルフィーネが、暗くて狹い場所がヤダという理由で跡での討伐依頼を選ばなかったのが原因だが。

そう思っている間に跡の前に到著して降り立っていた。

「あとは、あそこで生金屬生(メタルスライム)を捕まえれば材料集めは終わりですか？」

「ああ、二ほど捕まえれば一本分の金屬として使えるだろうな。銀のスライムだから見失うなよ。いつもはり口のあたりをうろうろしてるが――いた」

ガウェインが跡の前を指さすと、銀のぶよぶよしたがのそのそといていた。

「あいつらは人の気配に敏だからな。一気に詰めて捕獲した方がいいぞ」

俺は聲を出さずに頷くと、息を殺して跡のり口にいる生金屬生(メタルスライム)たちに近づいていった。

まだ、こっちには気付いていないようだな。

このまま、捕獲できるか……。

あとしまで近づいたところで、不用意に足元の小枝を踏んでしまった。

「！？」

「見つかった！？」

俺の気配に気付いた生金屬生(メタルスライム)たちが、一斉に逃げ出そうとき始めた。

このままだと逃げられる。

俺はとっさに石の壁(ストーンウォール)の詠唱を始めた。

「石の壁となりて、我が指が示す先に発現せよ。石の壁(ストーンウォール)」

詠唱により俺が指を差した先に発した石の壁(ストーンウォール)の石壁が盛り上がり始める。

逃げていた生金屬生(メタルスライム)たちの退路は高い石の壁で遮られていた。

「そっちに逃げ道はないぞ。諦めて俺に捕まれ」

石の壁の前でうねうねといていた生金屬生(メタルスライム)たちは、まだ諦めてないようで壁の切れ目を見つけるとそちらに向けて全速で逃げ始めた。

「させるか！　石の壁となりて、我が指が示す先に発現せよ。石の壁(ストーンウォール)」

切れ目をなくすように新たに石の壁を作り出して囲み、生金屬生(メタルスライム)たちの退路を斷った。

「これで逃げ道はないぞ。諦めろ」

石の壁で囲まれたと察した生金屬生(メタルスライム)たちは、お互いにを寄せ合いふるふると震えていた。

ちょっとかわいそうな気もするが……。

仕方ないことだ。

俺は石の壁の中に降りると、捕まりたくない一心で逃げ回る生金屬生(メタルスライム)を追いかけ回して何とか革袋の中に捕獲することに功した。

「ふぅ、これで終わりか」

「ご苦労さん、ご苦労さん。これで大の材料が集まったから明日から製作にとりかかれるはずだ。とんでもない剣になると思うから楽しみに待っておけ」

石の壁の上で、強化した俺が生金屬生(メタルスライム)を追っかけまわすのを見ていたガウェインがニヤリと笑っていた。

どうか、普通の剣を作ってくれますように……。

俺はそんなことを思いながら、革袋の中で暴れる生金屬生(メタルスライム)が逃げ出さないよう厳重に縛ると石の壁(ストーンウォール)の魔法を解いた。

フリック専用翼竜に名前付けましたディモル君です。（非常食じゃないです）

撃墜されて非常食として食べられないように移手段兼仲間として頑張ってもらいます。

魔剣へ向けて材料が集まりましたが、吸魔草の実、吸い茸、そしてメタルスライムを材料に変人鍛冶師が仕上げる剣はまともなのか一抹の不安がありますが。品質は最高のはず。

さて、次話ですがアルフィーネ視點です。剣聖アルフィーネとしてのひとまずの決著がつく話かと。

今後とも剣聖の馴染をよろしくお願いします。

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