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材料集めから帰って一週間が経った。

ガウェインからはすでに『心拍強化《ハートレートエンハンスメント》』、『視力強化《ビジュアルエンハンスメント》』、『嗅覚強化《スメルエンハンスメント》』、『聴覚強化《ヒアリングエンハンスメント》』を教えられていた。

強化の魔法は自分の能力を魔法で向上させることができて、遠くまで見え、匂いも遠くからじ取り、小さな音まで聞き逃さず、素早くいて、敵を簡単に仕留めることができるようになる。

非常に便利な魔法だ。

だが、常用していると普段なら気にならない音が聞こえ匂いをじ、見えなかったまで見えてくる。

おまけに筋力も増しているので、日常生活における力加減が非常に難しいことをしていた。

なので、魔法に慣れる必要はあるけど常用するのはやめておくことにした。

「ふぅ、鍛錬終わり！」

「お疲れさまでした。ガウェイン師匠の強化魔法にもかなり慣れたようですね」

晝飯後の日課として、強化をした狀態での剣の稽古を終えた俺に、近くで見學していたノエリアが綺麗な布を差し出してきた。

「ありがとう。今は強化魔法を一気に全部発させて剣の稽古をしてるんだけど、かなり疲れるね。剣士としてずっと鍛錬を続けておいて良かったよ。やっぱ、ノエリアみたいに魔師専門の人だとこの魔法はきついかもね」

ノエリアからけ取った布で上半の汗を拭っていた。

「そうみたいです。ガウェイン師匠も魔師である前に鍛冶師ですので、に自信があったからこそこの強化魔法を編み出したのでしょうし。ただ、やはり一般的な魔師には中々勧められない魔法だと思います。けれど、剣も使える魔師なら、是非とも習得してもらいたい魔法の最上位という評価を與えるべきですね」

ずっと俺の稽古を見ていたノエリアも、ガウェインの強化魔法の効能を事細かに手帳に書き留めていた。

以前、自分が習得した時、王都の魔法研究所に送ったレポートにはこの魔法の有用が低いと書いたらしい。

だが、俺の使っている様子を見て考えを改め、新しくレポートを書き直しているそうだ。

「剣の腕は格段に向上するし、魔力の消費はないし、いい魔法だよね」

「はい、フリック様を見ててそう思いました」

「さて、夕食の準備でも始めるとしようか、ディモルたちも腹を空かしてるだろうし、俺も腹ペコだ」

「クェエエ！」

「そうですね。ディモルたちからの催促もありましたし、そろそろ支度を始めますか」

晝から始めた剣の稽古だったが、すでに日が暮れ始めていた。

日中、自由に近くの空を飛び回っていたディモルたちも、今は羽を休め食事を心待ちにしていた。

「できたぁああああああああああああああああああっ！！　できたぞっ！　ついにできた！！」

そろそろ母屋に戻ろうとしていた俺たちの耳に、作業場でぶガウェインの聲が聞こえてきた。

作業場から飛び出してきたガウェインの手には、柄頭から刀まで真っ赤なロングソードが握られていた。

「フリックっ！　ついにできたぞ！　お前にピッタリの剣だと思う。いやー、これは傑作だ。持ってみろ」

「は、はぁ？」

俺はガウェインが差し出した真っ赤な剣をけ取る。

大きさと刃の厚みからもっと重いかと思ったけど、けっこう軽い剣だな……。

長さは腰まである……長めのロングソードか。

握りを確認し、軽く振ってみた。

「！？」

ロイドの剣と同じように、しなやかさとさが絶妙に調整され、とても扱いやすい剣であった。

さすがガウェイン作の剣といった出來栄え……いい剣だ。

依頼した剣の出來栄えに思わず顔が綻んだ。

「マスターに喜んで頂けて栄。これから末永くよろしく」

「！？」

どこからか、知らない子供の聲が聞こえてきた。

あたりを見渡すが聲の主っぽい子供の姿は見えない。

「ガウェイン師匠……もしかして、その剣は……」

「♪～♪～♪～」

ノエリアの追及の視線をけたガウェインが視線を逸らして口笛を吹き始めた。

その様子を見て、ガウェインがこの剣に何か仕込んだことがうかがい知れた。

「ガウェイン様？　この剣になんか仕込みましたね？」

「♪～♪～♪～」

「ガウェイン師匠……これ以上しらばっくれてると父上に言って、魔境の森の中に工房を移しますよ」

ノエリアの放った言葉に口笛を吹いて誤魔化していたガウェインが固まる。

そのままスッと座り込んだかと思うと、ノエリアに向かって額を地面にり付けた。

「ごめんてー。ちょっとした悪戯じゃないかー。かわいい師匠の悪戯くらいで魔境の森送りとか酷くないか。お願いだからそれだけは勘弁してくれ、あそこは命がいくつあっても足りないんだぞ」

「自業自得です……と、言いたいところですが、この剣がどういったか自白すれば狀酌量も検討いたします」

ノエリアは平謝りのガウェインに、そうピシャリと宣告した。

「ぐぬぬっ！　フリックを驚かせようと思っただけなのに……ネタバレを強要されるとは……不覚」

「言うのですか？　言わないのですか？」

腰に手を當てたノエリアが、ガウェインに最後の通告を行っていた。

ガクリと首を垂れたガウェインは諦めたようにふぅと息を吐いた。

「言う、言うから、魔境の森は勘弁してくれ。フリックの剣は知を持つ魔剣だ。古代跡にいる生金屬生(メタルスライム)を刀に使ってみたいとずっと思っててな。やってみたら喋るようになった。可くないか？　喋る魔剣だぞ」

「知化された剣！？　ガウェイン師匠、なんというを作ってるんですか！　インテリジェンスソードの製作は王國が忌に指定している技なはず」

「大丈夫だって、そいつらは知を持ってるが持ち主に従順だ。それにそいつらは魔が持ってる因子を吸収して長するんだぜ。すごいだろ！　長して喋る魔剣だ」

喋って長する魔剣？

いったいどんな剣なんだろうか……。

俺にはガウェインの言っていることがあまり理解できなかった。

「あの、この剣ってそんなにすごいんですか？　剣の出來が素晴らしいのは分かるんですが……」

「ああ、そいつはすごいぞ！　剣としての能はわしが作ったからかなりのものだし、それに知を持ってるからそいつ自が魔法を覚えられるんだぜ。魔力は持ち主から吸収して使用するけどな。だが、安心してくれ。魔力消費を低減する魔石もキチンとはめ込んであるから、フリックが魔法を発する際の発にもなる！　すごいだろ！」

ガウェインが俺の手にしている真っ赤な剣の能に対して熱弁をふるっていた。

魔法の発ということは、この剣はノエリアの持ってる杖のように魔力消費を低減させると理解した。

それと知を持っているということは……さっきの子供の聲はこの剣が喋ったということか。

俺は手に握っている剣をジッと見た。

「そういうことです。マスター」

「喋った！　というか、俺の心を読んだのか？」

「しだけマスターの心の聲が聞こえましたので、お答えしました」

聲に合わせて柄の中央にあしらわれた大きな紫の魔石が明滅する。

「ガウェイン様が言った、お前自が魔法を使えるってのは本當か？」

「はい、今はまだ因子が足りず火の矢(ファイアアロー)しか覚えてませんが……ご覧になりますか？」

喋るのはなんとかけれたが、それよりも本當にこの魔剣が魔法を自分で使えるのか気になった。

「ああ、やってくれ」

「承知しました。目標を指定してください」

そう言われたので、剣を遠くの木に向ける。

「※■▲〇※■▲〇」

魔石が明滅したかと思うと、聞き取れない聲が流れた。

そして、剣先から飛び出した火の矢(ファイアアロー)が木に命中し燃やしていた。

フリックの相棒となる魔剣ができましたが、ガウェイン製の高能武でしたが+αがついてました。

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