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「本當に魔法を撃ちましたわね……」

「ああ、撃ったな」

俺とノエリアが手にある魔剣に視線を向けた。

「マスターのご指定通りに撃ちました」

魔剣は紫の魔石を明滅させて喋っている。

「どうだ！　すごいだろ！　この魔剣が量産された暁には全魔師が詠唱を必要としなくなるんだ！」

「その前に間違いなくガウェイン師匠が王國の衛兵に捕まると思います。剣自が知を持ち魔法が放てる、そのように騒なを王國が認めるとでも？」

ノエリアからの冷たい視線に曝されたガウェインが膝を突いて崩れ落ちた。

「あぐぅ！　なぜだ！　わたしの傑作なんだぞ！　なぜ、けれられないんだ！」

畫期的すぎて、これが安全な代なのか判斷に困るからだと思うんだけど……。

実際、剣を長させて魔法を覚えさせ、詠唱を肩代わりしてくれると別種の魔法が同時に使えたり、剣を使うことに集中できるからすごい武だと言えばすごい。

魔法の威力は俺のよりは落ちるが、そこも長するところなのだろうか。

「ガウェイン様、この剣、長するって言ってましたよね？　魔法を覚える以外に威力とかも上がったりします？」

そう問いかけると、膝を突いていたガウェインが俺の膝に抱きついてきた。

完全に油斷していて、空気壁(ウィンドバリア)を出すのを忘れていた。

「うぉおおっ！　さすがフリック！　どこぞの冷たい視線を投げかける弟子とは大違いだ。そいつは魔の持つ因子を吸収すると知が上がって魔法も覚えるし、威力も上がるかわいいやつなんだ。それを危険扱いするとは酷くないか？」

指示に従ってくれるのであれば、危ないどころかかなり有用な武になるとは思う。

ただ、賢くなってこちらの指示に従わない狀態が発生する危険はあるよな。

「もし、この剣が長して指示をけ付けなくなったら？」

「そんなのあるか！　そいつは持ち主から魔力を供給されなきゃ休眠するように作ってある。指示をけ付けなくなったら、どっか人気のない場所に厳重に封印してやればいいだけだ」

「！？」

ガウェインの言葉を聞いた魔剣が聲にならない聲をあげていた。

それはちょっと酷くないですか？

危なくなったら封印すればいいとか、作った本人が言うのはあまりに勝手だと思うが。

俺は、魔石を淡く明滅させて、落ち込んだ様子をしている魔剣が可哀想になってきた。

大丈夫だ、俺はお前を封印したりしないから、お前も俺を助けてくれよ。

「マスター！　はい、頑張ります。なんでもしますから、封印だけはしないでください！」

「だから心は読むなって」

「ああ、失禮しました。リンクは戦闘時以外カットしておきます」

俺の言葉に安心した魔剣は元気を取り戻したようで、魔石を明るく明滅させていた。

「まぁ、フリックならそいつが仮に長しまくって暴走しても抑え込めるだろうし、問題ないだろ？」

ノエリアは何か言いたげであるけど、やっぱりこの剣を封じるのは可哀想な気がしてならない。

せっかく意思をもって作られたのに、こっちの都合で封印はさせたくないよな。

「問題は大ありですよ」

「えー、なんでー。いい剣だろ」

ガウェインは口を尖らせて子供のように抗議してきた。

「たしかにいい剣だから封印は可哀想だ。ノエリア、この剣は俺の責任で預かっていいか？」

「ふぅ……フリック様がそう言うのでしたら。王國の法で忌とされる剣ですので、まずは父上に相談しましょう。今回の剣の製作、発端は父上ですし。すぐに詳細をまとめた書狀を書きます」

ノエリアも知を持つ剣を封印するのは忍びないと思っているようで、大きなため息を吐くと剣の詳細を書き留めるために紙とペンを取りに戻った。

「いえーい！　やった！　わたしの剣が世に出るぞー！」

「まだ決まったわけじゃないです。辺境伯様が許可を出してくれないかもしれませんし。あとこいつの詳細を全て教えてください。まず長の糧になる魔の因子ってなんです？」

俺はガウェインを地面に正座させると、魔剣についての詳細を聞き出すことにした。

「魔の因子ってのは、が魔素(マナ)を吸って魔化する際、の中に出來る核のことだ。通常武や魔法で倒すと絶命した時に砕け散るんだが、そいつは吸い茸から作った因子吸著材で刀を覆ってあるからその因子を吸著して長の糧にするんだ」

「ということは、この剣で魔を倒せば勝手に吸収して長すると？」

「ああ、魔法で倒したらダメだぞ。その赤い刀の部分にしか吸著材は使ってないしな。んな魔を倒して因子をある程度蓄えると、その魔剣が長したことを知らせてくれるはずだ」

「は、はい。自分でちゃんと報告できます！」

魔を倒すほど長する剣か……。

どれほどの剣に長するか楽しみだな……なんとかロイドに帯剣する許可をもらわないと……。

その後、ガウェインから出來上がった魔剣の詳細を聞き出し、ノエリアと一緒にロイドへの報告の書狀を書き上げた。

まとめると――

・知を持ち人語を理解し喋る魔剣。

・所持者からの魔力の供給をけ、魔法を行使することができる。

・魔剣による魔法の詠唱は高速で、普通の魔師よりも速い。

・長の糧は魔の核に封じられている因子。この剣で魔を切ると、それを吸著し長する。

・長すると行使できる魔法の種類が増え、威力が上がる。

・所持者の魔法とは別に魔法を発させられる。

ということをガウェインと魔剣本人から聞き出した。

魔剣は裝備者とは別に魔法を発させられる剣なので、防魔法、全攻撃魔法なりを覚えさせたら意志を伝えるだけで発してくれますんで、かなり楽になるかと。

作中は魔法の無詠唱化がまだ存在しない世界なので、魔法の想像を肩代わりしてくれる魔剣は流行するかもしれませんね。

ただ、制品ですが・・・・・・そこは変人を紹介したロイドが責任を取ってくれるでしょう。多分

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