《剣聖の馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】》外伝 第十九話 証の剣

「へぇ、わりと普通に立派な店構えをしてるね。もっと、ボロ屋かと思った」

「わりとって言うのは、余計だぞ、クソガキ。もう一度言うが、工房のには一切れるなよ!」

「分かってるわよ。ね、フィーン」

「は、はい、大丈夫。工房を見せてもらうだけです」

肩を竦めたニコライは、店の扉の鍵を外すと、扉を開けた。

「こ、これは酷い。なんで、店に酒瓶が大量に転がってるの!? ありえなくない?」

販売スペースと思われるカウンターや、陳列棚に商品であるはずの剣はなく、空の酒瓶が転がっているだけだった。

えっと、店の鍵は開けてたから、店主だとは思うけど……。

どう見ても、営業をしてるってじじゃなさそう。

「オレはそこらの鍛冶師と違って、仕事を選ぶんだよ。店頭売りなんてやってねぇだけだ」

「それにしても、これは片付けた方が……いいかなと思います。ここは店舗で工房じゃないからってもいいですよね?」

「小僧の方は好きだな。人の家のゴミを片付けるのか。まぁ、ここは自由にっていいぞ」

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ニコライから許可をもらったフィーンが、持ち前の人のよさを発揮して、散している酒瓶を集め始めた。

「フィーン、そんなことしなくても……」

「でも、汚いのは気になるし」

「ゴミ拾いはあとでしてもらうことにして、まずはオレの工房を見るんだろ? こっちだ! ついてこい」

ニコライは、奧の扉を開くと、こちらの返事を待たずに歩き出す。

あたしとフィーンは、ニコライの後を追った。

扉の奧に続く通路を抜けると、中庭らしき場所に出てくる。

視線の先に村の鍛冶師が使ってた爐よりも、かなり立派な爐がある作業小屋が見えた。

「あれがオレの工房だ。これで鍛冶師だって信用しただろ!」

店の鍵も持ってたし、迷うことなく作業小屋にまで來れたから、ニコライが詐欺師でなく、鍛冶師であることは本當みたい。

でも、腕がいいとは限らない。

あれが、別人の作品だってこともあるしね。

「ニコライが鍛冶師だってのは分かったけど、あの剣を打てる腕か信用できないわ。本當に打てるの?」

あたしの言葉を聞いたニコライの顔が赤く染まる。

「このクソガキがぁっ! オレにあの剣が打てるかだと!」

「うん、だってあたしたちは打ってるところ見てないもん。あの剣は別人の作品だって可能もあるでしょ?」

「くぅーーーっ! ツケの清算のためとはいえ、鍛冶師ニコライの打つ剣を使わせるのに値する腕を持つ、駆け出し剣士かと思って聲かけたら、とんでもねぇクソガキだったぜ! お前ら、オレのこと疑いすぎだ!」

「院長先生たちは王都は詐欺師が多いから、気を付けないって言ってた! だから、気を付けてるの!」

まぁ、鍛冶師なのは本當だったし、胡散臭そうなところと、酒臭いのだけ目を瞑れば、きっとニコライとあたしの剣に関する趣味嗜好は被ると思う。

手渡してくれた剣は本當にいい出來だったし。

あんな剣を使えれば、魔だって怖くない。

「分かった。じゃあ、打ってやるよ! その前に材料費で五萬オンスずつもらうぞ! さすがにタダではオレも打てない。本當ならこんな値段でけないが、今はしでも金がいる! 店と工房を取り上げられるわけにはいかんからなっ!」

「ちょっと待って、フィーンと相談する!」

しているニコライを手で制し、フィーンを近く引っ張ると耳打ちする。

『五萬オンスって用意できる?』

『滯在費をギリギリに切り詰めれば、用意できない金じゃないけど……。剣ができる前に、すぐにでも依頼をけて功報酬もらわないと行き詰るかも』

『そっか……ギリギリかぁ』

『でも、アルフィーネはニコライさんの剣がしいんだろ?』

『うん、フィーンもしいよね?』

『うん、僕もしい』

しばらく、二人とも無言だったけど、あたしから口を開いた。

『冒険者として生活していく記念の品として、お互いにプレゼントしあうって形でどうかな。決意も込めて発するみたいな』

剣の腕を使い、冒険者としてランクを上げ、大金を稼いだら、フィーンと一緒に故郷の村に帰ってずっと一緒に暮らすのがあたしの願いだ。

そのためには、まずは冒険者としてり上がらないといけない。

その決意の証として、ニコライの剣をお互いに贈り合いたい。

きっとフィーンもあたしと同じ思いで、王都に來てるんだろうし。

『決意込めて、記念品として剣を贈り合うか……そうだね。僕はアルフィーネを守らないといけないし、証としての剣か。いいよ、五萬オンスで買おう』

『決まりね。じゃあ、ニコライに頼むわ』

『うん、でも普段なら渉事は僕に任せるのに、アルフィーネは、剣の話だけは自分でするんだね』

『自分で使うための剣だし、フィーンが使うための剣でもあるもの。これだけは、ちゃんと自分でやらないと』

フィーンが不思議そうにこっちの顔を見てるが、剣士として生きるあたしたちにとって、剣は命を預けるモノ。

その良し悪しで結果も変わるので、ものすごく大事なことだ思ってるだけ。

だから、自分で渉する。

「ニコライ、今すぐ五萬オンス払うから、あたしとフィーンの剣を打って!」

「おまっ! オレは一本五萬の材料費――」

「聞いてない! フィーン、五萬オンス渡して」

「え? うん、これでお願いします!」

フィーンがすかさず、ニコライの手に五萬オンスのった革袋を渡した。

「あ、足もとみやがって! くそがっ! ちくしょう! やってやるが、出來は保証せんからな!」

「値切られたからって、手は抜かないでよ」

「そんなことするかっ! 工房で打つ時はオレは常に全力だ! クソガキ!」

「なら、よろしく!」

「くぅー! なんでオレはこいつらに聲をかけたんだ。ちくしょー! 仕方ねぇ、三日で打ってやるから、三日後にここに來い!」

「楽しみしとく! フィーン、とりあえずあたしたちは宿を探さないとね」

「う、うん。ニコライさんよろしくお願いします。アルフィーネ、とりあえず値切った分は、店の掃除だけでもしていこう。宿探しはその後にしよう」

フィーンはあたしが値切ったのを気にしたみたいで、ニコライの機嫌を取るため、掃除を申し出た。

まぁ、ちょっと可そうだから掃除くらいはしてあげるか。

これからも世話になるかもしれないしね。

「分かった。ニコライ、それでいい?」

「ああ、勝手にしろ。オレは酒代のツケを払ってくる」

ニコライは革袋を握りしめると、ダッシュで店を出ていった。

殘ったあたしたちは、店舗のゴミを片付け、綺麗に掃除をし終ると、暗くなるころに帰ってきたニコライとれ違いで宿探しに行くことにした。

アルフィーネの傍若無人な(?)で、ニコライが不憫すぎな気もしますが、二人はわりと気が合っているのかと思います(たぶんw)

この剣の制作結果は、本編や書籍でもれてるようになまくらに終わるわけですが。

なんでそうなったか、ニコライが値切りを嫌って、手を抜いたか、どうかは次回更新をお待ちください。

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