《剣聖の馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】》外伝 第二十二話 事件

「今日こそ、一緒に行けるよね? ほら、もう一緒の依頼をけたし、フィーン君もいいって言ってくれたし」

「知らない。付いてくるのは勝手にすれば。フィーン、行こう」

「うん、ソフィーさん。アルフィーネはあんなじだけど、言葉をわすだけですごいと思うよ。嫌いなら絶対に口聞かないから」

「そっか、そっか。私のことを好きなんだね。相思相ってやつよね。これは! もう、アルフィーネったら恥ずかしがり屋なんだから~」

「はっ!? 違うし! フィーン、なに言ってるの! 行くよ!」

依頼書を見せて、キャッキャと騒いでいるソフィーを押しのけ、あたしは冒険者ギルドを出る。

この一週間、ずっとあの調子でソフィーがあたしに絡んできている。

正直、面倒くさいし、うざったくもあるけど、どれだけ邪険に扱ってもソフィーはニコニコした顔で近寄ってくるのを止めない。

普通の人なら、あたしの対応を見て憤慨して離れていくはずなんだけど、ソフィーはその素振りすらない。

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本當にあたしと友達になりたいだけなんだろうか……。

背後からずっとあたしに話しかけているソフィーのことを考えつつ、王都の外に出ると、今日の依頼先である郊外の池に著いた。

「解熱の薬草採取しないとね。アルフィーネ、池の近くのったところに生えてるから、ほら、そこ」

ソフィーがあたしの手を勝手に摑んで、薬草が生えている場所に駆け出す。

「ちょ、ちょっと、いつも言ってるけど、勝手に手を摑まないで!」

「いいじゃん、友達だし。だったら、アルフィーネから握ってくれるの?」

「やだ」

「でしょ、だから私から握ってるだけ」

悪びれた様子を見せないソフィーにため息が出た。

「アルフィーネの負けだね。ソフィーさんは、別に悪気があるわけじゃなさそうだよ」

「フィーンまでそんなこと言うの?」

「これだけアルフィーネに拒絶を示されても、折れない人は初めて見たからね。本気でこっちに害意があるならここまでやれないから……」

フィーンもソフィーの図太さに諦めの境地に達したようで、半笑いの表をした。

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「アルフィーネ、いっぱい採れたから、おすそ分けー。ほら、ほら、三人だと早いでしょ!」

にこりと笑ったソフィーが、両手いっぱいに抱えた解熱の薬草をあたしに渡してくる。

悪い人じゃないか……。

でも、フィーンがいれば、あたしは別にそれ以外に友達なんていらな――

ソフィーの顔を見ていたら、孤児院時代の同じ歳の子たち聲が脳裏に響いた。

『アルフィーネちゃんって、黒目黒髪だし、私たちと違うよね――』

の子なのに、剣が好きって変』

『あの子、喋らないし、目つき悪いよね』

再生された聲に、思わず心臓の鼓が早くなる。

しばらく忘れたけど、やっぱフィーン以外を信用するなんて、あたしには無理。

「いらない、自分で採るから大丈夫」

ソフィーの目を見ないようにして、薬草の生えている場所を探す。

「もう、なんでー」

「ソフィーさん、悪気はないんで、すみませんね」

無理なものは無理。

絶対ソフィーも、あたしのことを変な子だって思うだろうし。

それで嫌な思いするくらいなら、最初から無視して友達にならない方がいい。

いやな気持がしでも消えるよう、無心になって薬草を探していたら、奧の草むらからぶ聲が聞こえた。

とっさに屈み、剣に手を掛け、周囲の様子を探る。

冒険者集団? トラブってるじがするけど。

視線の先には、男二人組と男六人の冒険者言い爭う様子が見えた。

「お前ら、新人のくせにオレらに場所代も納めず、ここで勝手に採取していいと思ってるのか?」

「そんな話は知らない。場所代なんて払うわけないだろ! 彼の手を放せ!」

「場所代が払えねぇなら、こいつにで払ってもらうってこともできるぜ。まぁ、しの我慢さ」

下卑た笑みを浮かべた男が、手を摑んでいる冒険者のを抱き寄せる。

「やめて!」

「手を放せ!」

「お前らみたいな新人は、オレら中堅冒険者のために金を貢ぐのが筋ってもんだぜ。オレらも新人の時は散々先輩たちにこき使われたからなぁ」

あいつら、新人から金を巻き上げてるって中堅冒険者の連中かも。

最悪。上に上がれる実力もないのに、長く冒険者してるだけで新人に偉そうにしてる。

あいつらの話を聞いてると、むかむかしてくるし、気分が悪くなる。

『アルフィーネ、私闘は厳だよ。とりあえず、僕が仲裁してくる』

剣を引き抜きかけたあたしの手を止めたのは、フィーンだった。

『でも、あんなやつをのさばらせるのも――』

喧嘩に剣を使うなって、釘は刺されてるけど、でも、あいつらは――。

剣を引き抜こうとした手を強くフィーンが押し返してくる。

『剣はそういうことに使ったらいけないって、院長先生たちに言われてたじゃないか。説得してくるから、待ってて』

フィーンがスッと立ち上がると、中年冒険者たちの方へ向かった。

『あれが噂の連中ってわけね。フィーン君だけで大丈夫なの?』

あたしの隣に來たソフィーが、視線の先にいるフィーンを心配していた。

『中堅って言っても、あそこにいる連中程度の腕じゃ、フィーンをまともに捉えられる攻撃なんてできない。だから、大丈夫』

『ふーん、ボサッとした容姿からは想像つかないけど、見かけによらずすごいんだ』

たぶん、あたしの次には強い。

今のところ、王都の冒険者ギルドにいる連中でも、あたしより強そうなのは見つからないし。

あの中堅モドキの冒険者たちに、ボコボコにされることはない。

「あの、すみません。冒険者同士の私闘は厳ですし、場所代の請求は不法行為になりますよ」

「あぁん? ガキが偉そうに説教か?」

「じゃますんじゃねぇぞ! ガキが!」

「誰か知らないけど、助かった。こいつらが不法行為をしていた証言をしてくれ!」

「とりあえず、どっちも何もしてないってことにしときましょうか。それが一番穏便に済みますし」

フィーンが若い冒険者と中堅冒険者の間にり、諍いの仲裁を始めた。

突然、その場にいた者たちが豹変する。

「かかったわ。こいつともう一人の黒髪のは最近稼いでるらしいからね! し痛めつけて金を巻き上げるための人質にしなさい! どうせも近くにいるはずよっ!」

「了解っ!」

若い冒険者が、男たちに指示を出すと、剣を引き抜き、フィーンを襲い始めた。

あたしはすぐに剣を抜くと、フィーンに聲をかけた。

「フィーン! 自衛行! これは、許してくれるよね!」

「しょうがないね。武を落とすまでにしてね。僕もそうするから!」

「分かった。剣だけを落とす」

喧嘩に剣を使うなと言われたけれど、命を守るためには使っていいと言われている。

今はフィーンの命を守るための行

ニコライの鈍い刀を引き抜くと、冒険者たちのもとへ一気に駆け寄った。

「ガキどもくせにはえぇっ!」

「當たらねぇぞ! くっ! ちょこまかと!」

「なにやってだい! とっとと、仕留めな!」

「いでぇっ! 剣先が見えねぇ!」

も男もやべぇぞ!」

遅い、遅すぎる。

こっちの攻撃の予測が全くできてないじゃん。

こんな腕で中堅冒険者って言われるなら、すぐにでもなれると思うんだけどなぁ。

剣をかわし、相手の持つ剣をドンドンと叩き落としていく。

若い男冒険者もグルだったようね。

助けにった冒険者を襲ったり、騙したりして、金を巻き上げてたのか。最悪。

フィーンとあたしが武を失って立ち盡くしていた男たちを、攻撃をできないよう一気に気絶させた。

「なんだい! だらしないねぇ! こんなガキにいいようにされるなんて!」

若い冒険者は、口汚く男たちを罵ると、一人でその場を逃げ出し始めようとする。

「逃がさないわよ。これで金をむしり取られた仲間のお返しはできるわ」

「がふっ!」

逃げ出そうとした若い冒険者の顔面を、ソフィーの拳が打ち抜いていた。

顔面を拳で打ち抜かれて気絶した若い冒険者をソフィーが手早く縛り上げていく。

「ありがと。アルフィーネと、フィーン君のおかげで、引退しちゃった仲間の敵討ちができたわ。こいつらのせいで何人の若い冒険者が廃業に追い込まれたことか」

ソフィーは、それまであたしに見せていたニコニコとした顔ではなく、憎しみの表冒険者を見下ろしていた。

「つまり、あたしたちは囮兼護衛役?」

「そう、貴方たちの容姿はとっても目立つし、ここ最近の若手の冒険者じゃ稼いでたからね。こいつらがじきに目を付けると思って、近づいてたの。おかげで捕まえることもできたしね。証拠は固めたけど、本人たちを捕まえることが私だけじゃできないから、手伝ってもらうことにしたの」

やっぱ、裏があったんだ。

そうだよね。あたしみたいな子に普通の友達ができるわけなんかないもん。

おかしい話だなって思ってたから、これでスッキリした。

でも、ソフィーの言葉を聞いてたら、やっぱどこか心の奧底が痛いと思う自分がいる。

しだけ友達になれるかもって思ってたのに……さ。

「あれだけ派手にアルフィーネにまとわりついてたのは、この人たちの注意を引くためでもあったんですか?」

「最初だけはね。でも今は本當にアルフィーネのことが大好きになったみたい。と、友達としてだからねっ! 強いし、かっこいいし、剣に一途なのが分かったし、すごい尊敬できる子。だから、こんなことしてごめん。でも、本當にありがとう。アルフィーネが居てくれなかったらできなかった」

ソフィーの発した言葉が、暗い底に沈んでいた自分の心にを差した。

フィーンだけが自分を見てくれてるって思ったけど、ソフィーも自分をみてくれていた。

そう思うと、訳もなく涙が頬を伝っていく。

「ごめんって、なんで泣くの! 謝ってるじゃん。アルフィーネ、許して。なんでもするから!」

「泣いてない!」

「泣いてるよ!」

「泣いてないって!」

「分かった! じゃあ、今度一緒にご飯食べに行こう! 味しいお店知ってるから! の子だけ二人でね。私が奢ってあげるから」

勝手に溢れた涙を必死に拭うと、平靜を裝う。

これじゃあ、まるであたしがソフィーと友達になりたかったみたいに見えるじゃん。

全然、そんな気は――なかったことはないけどっ!

「アルフィーネ、よかったね。ソフィーさんが食事にってくれてるよ。二人で行ってきなよ」

「だめ、フィーンも一緒」

「えー、フィーン君も? 私はアルフィーネと二人で行きたいのにー。まぁ、しょうがない。最初は三人でもいいよ」

「なら、奢ってもらう。でも、あくまで今回の件の謝罪としてだからねっ!」

「はいはい、分かった。それでもいいから」

険しかったソフィーの顔が、元のニコニコ顔に戻る。

「ソフィーさん、アルフィーネ、男たちも縛り上げたよ」

「じゃあ、衛兵に突き出しにいこう」

こうして、あたしたちは新人冒険者から、金銭をむしり取っていた中堅冒険者たちを衛兵に突き出し、冒険者ギルドからも私闘ではないため、おとがめなしの通知をもらえ、ちょっとした有名人になることになった。

中堅冒険者たちをたった二人で叩きのめしたことで、ハンターの依頼も増え、ランクを駆け上がることになる原因になった事件だった。

この事件を契機に、ソフィーとは友達になり、サーチャーの彼は新たな仲間とパーティーを組んだけど、街にいる時は、お互いに宿に行き來して、二人っきりで々な話をする間柄になったわけだけど。

そんなソフィーからの報で、フィーンが意外と街のから人気があるという話を知り、困ったことになるわけだけど、それはまた別の話としておく。

外伝もそろそろ、半分くらい書けたじです。

本編の前日譚という形で前半生二十年を追ってるわけですが、今思ったら、本編の作中時間は一年経ってないかもw

WEBのエピローグでは、フリックは領主→皇帝フラグを立ててますし ノエリアも皇后フラグをたて、アルフィーネは剣聖からのフリック臣下フラグを立ててましたが、書籍版最終巻ではそのエピローグを収録しませんでした。

なんで、そうなったかは書籍版1~5で確認してみてくださいませ。

さて、外伝は徐々にアルフィーネが剣聖に至る道へっていきます。

明らかにい思考のアルフィーネが垣間見えますが、ワガママぶりはまだ可いものですなぁ。

本編第一話のアンサーがこの外伝で書き切れるようガンバリマス。

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