《剣聖の馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】》外伝 第二十五話 金等級のその先へ

冒険者となって三年。

一八歳になったあたしたちは、王都の冒険者ギルドでも、凄腕のハンターとして、一目置かれる有名な金等級冒険者になっていた。

ラドクリフ家からもたらされる數々の魔の討伐死骸の引き渡しや、捕獲などの高額報酬の依頼をこなし、お金周りは銀等級だった時とは比べにならないくらい良くなった。

定宿も王都の高級宿の一室を借り切って、そこで寢起きをして生活をしながら、冒険者稼業をしている。

孤児院への仕送りも王都に來たばかりの時に比べれば、何十倍にも増やしており、忙しくて中々顔を見せに行けない院長先生たちからは、お禮の手紙が送られてきた。

あたしは冒険者として何不自由ない生活を送っている……と言いたいところだが……。

フィーンとの距離が以前に比べ、しだけ遠くなった気がしてる。

本當にちょっとなんだけど。

やっぱ、あたしのおまけで金等級冒険者をやれてるって噂が嫌なのかな……。

なるべく、訂正するようにはしてるんだけど、ほとんどの人がフィーンの実力を正當に評価しない。

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それがやっぱ不満なんだろうか……。

「おい、アルフィーネ! オレの話を聞いてるのか? 重さと長さはこれくらいでいいのか? おい、クソガキ!」

あっと、いけない。

今日はニコライのところに新しい剣の打ち合わせに來てたんだ。

あたしはニコライの聲で思いから我に返る。

「クソガキじゃないわよ! お客に対して、その言葉遣いどうにかならないかしらっ!」

「うっせぇわ! お前はクソガキだろうが! 今回の剣だって、無茶な要求しまくりじゃねぇか! 普通の鍛冶師ならこんな頭オカシイ仕様の剣なんて打たねぇぞ!」

「その分、金は払ってるでしょ!」

「竜種の鱗を叩き切れる切れ味を持ってて、なおかつ折れない剣なんて、無茶な要求しやがって! くそが! もらった額じゃ、素材代だけで足が出るわ! クソガキっ!」

「それでも儲かってるでしょうが! ニコライが『疾風』のアルフィーネ用達の剣って形で、近衛騎士をしてる貴族たちのボンボン子息に、なまくらを売り捌いてるの知ってるんだからね!」

「そ、それはそうだが。一つ訂正するぞ。売ってるのはなまくらじゃねぇ! 失敗作だ」

自分で失敗作だって言ったわね。この鍛冶師。

酒を飲んで打つのはやめないし、當たり外れのデカいのは相変わらずだけど。

當たりの剣は本人が言うように、王國の鍛冶師でも有數の出來の剣を作り出すんだよね。

なんで、それができるのかは全く分からないけども。

今使ってる三本目の剣は、特に出來が良くて、強力な魔の鱗やも紙を切るように楽に斬り裂ける切れ味を持っている。

ボンボン貴族の子息たちは、剣の良し悪しを分からず、鍛冶師ニコライの名で剣を買って満足しているので、見せられた時に、その剣なまくらですよとは、なるべく言わないでいる。

たまにしつこいやつが、自慢してきた時は、なまくらなニコライの剣を叩き折ってあげるけども。

「失敗作なんて売り捌いて、貴族たちに怒られるわよ」

「いいんだって、近衛騎士やってるボンボン貴族の子息たちに剣の良し悪しなんて分からねぇからな。それよか、重さと長さを確認しろっ!」

ニコライは、まだ叩き出しただけで、研いでいない剣の刀をこちらに手渡してくる。

竜種の鱗を叩き切るためのさと粘りを出すために、鋼だけじゃなくて々と金屬をれたとか言ってたけど。

重さはし重くじるくらいだから、研げばちょうどいいくらいかも。

長さは問題なしね。しなりもあるし、簡単には折れなさそう。

「注文通りできてるわよ。あとは研ぎでニコライが失敗しなかったら、鍛冶師ニコライ渾の一作となると思うわ」

「まあな。無駄に材料費かけただけのことはある」

「あと、フィーンのも見せて」

「おう、こっちもいい出來だ」

ニコライがもう一つの刀を新たに差し出してくる。

長の高く、前衛で攻撃をけることの多いフィーン用に、あたしよりし長くての厚い刀にしてくれるように頼んであった。

こっちも問題ないわね。これだけの厚みがあれば、簡単には折れないはず。

うん、これもいい出來だ。

ニコライが言った通りの出來の良さを見て、思わず頬が緩む。

「おっけー。こっちも注文どおり」

「拵えは、いつものでいいのか? たまには別のでもいいが?」

「いつものでいいわよ。使い慣れた方がしっくりくるしね」

「そういうもんか?」

「そういうものよ」

「でも、こんな剣を何に使うんだ? この前、作ってやった剣でも十分に魔討伐はできるだろうが?」

たしかに今使ってる剣でも普通の魔は十分に倒せる。

けど、あたしが新しい剣で倒したいのはもっと別の魔だった。

「魔竜ゲイブリグス狩り用」

「は? なんて言った?」

「だから、魔竜ゲイブリグス狩り用の剣。竜の鱗が切れないと倒せないでしょ!」

「お前、馬鹿かっ! 魔竜狩りなんてするつもりかよっ!」

剣の使い道を聞いたニコライが顔を真っ赤にして怒り出した。

「馬鹿とは失禮ねっ! 仮にもお客さんですけど!」

「最強の竜種に挑もうなんてやつに馬鹿って言って何が悪い!」

「あたしの剣の腕が、魔竜に通じるかってたしかめてみたいの! もし倒せたら、英雄ロイドにも近づけるでしょ!」

「たしかにそうだが……。無謀とか言えないぞ。それにフィーンが絶対に認めないだろう?」

「う……」

フィーンは何があっても、魔竜ゲイブリグスの討伐依頼だけはけないって言ってるけどさ。

ラドクリフ家からの依頼には、常に魔竜ゲイブリグスの討伐が差し込まれている。

依頼達時の褒賞金は膨大。

白金等級への昇格の後押しも、ラドクリフ家からしてもらえるという條件付きだ。

金等級から白金等級に上がれば、さらに依頼の報酬は高いものが増えるし、々と貴族との繋がりも深くなる。

生活はさらに安定し、仮に冒険者を引退しても々と仕事を世話してもらやすくなると聞いていた。

だからこそ、絶対に狩りたい魔なんだけど。

生きである以上、絶対に倒せない相手じゃないはずだし。

「だ、大丈夫。フィーンはきっといいって言ってくれるはずだからっ!」

「お前なぁ……。そうやって、フィーンに無茶ばかり要求するのいいかげんやめろっての」

「なんで! フィーンはあたしのお願いをちゃんと聞いてくれるもん! 魔竜ゲイブリグスの討伐もちゃんとお願いすればフィーンは許してくれるもん!」

「また、おまえ……。子供みてーなことを言いやがって……。フィーンが怒っても知らねぇぞ」

ニコライは半ば諦めの境地に至ったのか、首を振って肩を竦めた。

フィーンはあたしが真剣にお願いしたら、絶対に嫌だって言わないから。

それがずっと一緒に暮らしてきたあたしとフィーンの絆だし。

「大丈夫! それよりも、研ぎも早くお願いね! その剣がないと、討伐をけられないし!」

「かー、お前は人使いが荒いなぁー! 仕方ねぇ、フィーンはちゃんと説得しろよ!」

「分かってる! 頼んだわよ!」

あたしは、ニコライに魔竜ゲイブリグスの討伐用の剣の研ぎを頼むと、宿の部屋に戻ることにした。

本日も更新読んで頂きありがとうございます。

アルフィーネが剣聖になるきっかけとなった、魔竜ゲイブリグスの討伐への前振りとなる今回の話でしたが、アルフィーネの相変わらずの子供っぽさ。

フィーンの苦労が思いやられますが、まだこの時は、フィーンもそれを重荷だと自覚してなかったかなと思います。當たり前の生活の延長戦だったでしょうし。

しギクシャクする関係ではあったものの、決定的な関係の崩壊ではなかった。

この魔竜ゲイブリグスの討伐が、二人の関係を斷絶させた最大の要因だったと思います。

魔竜ゲイブリグスの討伐の様子は、コミック一巻や書籍版一巻で最終盤さらっとれてますが、そこに至るまでのやりとりを外伝で書ければと思っております。

次回更新お待ちくださいませ。

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