私の人生は酷いものだった。

侯爵家の娘として散々甘やかされて育った私、レティシア・べニートは、よく言えば天真爛漫、悪く言えば頭の悪いに長した。

大嫌いなものは勉強、大好きなものはドレスと化粧品。婚約者の王太子殿下のために勉強を頑張ろうだなんて考えたこともない。

顔と家柄しか取り柄がないが輿れしてきたのだから、アグスティン殿下の反応はそれはそれは冷たいものだった。

指一本れてくれないのに、軽蔑を隠そうともしない綺麗な瞳で睨まれても、馬鹿な私はを高鳴らせるばかり。

そう、私はアグスティン殿下のことが好きだった。だからあの手この手で気を惹こうとした。

お茶會に招待してみたり、綺麗なドレスを著てみたり、贈りをしてみたり。

けれど殘念ながら、アグスティン殿下には人がいた。學園で出會った男爵令嬢。可らしくて朗らかな彼は公然の人として王城で地位を確立しており、私はいつも慘めな思いをしていた。

そうして、する夫がまったく振り向いてくれないことに業を煮やし、更に暴走を重ねていく。

超高級品の首飾りを購したのは、綺麗だと言ってしかったから。

タチの悪い商人と付き合いがあったのは、珍しいお茶を手にれて彼をいたかったから。

私の化粧をするときにミスをした侍を流刑に処したのは、綺麗な私を殿下に見せたかったのに、それを邪魔したのが許せなかったから。

私にとっては全て理にかなっていて、當然の権利を行使したまでのことだとつい數日前までは思っていた。

賢明な彼が許すはずはなかったのに。アグスティン殿下——いいえ、陛下に想を盡かされたからこそ、私は今、斷頭臺に登っているんだもの。

束ねた髪を斷つ無な音が、群衆の罵聲を上回って耳に響く。

どこかから飛んできた石が額にぶつかって、頬を生暖かいが流れていくがした。

みすぼらしい麻のワンピースを著せられて、自慢の黒髪まで失ってはもう誇れるものなど何もない。後ろ手に縛られたまま無造作にを押され、私の首がついに斷頭臺へとかけられた。

熱狂したような民衆の聲が一際大きくなって、殺せ殺せとんでいる。悪意と殺意、そして負の全てを増幅させる熱意に包まれて、私は全を針で貫かれたような気分になった。

こんなに恨まれていただなんて知らなかった。

だって、好きだった。陛下のことが好きだった。こののためならなんだってできた。

そのせいで家族まで捕らえられるだなんて思わなかったし、こんな風に処刑されるだなんて想像もしなかったの。

（陛下……！）

首を木枠で押さえられる寸前、懸命に顔を上げて陛下の姿を探す。黃金の髪は貴賓席の中でも目立つので、斷頭臺が最もよく見える位置でゆったりと腰掛けている彼をすぐに見つけることができた。

そうして私は、サファイアブルーの瞳に何の溫度も宿っていないことを思い知る。

ああ、私、私は。今まで、一何を——。

金屬のる音がして、私の視界は真っ暗になった。

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