《お月様はいつも雨降り》第三従五

「晉級型原潛、秋田沖領海侵を確認」

「八八五型原潛二、利沖領海侵、LQ0-6※の記録からそれぞれ太平洋艦隊『ペルミ』、『ウラジオストク』と一致」 ※水中固定聴音裝置

「移送した掃海艦『えたじま』及び『はくげい』警戒にあたっています」

自衛隊の報本部には矢継ぎ早に各基地からの報が飛び込む。

「上陸予想地點は石狩浜沖から天塩沖が九十五パーセントか、そんなに都合よくいくのか」

「いくわけないだろ、これだけ堂々と乗り込んでくるんだ、直接、脈(つがるかいきょう)を突いてくる」

「米軍のきが遅すぎる……」

「いつものように高みの見さ、引っ掻き回すだけ引っ掻き回しておいて」

「対馬沖にも國籍不明のイージス艦船確認」

「八千二百トン級、あの國以外に考えられんだろう、一応、米國様に義理立てているんだよ」

「北海道がロシア、その離島が北朝鮮、九州と沖縄が中國、対馬、佐渡あたりが韓國か、おっと、本州、四國が米國、まるで十九世紀の清國の地図だな」

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憾砲ばかりいつも発砲しているからこうなるんだ、世界でもこんなに落しやすくて金のある國はない、俺だって他國の指揮だったらそうしている」

「小笠原沖の警戒も継続、この分だと南からも來るぞ、しかし、そんなに太平洋へ艦船を回せないな」

「やりくりするしかないだろ」

多くの分析は、この急事態に落ち著いた様子を見せながらも心中狼狽していることを互いに理解した。

「米軍の報が本當に遅すぎる……懸念していたことがこうも早く出てくるとは、日本も米國の後ろ盾がなくなれば、もって三週間か」

「とっくに裏取引が済んでいたいたんだろうな、米國が王將を握っている限りうかつに他國は手が出せなくなるからな」

「いい加減に私語は慎め、それらを判斷するのは我々の任務ではない」

危険な報が流れ続けるモニターを凝視しながら若い分析たちは抱える不安を口に出さずにはいられなかった。

「例の音が各都市部で鳴っているとの報告、探知が多數」

「どれくらいの範囲だ」

「重ねます」

赤く映し出された地域はほぼ日本列島を覆っているのを目にした分析はうめきに近い聲を上げた。

「すぐに司令部へ報告、急だ、各部隊にもこの報だけは回せ」

「また降ってきますか?」

「多分な……よりにもよって、あいつらはこんな時に天國の扉を開けやがった」

「キャンプ座間から橫田に降りた連中はどうしている」

「第一普通科連隊と練馬で合流、まもなく現地に到著します」

「出し抜かれなきゃいいがな」

「政府としてはそれも込みなんじゃないですかね」

「押収されること前提にか?まさかだろ」

「我々には強力な憾砲が配備されていますからね、そう言っているうちには米國から攻撃されることは絶対にありませんよ」

その分析の冗談には誰一人笑うことができなかった。その冗談を言った本人でさえ、おさえきれない怒りのが表に満ちあふれていた。

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