《【書籍化】わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く【8/26から電撃マオウでコミカライズスタート!】》とある付嬢について
日が暮れて徐々に人通りの減っていく往來を、ミースはギルドの扉越しに見つめていた。
報酬を得るためにやって來る冒険者達を捌き、適度に想を振り撒きながら時間を潰していく。そろそろ今日のけ付けを終わりにして、ご飯でも食べに行こうかな。そう考えるくらいには外の景は変わり始め、人影は赤と薄紫に染まっている。
とりあえず手が空いたところで立ち上がり、一度執務室に寄ってから業務の終わりを告げる。
ギルドマスターのセクハラじみた発言をさらりとけ流し、裏口からギルドを後にする。
ギルドの付嬢はある程度のルックス、相手の発言の意を汲み取ることが出來るだけの思考力、書類仕事をタスクごとに分けて管理し進められる事務処理能力等、先天後天かかわらず実に多くの要素や素養を要求される。故に彼達はかなり高給取りであり、正直な話木っ端冒険者では足元にも及ばないだけの稼ぎがある。
元々貴族の三四がなるような職であるために、彼の周囲の同僚達はどことなくハイソな雰囲気があった。ミースはその出が中流家庭以上の者達特有の、なんとなく漂う高貴なじがあまり好きではなかった。
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ギルドの雑用係、速記係、事務係、そして付嬢と自らの才覚に頼って昇進し続けてきたいわゆる叩き上げの彼は、愚にもつかないような下流の出だった。彼が発する取っつきやすさはその出自のおかげであり、それがまた彼の商品価値を高めているのも理解していた。
高給で安定していて、稼ぎのある人間との出會いがある。それが彼が今もまだ現場に止まっている理由だ。
嫌なこともあるけれど、むしろ嫌なことの方が多いけれど、それでもミースは付嬢という仕事が嫌いにはなれなかった。
時折現れる綺羅星のような人材を見るのは楽しかったし、自分が手塩にかけた者達が日の目を見ると自分のことのように嬉しくなった。
そんな彼は今、ギルド付嬢のミースさんから一人のミースへと戻りギルドのり口近くに立っている。
人の流れは速く、波に飲まれて自分もまた背景の一部になってしまいそう。寄せては返す人波を見て、ちょっぴりセンチメンタルな傷を抱く。
一人のしたとして人の往來を見ていた彼の顔が、とある人影を見てぱぁっと明るくなる。
そこにいたのは一人の老人、彼が昨日助けてもらった新人冒険者のディルだ。
助けてもらったのだから普通ならば、の一つや二つ高鳴りそうなものではあるが、彼は全くトキメいたりはしなかった。
窮地を救ってくれたヒーロー、だというのにどこか危なげで、基本的に頼りなく、そしてよぼよぼに年を食っている。
既になくなっている父親に頭をでられていた期の頃を思い出させるような安心が、ディルの醸し出す空気にはあった。
ミースは懐かしさと嬉しさ、昔じていたキラキラとした何かをないぜにしながらディルのもとへと近づいていく。
「狩りの結果はどうでしたか?」
「んあ……ああ、ミースか。聞いちゃうか、それを聞いてしまうか」
得意気な様子を見て、なんとなくイラッとする。
本當にこの人は……とまだ會ってから時間が経ったわけでもないのにため息を吐いてしまいたくなってしまう。
これも一種の才能なのかな。自分の気持ちを圧し殺しながら、ミースは相槌をれてディルの話を聞いた。
彼が背負った背嚢をかすと、ガラガラと何かいものがぶつかり合うような音が聞こえる。その全てがスライムの核なのだということは、言われる前にわかった。
「これだけあれば、鉄の剣が買えそうじゃ」
「武の前に、まず防を揃えた方がいいと思いますよ」
「ロマン的には、剣を揃えねばいかん。防なぞつけとっても、一撃もらえばわしゃ死ぬからの」
よくわからない自分理論をひけらかすディルからは若々しさをじるが、人の話を聞かないのは老人特有のそれである。
(……不思議な人)
好きか嫌いかで言えば、好き。
なんだか放っておけないんだけど、ちょっと放っておきたくなるような格。
風來坊なおじいちゃん、すぐにでもどこかに消えてしまいそう。
居なくなったら嬉しさが先に來て、その後でちょっぴり悲しくなってしまいそう。
「どうじゃ、その辺の屋臺でなんか買おうか? 無論、わしの奢りでな」
「私の方が稼いでますから、無理しないで下さい。そんな風に使ってたら、お金なんてすぐになくなっちゃうんですから」
すごく心地よいというじではないけれど、あまり嫌ではない。
そんな不思議な覚を味わいながら、ミースはディルの後ろについていき、しっかり割り勘でご飯を一緒にした。
また明日が來ればいいな。ポジティブに考えながら食事をするミースの笑顔は、常日頃の彼よりも、一層魅力的だった。
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