《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》驚きの連続

「か……かわいい」

「これがあの噂の……ギルマスを倒したという亀のアイビーなのか……」

「ミニマムプリチー……あ、よく見ると腕もちょっとオシャレ!」

従魔用のバンドは、ただ扁平な板をにしたような無骨なものだ。

オシャレさんであるアイビーは、腕を魔法を使ってまで形して、形を整えたり意匠を彫り込んだりしているのだ。

今著けている腕には、彼が一生懸命彫っていた薔薇の花が刻まれている。

自分のおしゃれポイントに気付けてもらえて鼻高々なアイビーが、満足げにふっと鼻から息を吐いた。

「アイビーが自分で彫ったんですよ」

「えっ、ホントに? ……もうそれ頭いいとかじゃなくない!?」

確かにペットとして頭いいとか、そういう次元はもう越えてるよね。

普通に頭もいいし、魔法も使えるし。

アイビーが人間だったら、今頃ひとかどの人にでもなってたんじゃないかな。

「エナさん。僕たちの噂って今、どんなことになってます?」

うむむと唸りながら腕を組むエナさん。

とサラさんは、ギルマスとの戦いは見てないんだよな。

に來てくれたのは、アイシャさん単獨だったし。

エナさんがに魚の骨でも詰まったみたいな顔をしている。

どんな風に説明したものかって、苦慮しているみたいだ。

……そんなにひどいのかな?

尾ひれ背ひれがついて、とんでもないことになってるのかもしれない。

「ううん、本人を前にしてどこまで言っていいのかはわからないけれど……」

「大きさを自在に変化できるとか、プラズマブレスを吐いたとか、ギルマスを一瞬で治したとか。一応ギルマスを倒したって話は軽く聞いてるんだけど、実際どこまで本當なの? アイシャって噓吐けるタイプじゃないんだけど、説明するときなんか凄い興しててさ、イマイチ伝わってこなかったのよね……」

「おいサラ、そんな直截に……」

「大合ってますね」

「大合ってるのか!?」

そんなバカな、とあわあわしているエナさん。

吐いたのはプラズマブレスじゃなくて雷撃だけど、それ以外は大合ってる。

っていうかアイシャさん、あのアイビーの勇姿を二人にはあんまり詳しく説明してなかったんだ。

「そもそも私たちの所に來るなんて思ってなかったから、説明を最小限にしといたの。事実を知ったら、サラは仕掛けとかしそうだし。そもそも信じてもくれなさそうだしね」

「そんなことは……あったかも」

僕が不思議そうな顔をしていたからか、アイシャさん本人から補足がる。

いやあったんかい、とサラさんには心の中で突っ込んでおく。

……確かに四等級でも『ラピスラズリ』より強いパーティーはいくつもあったし、三等級の人達からも聲をかけられてたしね。

エナさんもまさか、自分達が清潔だからという理由で選ばれるだなんて思ってなかったんだろう。

僕もアイビーからの強い要がなければ、別のパーティーの方がいいかなと思っていたし。

二人と話しているうちに、エナさんが落ち著きを取り戻してきた。

は出會い立ての頃のキリッとした様子に戻っていて、すごく頼りになりそうだった。

予想外の出來事には弱いけど、想定のことにはめっぽう強いタイプなのかも。

「ちなみにアイビーって、どれくらい大きくなるんだ?」

「うーんと……僕の実家くらい、ですかね……」

「家サイズなのか!?」

事前にゼニファーさんからは、アイビーが持ってる力は隠さずにどんどん出していけというアドバイスをもらっている。

なのでし悩んだけど、本當のことを話してしまうことにした。

「それでもまだ長が止まってないので、まだまだ大きくなりますね」

「みー」

私はまだまだ長期と、を張るアイビー。

その様子を見てアイシャさんが二ヒッと笑う。

何か笑われるようなことでもしてしまっただろうか。

し不安に思っていると、彼は眉間にトントンと指を當てて、

「ほら二人とも、一事が萬事こんなじなんだよ? 私から話聞いても、信じなかったでしょ?」

「うーん、確かにそうかも……」

「じゃ、じゃあ本當にプラズマブレスが吐けるのか?」

「いや、口から電撃は吐けますけど……あれはブレス攻撃じゃないですよ」

「回復魔法も使えるんでしょ?」

「ああ、電撃を食らって全火傷を負ったギルマスを一瞬で治してた」

「……えぇ、それって一級神レベル……」

サラさんが僕の言葉を聞いて絶句している。

アイビーは傷を治すことができるけど、それがどのくらいのレベルなのかは、比較対象がないからわからない。

僕が木から落ちたときにり傷を治したりするくらいでしか、使ってこなかったから。

そもそもアイビーは、怪我なんかしないくらい丈夫だしね。

でもアンドレさんのあの全火傷も治せたくらいだから……魔法の練度も、結構高いのかもしれない。

一級神っていうのがなんなのかは、よくわからないけれど。

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