《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》空の覇者

グリフォンというのは、四足歩行の魔だ。

軀は三メートルほどもあって、は雪みたいに真っ白。

鳥の頭と獅子のという異形を持ち、翼が生えていて空を飛ぶことができる。

口からは火を噴くし、その爪は鉄を易々と裂けるほど力強い。

グリフォンという魔が一番厄介なのは、やはり空を飛べるという部分らしい。

ワイバーンよりも強くて、空の覇者とも呼ばれているんだって。

グリフォンを手懐けて、乗りこなした人間はグリフォンライダーとして英雄になったりできるらしいよ。

英雄譚としては結構有名な話なんだってさ。

でも実際問題、空高くからの一方的な攻撃はかなり兇悪だ。

手を出せずなにもできないまま壊滅、なんてパターンも後を絶たないらしい。

だから一般的には、まず自分達を狙いに來たグリフォンが降りてきたタイミングを見計らってどうにかして翼を傷つける。

そして飛翔能力を奪った手負いのグリフォンをなんとかして討伐するというやり方らしい。

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一等級の魔であるグリフォンの皮にはなかなか攻撃が通らず、魔法もその白い皮が威力を減衰させてしまう。

なので人海戦でグリフォンが立てなくなるまで戦い続けるのが普通だと、そう聞き続けていたのだが――――

「アッハッハ、こいつはいい! 空を駆けるのって、サイコーッ!」

「みみぃ!」

「クルウウウゥッ!?」

今空の覇者さんは、アイビーとシャノンさんによってボコボコにされていた。

僕たちはそれを、顔を上に向けて呆けたように見つめている最中だ。

顔を上げて見つめている……ということからもわかるように、彼達は空を駆けているのだ。

これがシャノンさんが提案して、アイビーが乗った作戦。

『グリフォンが空を飛んでるなら、そのまま空で戦えばいいじゃない』作戦だ。

アイビーには重力魔法という、の重さを変える魔法がある。

は今魔法を使い、自の重量を極限まで軽くして宙に浮いている。

ただ重さがないだけなので、自由にはけない。

なのでアイビーは周囲を魔法障壁でがっちりとガードして、グリフォンの攻撃を完全に防ぎきっていた。

対してその相方であるシャノンさんは、重力魔法の効果をけていない。

前衛職である彼は、それでは攻撃ができなくなってしまうからだ。

「五段突き」

「キョワアッ!!」

空で実力を発揮できないというシャノンさんの問題を解決したのは、アイビーの魔法障壁である。

グリフォンの爪を紙一重で避け、突きを叩き込むシャノンさんの足下には、緑が放たれる障壁がある。

今シャノンさんは障壁を足場として使い、十分な踏み込みをもってグリフォンに相対している。

アイビーは背中や足に目でもついているのか、縦橫無盡に駆け回るシャノンさんに合わせ、しっかりと足場となる障壁を作っている。

凄い作の正確さだ。

隣にいる、一昨日僕を噓つきといったの子(名前はミリアムさんというらしい)が、夢を見ていると思ったのか、しきりに目をごしごしっている。

きっと二等級の子から見ても、信じられないようなことなんだと思う。

「みぃ!」

アイビーの口元に魔法陣が展開され、彼の周囲に円を描くように魔法の矢が現れた。

火の矢、水の矢、の矢、そして雷の矢。

合わせて四種類の魔力の矢が、數えるのも馬鹿らしいほど大量に並んでいる。

それらは、グリフォン目掛けてすごい勢いで飛んでいく。

軌道は同心円狀に広がっているけど、狙いはしっかりと定められていた。

「クルルウッ!」

グリフォンが空を駆け、その攻撃の軌道から逃れる。

すると面白いように、魔法の矢が一つ殘らず背を向けたグリフォン目掛け、攻撃の軌道を変えた。

今彼が使っている魔法の矢には、その全てに追尾能力がついているらしい。

そんなものを全部につけるなんて、すごい手間なんじゃないかと思う。

すると逃げるのは無駄だと悟ったグリフォンが、その兇悪な爪で攻撃を防ごうとした。

皮より爪は、更に魔法に対する抵抗が強い。

攻撃をけて立とうとしたグリフォンに當たる直前、矢が更に軌道を変化させる。

円を描きながら進んでいた矢は途中でカクカクと角張ったきをして、迎撃しようとするグリフォンを嘲笑うかのようにその全へと狙いを変えた。

どうやらあれは追尾機能じゃなくて、一本一本をアイビーがってるみたいだ。

僕が知らないうちにそんなこともできるようになってたんだ、どんどん多才になっていくなぁ。

「クルルッ!?」

ズドドドドッ!!

グリフォンの全が矢によって貫かれる。

その皮は魔法の威力を減衰はさせるけど、魔法そのものを無効化させるわけではない。

二度、三度と同じ場所に攻撃をけ続けるうちにダメージは蓄積されていく。

そしてアイビーの魔法の矢は、グリフォンの皮を飽和させてしまうだけの量がある。

「は-い、がら空きっ!」

魔法の矢をなんとか耐えきり、全からブスブスと煙を出しているグリフォンの腹部に、階段のようになった障壁を駆け上がってきた、シャノンさんの一撃が突き出した剣が突き刺さる。

「クル……」

限界を迎えたグリフォンが、地に落ちていく。

まみれで、魔であることを示す青いが地面へ凄い勢いで流れ出していた。

多分最後の突きが、トドメになったんだと思う。

「ねぇ、これ……私たち、いる?」

「は、はは……わかりません」

驚きか呆れか、険が取れた僧のミリアムさん。

に乾いた笑いを浴びせていると、グリフォンが僕たちの目の前に落ちてきた。

空の覇者が、冗談みたいにあっさりと。

トドメをさしたシャノンさんも流石としか言いようがないけど、アイビーも大概だよなぁ。

一等級の魔を一方的にボコボコにって……もう強さの底が見えないよ。

君はどこに向かおうとしてるんだい、アイビー?

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