《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》指名依頼

「……で、アイビーが何故かグリフォンをテイムした、と」

「……はい。それでなんか流れで、僕の従魔にもなっちゃいました」

「なんだよ流れって」

なんだよって言われても……本當に流れみたいなものだったんだよなぁ。

僕がなんにもしてないうちに、気付いたらそうなってたんだもん。

「今はアクープの街周辺で待ってるように言い聞かせてます」

「お前……グリフォンにしっかり言い含めとけよ。城壁にグリフォンが爪立てたって今マジの騒ぎになってるんだぞ」

……もっと詳しい説明をしておくべきだったかもしれない。

グリフォンは人間と常識が違うんだから、ただ待ってろって言われてもその意味も違うはずだもんね。

人に見えない場所でずっと待ってろって言わなくちゃいけなかったんだ。

アイビーに慣れちゃってるから、僕は普通の従魔師(テイマー)のやり方とかがよくわかっていない。

一度先輩従魔師の人に話を聞いてみた方がいいかもしれないな。

「まぁそれはあとで止めさせればいいとして……なんでこんな大事になるのかねぇ。グリフォンどかすのもまぁまぁデカい話だが、そんなもんじゃ済まされないぞこれは」

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やっぱり、そうだよね。

グリフォンをテイムしたってのは、得が知れないアイビーを従魔にしてるっていうのはベクトルの違うヤバさがあるもんなぁ。

アイビーは小さくなれるから宿屋にだってペット同伴扱いでれるくらいだけど、グリフォンなんて馬鹿でかいし見ただけで速攻わかるフォルムをしてるし。

何よりグリフォンに乗ってきた僕は、傍から見たら完全なグリフォンライダーなわけだ。

はおこぼれでグリフォンを従えてるだけの、ハリボテ新人冒険者だっていうのにね。

「お前グリフォンライダーが最後に出たのいつだか知ってっか? 二百年前だぞ」

「に、二百年……」

「グリフォンをテイムするなんて、おとぎ話とか伝説とかの領域に頭突っ込んでるんだ。お前……もうアイビーの通訳ってだけじゃいられなくなるぜ?」

「な、なんとなくそんなじはしたんですけれども……」

アイビーが僕にやれってせがむんだもん。

きっとそれにだって理由はあるとは思うよ?

例えば……僕という人間に対して、なんらかの実績を付けるため、とかさ。

僕がただアイビーの通訳をするだけっていう役回りをこれからも続けていくなら、いずれ僕じゃなくて他の、もっと頼りになるような奴でいいじゃないかって話になるかもしれない。

そういうことを警戒してるんじゃないかな。

でもやっぱり、僕には荷が重い気がするよ。

だって僕には、ちょっと剣が達者な子供に負けるくらいの実力しかないわけで。

……だけど、わざわざこんなことをやれって伝えてきたってことはさ。

アイビーももっと僕に頑張れって、そう思ってるって事なんだよね。

だったら僕も、前に進まなくちゃ。

いつまでも同じところに立ってる事は現狀維持じゃなくて後退だと、僕は思うから。

「僕ってこれからどうなると思います?」

「『一等級のグリフォンをテイムした史上最強の従魔師(テイマー)』、『アクープの街から生まれた新たなグリフォンライダー』、『グリフォンを従えるアクープ最強の冒険者』……どれがいい?」

「……どれもいやですねぇ。亀と一緒にお晝寢してる四等級冒険者にはなれないもんでしょうか」

よくよく考えてみると、僕たちがアクープの街に來たのって普通の生活を送るためだったはずだよね。

でも冒険者になって、何故かアンドレさんと戦ったり、グリフォンを仲間にしたり……普通とはどんどんかけ離れていってしまっている。

グリフォンをどかす依頼の達料は払われるはずだし、しばらくはのんべんだらりとどこかでゆっくりしたいなぁ。

久しぶりにアイビーと日向ぼっことかしたいよ、今度はグリフォンもれてさ。

……けどどう考えても、そんな風に過ごせるのはまだまだ先だよなぁ。

「まぁこうなった以上、ただの冒険者でいるのは無理だぁな。どっかでドカンと稼いでよ、有事の際以外にはのんびりしてるみたいな生き方するしかねぇんじゃねぇの? 俺もまだ伝えてないんだけどよ、多分あいつはもうお前に接しに來る頃だと思うぞ?」

アンドレさんがあいつ呼びする人間を、僕は二人しか知らない。

一人目はもちろん、僕に々な事を教えたり、面倒を見てくれたりしたゼニファーさん。

そしてもう一人は……。

「みぃ」

何か來る、というアイビーの鳴き聲に思考が中斷される。

いったい何が……と構えていると、カツンカツンと応接室の窓に何かが當たる音がした。

窓ガラスの向こうを見ると、大きなフクロウの目がこっちを見つめている。

それを見てアンドレさんは、ははぁと変な笑い聲を出した。

「あいつはいっつも報早いからなぁ。もう來たみたいだ」

彼が窓を開くと、フクロウが中へってくる。

その足には、小さな紙が結ばれていた。

鳥を使ってやりとりする手紙だ。

有事の際なんかに使われる通信手段の一つだと聞いたことがある。

アンドレさんはふむふむと読みながら、頷いている。

ということはやっぱり、あの人からの手紙か。

ってことはこれから衛兵さんに手紙を渡す意味も、なくなってしまったかもしれない。

彼は手紙を読み終えて、ポケットにしまってから僕たちの方を向いた。

そしてなんだか気の抜けた顔をしてから、くたびれた様子で、ソファにだらっとを預ける。

「なんであいつはこう早急かねぇ……。おい、ブルーノとアイビー。お前らは領主権限で今日から三等級だ」

冒険者になって二日目にして、怒濤の昇格だ。

三等級からは指名依頼、及び強制依頼という種類の依頼が増える。

指名依頼というのは誰かから、ギルドに手數料を支払う形で直接ける依頼。

強制依頼というのは、三等級以上の実力がある者に対し、戦爭や災害等での必要から発注される、斷る権限がこちら側にない依頼のことだ。

強制依頼自は出されれば他國に冒険者が逃げたりするので、まず出されることはないというのは、僕でも知ってるくらい有名な話だ。

でも、もう三等級か。

なんだか、もう驚くのにも疲れてきちゃったよ。

アイビーと、最近毎日忙しないねぇ、もうちょっとゆっくりしたいねぇと視線をわす。

どうやら彼も、慌ただしい毎日に々嫌気をじ始めてるらしい。

やっぱり似たもの同士だね、僕ら。

でも驚き慣れたはずの僕も、流石に次のアンドレさんの言葉には驚愕せざるをえなかった。

「そんでお前らに早速の指名依頼が來た。エンドルド辺境伯の三、エカテリーナの護衛をしてくれ。『我が街から出た新たなグリフォンライダーに、娘の警護をお願いしたい』って、領主からの直々の依頼だ。……ったく、報早すぎんだろ、あいつ」

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