《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》大人気
辺境伯の所有地を出て、貴族街を抜けて一般區畫へとる。
すると僕らがやってくるのを見計らって、空から一匹の魔が降りてきた。
「クルルッ!」
グリフォンのサンシタである。
どうやら貴族街には降りないようにという命令を、しっかり覚えていてくれたらしい。
「うおっ、なんだなんだっ!?」
「あんた新參かよ。俺はもう慣れたぜ」
グリフォンがいきなり飛んできて、慌てている人達とそうでない人達がいる。
慌ててるのは僕やサンシタを遠目にも見たことのない人達で、平然としてるのは何度か目にしている人達だろう。
エンドルド辺境伯はなんというかとても派手好きなお方で……びっくりすることに、従魔が街中へ直接著陸することを領主の認可さえあれば可能にするという新たなルールを作ってしまった。
そして僕は無事(?)領主様公式認定のグリフォンライダーになり、サンシタには貴族街以外のどこへでも著陸する許可が下りたのだ。
これで僕以外の、鳥型魔を使う人達はありがたがったらしいけど……僕からしたら正直、許可なんかいらなかったよ。
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だって許可出した時に辺境伯ってば、
「お前らは毎回アクープん中に乗りれろ。その方が面白いからな」
とか言って、著陸することを半ば強制してくるんだもの。
おかげで最初の一週間ほどは、街中にグリフォンがという阿鼻喚が止まらず、辺境伯が補填してくれなければ僕が自が出した損害額で首を吊らなくちゃいけないほどにまで事態が悪化した。
多分、彼としてはグリフォンライダーの僕という存在を周知させたかったんだろうけど……危うく借金で首が回らなくなるところだった。
正直あの時のことはもう、思い出したくないかな。
「グリフォンの著陸許可!? 領主公認!? そんなバカな話があるかよ!」
「あるんだよ、それが。なんだ、お前はうちの領主様がバカとでも言うつもりか?」
「ばっ、そんなわけあるめぇよ!」
基本的に騒ぎは収まったけど、こうして外から來た人やアクープに帰ってきた人達には未だに驚かれたり、武を向けられたりすることもある。
それを街の住民達が止めるという景にも、もう慣れてきた。
……慣れちゃいけない気もするけど、あまり深くは考えないようにしよう。
「おいサンシタ、もう店に出せねぇ腐りかけの、食うか?」
「グルッ!」
め事にならないか一応目を向けていると、降りてきたサンシタが屋のおじさんに餌付けされていた。
いただくでやんす! とサンシタがを頬張っている。
「あ、サンシタだ!」
「サンシタ、サンシタ!」
口の周りにをべたつかせている彼に、子供達が群がってくる。
食事中に構われるのが鬱陶しそうだが、人間に手は出さないよう厳命しているので、されるがままに抱きつかれたりをひっぱられたりしていた。
「グル……」
人気者は辛いでやんす……と哀愁を漂わせているサンシタ。
それを見て肩の上に乗っているアイビーが、なんだかやりきれないと首をふるふる振っている。
これは僕も予想外なことだったんだけど、実はアクープの街ではアイビーよりもサンシタの方が圧倒的に人気がある。
アイビーはまだまだ認知度も低く、新種の亀型魔であるということ以外に目立った報もない。
変にめ事にならないよう大きさも常に手乗りサイズになっているので、そもそも気付かれない場合も多いのだ。
実力を知っているのは辺境伯に近い位置にいる人間と、冒険者ギルド関連の人達くらいである。
対してサンシタはというと、彼は空の覇者であり、一等級の魔であるグリフォンなのだ。
聲も僕以外には聞こえないので、あの三下口調が他の人の耳に屆くこともない。
グリフォンというのは説話や昔話に何度も出てくるような、超がつくほど有名な魔だ。
それゆえ皆の興味は、ほとんどがサンシタに吸い寄せられていったのだ。
領主からグリフォンライダーがアクープの街へやって來たというれ込みがあったということもあり、僕とサンシタは今や街の有名人と有名魔になっている。
……いや、なってしまっている。
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