《【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】》家族
冒険者達の最後尾、作戦全を指揮するため、高臺の上に二人の男が立っていた。
「おい、いくらなんでもあれは……」
「いややべぇなあれ。なんだよ、怪獣大決戦じゃねぇか」
魔を圧倒するアイビーの戦闘を、呆けたように見つめている二人の人影がある。
ギルドマスターのアンドレとエンドルド辺境伯だ。
彼らはアイビーの強さや、彼が使う魔法に関して、ある程度は理解しているつもりだった。
上級の魔法を使いこなし、回復魔法まで使うことができる。
グリフォンまでも蹴散らし、あまつさえテイムまでしてしまうというその規格外の力。
しっかりと力を推し量り、その上で取り込んだつもりだった。
だが……アイビーの持つ力は、二人が想定していたよりもはるかに強かったのだ。
「魔法何発撃ってんだよあれ、なんでガス欠にならねぇんだ」
「いや、それよりあの大きさだろ。もう山とか森とか、そういうレベルのデカさだぞあれは」
アクープの街がなくなるだとか、どうやって撤退をしながら魔達を踏みとどまらせるかとか、そういった今まで立てていた作戦は全て意味がなくなった。
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彼らが賢しらに立てた作戦は、アイビーという一の亀によって本からひっくり返ってしまったのだ。
エンドルドは今目の前に繰り広げられている戦闘を目にして、正直早まったかもしれないとじ始めていた。
アイビーという魔を自分の懐の中にれようとするのは……あまりにも危険が高い、高すぎる。
一度彼の意に沿わないようなことをすれば、あの力は自分達に振るわれるかもしれないのだ。
だがこうしてアクープの街にざしてしまった以上、下手に追い出すわけにも行かない。
利用しようなどというこざかしいことを考えていたかつての自分を、彼は思いきり崖下に突き飛ばしてやりたい気分になっていた。
「おや、あれは幽鬼ですね。しかも二本角、これは珍しい。是非ともサンプルにしいところではありますが……」
エンドルドが二人を引きれたことを後悔しかけ、アンドレもそれに似たを思い浮かべていた時、いきなり第三の聲が聞こえてくる。
「はあっ!? なんでお前がいるんだよ、仕事ほっぽって王都出てきたのか?」
「いえまさか、しっかりやってから來ましたよ。論文とか、研究資料の整理とか」
そこにいたのは、ここにいるはずのないゼニファー=コーニットその人だった。
彼は相変わらず著ている真っ白な白をでながら、弾丸のような速度で飛んでいく幽鬼を見據えている。
幽鬼が障壁に弾かれ吹き飛び、魔法の矢によって消し炭にされた。
「ありゃ、やっぱりそうなっちゃいましたか」
大して殘念でもなさそうな様子。
彼はこんな狀況下にあっても、いつもと変わらぬ飄々とした佇まいを崩さなかった。
それはエンドルドにもアンドレにも、できていないことだ。
(こいつには背負うものがないから、気が楽なんだろうな)
エンドルドは軽な悪友をしだけ羨ましいと思った。
ゼニファーとは気兼ねなく話せる間柄なため、の奧にあるをすることはない。
「お前はあいつらのこと、全部わかってたのか?」
「全部と言われても難しいですが、一番大事なところはわかってましたよ」
「それなら事前に言ってくれよ、頼むから。俺なんて腕試しして殺されかけたんだからな」
「ああ、実力のことですか? そんなもの、欠片ほども知りませんよ。私より強いことくらいしか知りませんし、興味もありません」
いつもと変わらぬ調子で、大きくなっているアイビーを見上げるゼニファー。
彼は村の人間以外で一番最初に、アイビー達と接を持った人だ。
アイビーが変に討伐されたりしないよう、々と面倒を見たことも話には聞いている。
彼は今のアイビーを見ても、恐ろしくはないのだろうか。
アンドレとエンドルドの二人は奇しくも、示し合わせたかのように全竜(リヴァイアサン)という言葉を思い出していた。
それはおとぎ話に出てくる、人や村、街に國、そして大陸を含んだ世界の全てに至るまで、あらゆるものを飲み込んでしまう竜の名だった。
もしかするとアイビーは、この世界全てを飲み込む、全竜なのではないか。
そんな二人の不安を読み取り、ゼニファーがハハハとの籠もっていない笑い聲を上げる。
それは誰かを小馬鹿にするときによくやる、彼の癖だった。
長年の付き合いでその意味を知っている二人が骨に顔をしかめる。
ゼニファーが指を差す。
彼の人差し指の向こう側には、戦闘が収束し、掃討戦へと映っている戦場があった。
今までお預けを食らっていた冒険者達が、我先へと逃げ散る魔達へその剣を向けて走り出す。
彼らの背後には、一仕事をやり終えて小さくなっていくアイビーの姿があった。
彼はいつもの、ブルーノの肩に乗れるくらいのサイズになって、ふよふよと宙を漂う。
グリフォンに乗ったブルーノがそれをキャッチして、いつもの定位置へと乗せた。
ゼニファーが指をアイビー達へ向ける。
「私はね、魔に関すること以外の全てに興味がありません。ですのでアイビーの生態とか種族とか習とか、そういうことしか知りません。ですがね、そんな私にもわかることがあります」
「それはいったい……なんだ?」
ここまで泰然と構えていられるということは、アイビーが絶対に暴れないというなんらかの確証でも持っているのだろうか。
例えばアイビーの心を知っているとか、行を止めるための弱點のようなものに通している……といったような。
二人に視線を投げかけられて、ゼニファーが笑う。
先ほどまでとは違う、何か眩しいものを、それでも見據えようとする求道者のような瞳をした彼が言う。
「ブルーノ君とアイビーが……家族だということです。――姉でしょうか、母でしょうか、それとも縁の妻でしょうか? それはわかりませんが……ブルーノ君がいる限り、アイビーは決して道を外さない。アイビーがいる限り、ブルーノ君がに取り憑かれることはない。彼らは言わば一心同。支え合い、分かち合い、共に苦楽を過ごす存在なのです」
思っていたのとは違う答えに、二人はぽかんと口を開く。
ブルーノとアイビーを社會的に繋いだ、言わば仲人のような役目を果たしたゼニファーが笑う。
「大丈夫ですよ、大丈夫。彼らが道を過つことはない。若人二人を信じられなくて、何が権力者ですか、何が年長者ですか。今は信じてあげて下さい。それがきっと、彼らも、そして君たちをも助けてくれるはずだ……」
ゼニファーの視線の先にいたブルーノが、グリフォンから降りて大地に立つ。
彼が拳を振り上げると、それを見ていた冒険者達が聲にならない聲を上げた。
熱気も、狂気も、そして怖気も。
あらゆるが混じり合ったその聲は、響き、轟き、木々を揺らして皆の鼓を震わせる。
ここにブルーノは、名実共に確かな街の英雄になった。
彼がアイビーに並び立てるようになるまでには、まだしばしの時間がかかるだろう。
しかしそれを気にしているのは、當人ばかり。
アイビーはちょっと首を長くして、ブルーノに爪で首筋をカリカリされるのを、今か今かと待ちんでいる。
彼はブルーノが隣にいてくれれば、ただそれだけで十分なのだ。
ブルーノとアイビーの冒険者生活は、まだ始まったばかり。
グリフォンのサンシタを引き連れ、魔王軍や隣國すらも巻き込みながらも続いていく。
ブルーノは未だ、勇者ではない。
だが――永遠に勇者ではないとも限らない。
ブルーノがいったい、將來何になるのか。
當人も、魔王も、アイビーも、そして世界も……未だそれを知らない。
※大切なお知らせ
これにて第一章は終了となります。
お読みいただきありがとうございました。
なんとこの度……今作『その亀、地上最強』の書籍化&コミカライズが決定いたしました!
まさかこの話が本になるとは、作者本人も思っていませんでした!
これも皆様の応援のおかげです、本當にありがとうございます!
「面白かった!」
「第二章も楽しみにしてるよ!」
「書籍化&コミカライズおめでとう!」
としでも思ってくれたら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
しの間休憩をいただきまして、第二章を開始する予定です!
ですのでもうしばらく、お待ちいただけると幸いです。
アイビーとブルーノのことを、今後ともよろしくお願いいたします!
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