《【書籍化】絶滅したはずの希種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】》第16話 空飛ぶリリィのローブと杖
周辺で鉱資源しか取れないせいで、帝都より數段低い文明レベルの生活を強いられているグエナ村をスルーし、俺はグエナ火山に到著していた。太が丁度真上で輝いているから…………片道3時間といったところか。概ね予想通りのタイムだな。
クリスタル・ドラゴンは火山地帯でも火口付近に生息していて、普通の人間ならその姿を見る事すら葉わない。標高も高いし平気で足元に溶巖が流れている所に住んでいる。その辺りも討伐例が1件しかない理由のひとつではあるだろう。
俺は改造2魔法車に魔力でコーティングを施し火山を登っていく。
…………この鋼鉄の馬は、今厳には地面に接していない。地面に敷いた俺の魔力の上を走っているのだ。溶巖でも巖石でも何でもござれと言ったところ。
斜面を走り、ひたすら登り、雲が近くなってきたな…………と思っていたその時、不意に視界が開ける。どうやら火口付近まで登ったらしく、だだっ広いスペースが目の前に現れた。
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視界いっぱいに広がる黒い地面は冷えた溶巖。その上をぐつぐつ煮立った真っ赤な川が流れている。その元を辿っていけば…………またひとつし高い山があり、真っ赤な大地の呼吸が見えた。
「────いた」
まるで大地の怒りのような、真っ赤な溶巖の上を歩いているのは────どこか神聖な空気すら纏った白銀のドラゴン。
誰が呼んだか『魔法使い殺し』。
麓の村では『神の使い』。
俺の中では『空飛ぶリリィのローブと杖』。
────討伐難易度SSS、クリスタル・ドラゴンがその姿を現した。
「…………待ってろよリリィ。誰もが羨むピカピカのローブ、パパが著せてやるからな」
全に魔力を流し、俺は溶巖に降り立った。
◆
────空中に描くのは、黃金に輝く十重(とえ)二十重(はたえ)の魔法陣。
それら全てを対象に向け直線に並べ、出來上がるのは…………一撃に込め得る最大限の魔力を加速と貫通のみに特化させた────言わば魔法版アダマンタイトの雷槍。
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右手に込めた魔力が、引き絞られた弓矢のように今か今かとその時を待っている。
…………ヤバいかな。もしかしたら塵も殘らないかも。多分帝都の壁に撃ったら、中心の魔法省まで貫通する気がする。それくらいのが右手にはあった。
「…………ま、いっか。別に1匹しかいない訳でもないしな」
どちらかというと火山が発しないかの方が怖い。ドラゴンを貫通した時に槍が地面に潛っていかないよう、角度を調整してはいるが。まあとりあえず撃ってから考えよう。
「────ッ」
音は無い。
瞬きをする間もなく────速の雷槍が白銀の竜を捉えた。
…………のだが。
「────いやいやいやいや。おかしいだろ、何で無傷なんだよ!?」
必殺を確信し放った俺の魔法は────クリスタル・ドラゴンにれるや否や、まるで無かったかのように立ち消えてしまった。著弾時の衝撃も無く、本當にスッと消えてしまったのだ。
どういう素材か知らないが、あのサイズのクリスタルで吸収しきれるほどない魔力を込めたつもりはない。なにせ覚値では帝都を半分貫く威力があったはずだ。
…………まさか、まさか本當に魔力を無限に吸収できるとでも言うのか?
「…………うげ」
遠くでは、クリスタル・ドラゴンが首をもたげてこちらを睨んでいた。完全にロックオンされている。額に付いたリリィの杖が、俺に向かって真っすぐびていた。
「これ…………もしかしてヤバいか?」
『ギャアァアアアアアアアッ!!!!!!』
白銀の竜が、その巨軀に見合わぬスピードでこちらに突進してくる。まだ向こうとは距離があるというのに大地が揺れ、大気が震える。並の魔法使いならこれだけでが竦んでけなくなるかもしれない。
クリスタル・ドラゴンの攻撃は何のひねりもない當たりだ。そのご自慢の角で、俺を突き刺してやろうとでも考えているんだろう。この世に天敵が存在しないクリスタル・ドラゴンならではの大雑把で直線的な攻撃。だが、実際それで死ぬ。
────俺以外は。
「出來れば魔法だけで倒したかったんだけどな」
認めざるを得ない。
対魔法という一點に於いて────確かにクリスタル・ドラゴンはこの世で最強だった。俺でも敵わないんだからきっとそうだろう。となればちゃっちゃと魔(・)法(・)以(・)外(・)で倒すに限る。
クリスタル・ドラゴンとの距離はこの一瞬で半分ほどまっていた。あと數瞬の間に、俺は串刺しになって死ぬ。そういう未來を奴は想像しているはずだ。
俺は手ごろな溶巖塊を足元から拾うと、魔力を通して空中に浮かせた。昨日リリィが食べていたケーキくらいの手のひらサイズ。これだけの大きさがあれば充分だろう。
何も知らずにクリスタル・ドラゴンは真っすぐこちらに突っ込んでくる。俺は対象との間に加速の魔法陣を三枚敷き、背中に生えているクリスタル目掛けて────溶巖塊を思い切り出した。
バァン! という発音とともに、クリスタル・ドラゴンが大きくよろめく。魔法に対し無敵の能を誇るクリスタルは、俺の放った音速の溶巖塊に衝突し々に砕け散った。
「…………度9って別に割れにくい訳じゃねえからな」
あの指標はあくまで『傷つきにくさ』を表しているものに過ぎない。まあクリスタル・ドラゴンの生する結晶は割れにくさも超一流なのだが、音速まで加速させてやれば溶巖石でも破砕させ得るという訳だ。並の魔法使いじゃそこまでを加速させる事は出來ないのかもしれないが、俺に出會ったのが運の盡きだ。
『グァ…………グルル…………』
『神の使い』はよろめきながらも立ち上がる。今の攻撃はあくまで背中の結晶に當てただけだから、かなりの衝撃こそあれどに傷はないだろう。
俺はクリスタル・ドラゴンの傍まで寄ると、付近に散らばっている結晶の破片をひとつ拾い上げ魔力を込めてみた。ドラゴンは立ち上がるのに必死で俺にアクションを起こせない。
「…………凄いな、これは」
月明かりのようにぼんやりと発する結晶は、俺の魔力を際限なく吸収していく。まるで大空に向けて魔力を放っているような途方も無さをじる。指で摘まめるほどの小さな破片にすら、俺は勝てないということか。分かってはいたがショックだった。
『ギャアァアアアアアアアッ!!!!!!』
痙攣する腳で立ち上がったクリスタル・ドラゴンが、目の前に立つ俺に咆哮する。奴の中でやっと俺は『敵』になったのかもしれない。だがもう終わりだった。
────俺は魔力を吸収した破片をクリスタル・ドラゴンの口に放り投げる。鉱石がれるような鈍い音が響き、クリスタル・ドラゴンの顔は跡形も無く吹き飛んだ。
「…………やっぱは無耐なんだな」
魔法障壁を解除して、ひとりごちる。一応俺の魔力で倒したんだが、これは『魔法で勝利した』という事にならないだろうか。多分ならないよな。試合に勝って勝負に負けた、みたいな気分で悔しさが殘る。
「…………あ」
足元を見て…………背筋が凍った。
リリィの杖にしようと思っていた長角が、発のせいで々に砕け散っていた。素材として使えそうな大きい破片を探すも、見當たらない。
「…………もう1匹か…………これは」
途端に肩が重くなる。
…………確かローブは羽の部分を使うと言っていたか。俺は魔法鞄に素材を収納すると、がっくりと肩を落としながら魔法2車の方へ踵を返した。
まあ…………口にぶち込めば魔法だけで倒せることは分かったしな。次は上手くやれるだろう。貫通させれば角も綺麗に殘るだろうし。
…………結局俺は次のクリスタル・ドラゴンを見つけるのに4時間掛かり、自宅に著いたのはすっかり暗くなった頃だった。
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