《【書籍化】絶滅したはずの希種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】》第22話 リリィ、魔法使いになる……?

帝都の魔法學校は教育の質が高いことで有名だが、類稀なる魔法の素質を顕現させた天才しかれない、という訳ではなく、將來的に魔法を扱う職業に就きたいあらゆる人間が學することが可能だ。主席で卒業した俺も學した時は「魔法? ナニソレ?」という狀態だった。

一口に魔法を扱う職業と言っても、例えばジークリンデのように魔法省に省する者から、學生時代の俺のように依頼をうけて魔の討伐や素材の納品を行うハンター、魔法ブランドの職人などその選択肢は多岐に渡り、結果的に帝都の子供の殆どが魔法學校に學することになる。帝都に住む上で…………いや、この世界で生きていく以上、魔法と無縁で生活することは出來ないんだ。

「リリィ、ちょっと來て」

「ん〜?」

そんな訳で必ずしも魔法學校に學する前から魔法を教えておく必要はないのだが、もしリリィが學校の授業で詰まってしまったらかわいそうだ。魔法學校の授業は基本的に人間を始めとした一般的な種族を対象としているはずだから、希種であるリリィには理解し辛い、という事もあるかもしれない。魔法に関する下地というか、基本的な知識はに著けさせておいたほうが良いだろう。

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そもそもゼニスにいるにその辺りは教える予定だったのだが、つい先延ばしになってしまっていた。

「りりーがきたよー!」

リリィがリビングを走りソファに跳び乗ってくる。外では走らないように言いつけているため、その反か家の中では元気いっぱいだった。

「リリィ、學校楽しみか?」

「うん! りりーまほーつかいになる!」

笑顔で頷き、魔法使いのジェスチャーのつもりなのか腕をぶんぶん振るリリィだが、そのジェスチャーが示す通り魔法使いが何なのかまでは恐らく分かっていないようだ。魔法も俺が家の中で使っているのを見たことがあるくらいで、ふんわりとしか理解していないだろう。

「よーし、それじゃあ今からリリィに魔法を教える」

「やった! おぼえたらりりーまほーつかいになれる?」

「勿論だ。リリィはきっと凄い魔法使いになれるぞ」

俺の言葉を聞いて、リリィは奇聲をあげてソファの上で飛び跳ねた。元気が良くて大変よろしい。

魔力というものは一部の種族を除き、全員が生まれつきに宿している。それなのに魔法を行使出來るのはしっかりと教育をけた者だけだ。

────それは一何故か。

答えは簡単で、魔法を使うというのは極めて覚的な行為だからだ。「あなたの中にはまだ知らない力が眠っているのです」と言われても、使っていないものは知覚出來ないだろう。そして、知覚出來ないものは使えない。そういうことだ。

だから、魔法を使うためにはまず自分の中にある「魔力」というものを知覚させる必要がある。

「リリィ、目つむってみて」

「ん」

目をつむったのを確認すると、小さくてぷにぷになリリィの手を取り、前にばさせる。そのまま微弱な魔力を流していくと、リリィがくすぐったそうにをよじった。

「なんかむずむずする」

「そのむずむずが魔力なんだ。…………むずむずを手のひらから思いっきり出すことって出來るか?」

にとって、他人の魔力は異そのものだ。リリィは知覚出來ない己の魔力とは違い、に流れる俺の魔力を「むずむず」として捉える事が出來ている。そして俺の魔力は既にリリィの魔力を捕まえている。俺の魔力を手のひらから放出する事が出來れば、釣られるようにリリィの魔力も引っ張られる。その経験が、自分の魔力を知覚する事に繋がるのだ。

「うー…………」

リリィは初めての覚に戸い眉間に皺を寄せた。額には小さく汗が浮かんでいる。俺の魔力がしずつ押されていく覚はあるんだが、まだ上手に捉える事が出來ないようでの外に放出するまでには至らない。

「むずむず、でてかない…………」

ぎゅう、ぎゅう…………と俺の魔力が小さく押される覚だけが斷続的に続く。

非常に高い知能を持ち魔力の扱いに長けたと言われるハイエルフでも、流石に一発で上手くはいかないか。

「…………今日はここまでにするか。また明日やってみような」

俺が魔力を切ると、リリィは目を開けて申し訳無さそうな表になる。

「ぱぱ、ごめんなさい…………うまくできなくて…………」

「気にしなくていいさ。學校までまだ一ヶ月もある。ゆっくりやっていこう」

「うん…………」

元気づけるように頭をでると、リリィは俺の膝を枕代わりにしてソファに寢転んだ。…………どうやら甘えたい気分らしい。さらさらの青い髪を手で梳かしていると、やがて小さく寢息が聞こえてくる。そろそろ夜ご飯にしようと思ってたんだけどなあ。

「…………ふっ」

生活スケジュールは崩れたものの、俺の口には笑みが浮かぶ。「寢る子は育つ」という言葉を思い出したからだ。

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