《【書籍化決定】公衆の面前で婚約破棄された、無想な行き遅れお局令嬢は、実務能力を買われて冷徹宰相様のお飾り妻になります。~契約結婚に不満はございません。~》お茶會に呼ばれました。

「ねぇ〜、アリレラ様ぁ〜?」

「何でしょう、アーハ様」

王都にある、ペフェルティ家のタウンハウス。

約束通りにアーハは、アレリラをお茶會に招いてくれた。

そして數度流した後。

本日はこの後のお茶會ついでに屆けた、金山査察の予定と、そのご相談なのだが。

「えっと〜、ワタシ、うちの領に新婚旅行とかどう〜? ってご提案したはずなんですけど〜」

「はい」

「何でそれが、査察になっているんですかぁ〜?」

「実益を兼ねての新婚旅行ですので」

アレリラは、淡々と答えた。

イースティリア様は多忙だ。

當然書であるアレリラも、二人つけてくれた書候補のおで実務は減っているものの、今度は彼らの育という方向で忙しい。

そんな中での新婚旅行ともなれば、ある程度準備しても業務が滯るのは必須。

休日の間に溜まる仕事はなるべく減らしたいという意向が、イースティリア様とアレリラの間で一致し。

「旅行のついでに済ませられる出張の予定は、この際一緒に済ませてしまおうということです」

「この予定だと、旅行がついでになっている気がするんですけどぉ〜!?」

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珍しく困しているアーハに、アレリラは首を傾げる。

「査察と観の比率は、半々程度に抑えておりますが」

「普通は観100%だと思うんですよぉ〜!」

言われて、アレリラは予定表に目を落とす。

以前ボンボリーノが言っていた、マイルミーズ湖への観

そのついでに、水路の先に向かって、評判が良いという上下水路の見學と技者への質疑応答。

次いで、易に適した位置にあり、風で國有數の観地へと発展を遂げている、ペフェルティ領易街での観

そのついでに、異國からの輸品の価格調査と現地商人への聞き取り取材。

その後に関しては、特にペフェルティ伯側へ伝える必要がないので持ってきていないが。

ダエラール領に向かって數日間、里帰りを兼ねて滯在し、領の現狀を見て回って問題をピックアップ。

弟が爵位を引き継ぐに當たり、人脈として得ておいた方が良い繋がりなどをイースティリア様からフォッシモに、流がてら講義してもらう予定もある。

そのまま西へ向かい、辺境領へ至る易路の整備狀況を把握しつつ、その間に不便をじるようであれば、宿の設営を國家主導で行うか否かの判斷と、設営を行う場合の土地選定。

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辺境では、現在食料が輸に頼る比重が増えている辺境伯領地での穀栽培狀況を査察し。

最後に隣國のサーシェス薔薇園がある土地に向かって、観と今後発展が見込める産業の解説をけて、帰國予定である。

イースティリア様と共に過ごし、様々な方と流を図る、我ながら有意義で素晴らしい旅行日程だと思う。

「やはり、特別問題があるようには思えませんが……」

「休暇ですよぉ〜!? 休み! ホリデー! お楽しみですよぉ〜!?」

「ええ、知らない技や産業にれることになる機會です。が弾みます」

「本當にそれが楽しいんですかぁ〜!?」

「おそらくですが、わたくし個人は楽しいとじている、と言って差し支えないかと」

アーハはボンボリーノ同様、実用的なものへの知的好奇心というのは、あまり理解出來ないらしい。

「アーハ様も、ご実家の商売になりそうな『儲かる』品を見つけたりするのは、心が躍るものではありませんか?」

「そう言われると、確かに楽しいことかもしれませんけどぉ〜、こう、味しいものを食べたり二人でイチャイチャしながら遊ぶのも楽しいじゃないですかぁ〜!」

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「ええ。食材とそれに関する調理法や、日持ちがして保管が容易な作なども見つかるとより良いですね。観やレジャーなども盛んになれば、地域の振興に繋がりますし」

「そういうことじゃないぃ〜!」

結局意見は合わないままだったものの、アーハと話すのは気が安らぐ。

その後、まだまだ暖かい季節なので庭に用意されたお茶會の席に向かうと……そこに見知った顔を見つけて、アレリラは軽くまばたきをした。

ーーーあれは……。

まず目にったのは、ストロベリーブロンドの髪をした、ミッフィーユ様。

それと以前、婚約後初の夜會の時、彼の橫でアレリラの『お飾り』の噂を囀(さえず)っていた三人のご令嬢がただった。

※※※

「アレリラ様、お久しぶりですわ〜!」

「どうぞこちらにお座りになって!」

「またお會い出來て栄です〜!」

キャッキャウフフと、嬉しそうに三人娘は丸テーブルのちょうど二つ空いている席……ミッフィーユと、確かエティッチ・ロンダリィズという名の伯爵令嬢の間……を勧めた。

「ささ、アーハちゃんもどうぞ!」

ーーーちゃん?

ミッフィーユ様の呼び名に違和があった。

そしてここはペフェルティ伯爵家のタウンハウスなので、主催はアーハのはずなのだけれど。

アレリラは疑問を覚えたが、當の彼はまるで気にした様子もなく。

「あら〜、それじゃ失禮してぇ〜」

と、ニコニコと席に著く。

いつつも腰掛けたアレリラが、チラリとミッフィーユ様に目を向けると、彼はパチリと片目を閉じてみせた。

「ご紹介致しますわね、アレリラお姉様! こちら、ロンダリィズ伯爵家ご令嬢のエティッチ様、シンズ伯爵家ご令嬢のカルダナ様、お祖父様がバルザム王家の先々代王弟であらせられる、ランガン子爵家ご令嬢のクットニ様ですわ!」

それぞれご紹介に與ったご実家の報を、アレリラは脳貴族年鑑をまくって思い出した。

まずは、ロンダリィズ伯爵家。

『貴族たるもの、悪辣たれ』という変わった家訓をお持ちの名家で、現在の當主は、北東の隣國との戦爭を終結させ、領地間橫斷鉄道を開通させたという英傑。

エティッチ様は當主の三人いるお子様の末の次で、爵位は長男が継ぐ予定で、長は隣國の公爵家に嫁がれたらしい。

確か長は、以前はこの國の社界で〝傾國の妖花〟と騒がれたという方だ。

エティッチ様もお顔立ちは整っていて、黒髪赤目の可らしい雰囲気の方である。

宰相書としても無視出來ない裕福なお家なので、ミッフィーユ様と同じような立場の彼とも流を持っていて損はないだろう。

次に、シンズ伯爵家。

現當主の奧様が、南東にある大公國から嫁いで來られている方だった。

なんでもあちらの國は、今は権力闘爭できな臭いという噂があり、四公と呼ばれる四つの公爵家の、風の家紋を持つ公爵家の出である奧様が母なら、もしかしたらカルダナ様も、向こうの國際勢にお詳しいかもしれない。

ご本人は明るい緑の髪と瞳を持つ、し大人びた雰囲気の方だ。

こちらも、ウェグムンド侯爵家としては繋がっていて損はないだろう。

最後に、王室の傍系であるランガン子爵家。

は遠いが、現子爵夫人が王姪様と仲が良い。

その王姪様ご自は、東のライオネル王國の侯爵家に嫁がれている。

その侯爵家は隣國で沃な土地を管理していて、しばらく前の不作の時期から、こちらの國にし安い価格で優先的に穀を輸出してくれている、お得意様だ。

最後に訪れる予定のサーシェス薔薇園は、この侯爵領にあり、事前の報収集が可能かもしれない。

クットニ様ご本人は、元來南の出である王家に多い淺黒いの持ち主で、青い澄んだ瞳が印象的な方だった。

ーーーこう見ると、ミッフィーユ様のお側にいた理由が分かりますね。

皆様ご自、もしくはお家自が目立たない立場であるものの、繋がりを見れば力のある貴族家の子だ。

「改めまして、アレリラ・ウェグムンドと申します。どうぞよろしくお願い致します。アーハ様と、こちらのご息方はどういった繋がりで?」

し前のお茶會でぇ〜、ミッフィーユちゃんから紹介されましたぁ〜!」

ーーーちゃん?

「そうなのですわアレリラお姉様! アーハちゃんもこの三人を気にったみたいなので、どうせならとアレリラお姉様のいるお茶會に呼びましたの!」

ニッコニコのイイ笑顔でミッフィーユ様が答えると、三方はビクッ、と肩を震わせる。

力関係が如実に分かるやり取りだけれど、何故彼達は怯えているのだろう。

「ええええーっとそのぉ、せ、先日は失禮致しました!」

三人を代表して、エティッチ様が謝罪を口になさる。

殘りの二人も、それに合わせて頭をペコリと下げられた。

「先日……」

失禮、そして謝罪をしたということは、おそらくミッフィーユ様の味方をするように、當てりを口にしたことに対してだろう。

が。

「特に気にしておりません。お気になさらず」

そうアレリラが口にすると、すんなり許されると思っていなかったのか、エティッチ様たちが目をぱちくりさせた。

がよく分かっていないからかキョロキョロするアーハ。

『それで良いのか?』とでも言いたげに目で問いかけてくるミッフィーユ様に対して、アレリラは一言添える。

「同様の勘違いを、わたくしもしていたので」

お飾りでしょう、と言われても、あの時點では事実だと思っていたので特に問題はない。

あの程度の嫌味なら、普段仕事で相手にする貴族の殿方のほうがもっと骨に侮った態度を取ってきたりするので、謝罪されるまで忘れていたくらいだ。

「今後仲良くしていただけると、嬉しいですわ」

何せ、アレリラは友達がない上に噂話に疎い。

有力な家とのコネクションも今後は多作って行かなければ、侯爵夫人としてもやっていけないだろう。

年嵩の夫人がたは前夫人のツテで顔を繋げるけれど、お若い方々にも人脈を広げて損はないのだ。

アレリラの対応に、三人娘はホッとした顔を見せた。

アーハほどでなくとも表を隠すのが上手くないので、きっと今後ミッフィーユ様がご指導するのだと思われる。

主催である彼がいつも通り明るく話題を振り、場が和んで來たところでミッフィーユ様が言った。

「そういえば最近、ウルムン子爵がお兄様の派閥と距離を取られるかのような発言をなさっているのだけれど、アレリラお姉様はご存じ?」

「いえ、初耳です」

あまり人の管理が上手くないとのことで、金山の職人管理者から下ろした人の名前が出てきたのを、不思議に思っていると。

三人娘が顔を見合わせて……同時に、ニヤリと笑った。

ワルい顔をしている。

「それなら、わたくしたち耳寄りの報がございますわ!」

どうやら、噂話が大好きなご様子で、一気にイキイキし始めたエティッチ様に、話題を振ったはずのミッフィーユ様が苦笑している。

ーーーなるほど、こういうご令嬢がたなのですね。

納得したアレリラは、自分にない貴重な報収集をしているらしい彼たちの話に、耳を傾けた。

アレリラ、三人娘と再會するターン。

余談ですが、他作を読んでいる方向けに。

エティッチは、『役立たず妖』で『おねーたま! おむねがふくよかでしゅわー!』と言っていた末のの子です。

カルダナは、『矜持』の外務卿編に出てくる予定の四公の家の一つと繋がりのあるおうち。

クットニは、母親が『矜持』に出てくるズミアーノのお母さんと仲良しなおうち。

お局令嬢は、バルザム帝國が舞臺のお話でした。

ズミアーノさんみたいなチートキャラに國が荒らされていないのは、王太子妃ウィルダリア、宰相イースティリアという雙璧が頭にいるからっぽいですね。

で流行っていたというお花の薬は、まだ婚約前の有能な宰相と書のコンビが報告をけて、対立派閥に蔓延しかけていたのを速やかに駆逐したようです。(冒頭でめちゃくちゃ忙しそうだったのはその後始末)

ていうことで、三人娘にスポットが當たったことをお喜びいただけた方は、ブックマークやいいね、↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価等、どうぞよろしくお願いいたします。

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