《【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】》喧嘩あるいは口論

スティーヴンは困していた。目の前で二人のが言い爭いをしている。その様子を周りの人間たちは面白がって見ている。騒ぎ立てている。

酒場である。テーブルが移され、中心に空間が開いている。喧嘩が始まるとそこで行うのが暗黙の了解になっていて、木でできた地面はの跡が大量に殘っている。

その「喧嘩の広場」に二人のと一人の男

言わずもがな。男はスティーヴン。はリンダとエレノアである。

「私が先よ」

「関係ないにゃ!」

冒険者同士なら毆り合っている。ただこれは同士の爭いだ。口論が主となることはわかっているのに、周りでは

「いけええ!」

「ぶん毆れ!」

などと、いつもの喧嘩と同じようなヤジ、歓聲が飛んでいる。

事の起こりはスティーヴンが酒場に連れていかれたことにあった。彼は昨日と同じようにリンダに無理やり連れてこられ、酒を飲まされていた。彼はべろべろだった。リンダは「すきにゃあ、すきにゃあ」と酔っぱらった狀態でスティーヴンに抱き付いてキスの雨を降らしていた。

そこにエレノアが訪れた。

要するに昨日と同じ狀況である。

エレノアは激怒した様子で、スティーヴンに近づくといった。

「スティーヴン? 待っていたのだけど何をしているの?」

「いや……これは」

「なんにゃ! この後はあたしと用事があるにゃ」

「なによ! 私が先でしょ!」

そこでテリーが騒ぎ立てた。

「##########」

「おうおう。いいにゃ! テリーの言う通りにゃ。喧嘩にゃ喧嘩」

「ええ、いいわ。喧嘩でけりをつけましょう。勝ったほうがスティーヴンを好きにできるのよ」

「決まりにゃ!」

そんな會話がスティーヴンの前で繰り広げられ、酒場の中心に連れてこられて今に至る。

リンダが言う。

「お嬢様がAランク冒険者のあたしに勝てると思っているのかにゃ」

「せいぜい馬鹿にしているといいわ。アーチャー風が」

「にゃんだと!」

喧騒があたりを支配する。

いつの間にか酒場の主人が中心に立っていて、試合を取り仕切っている。

「両者武の使用は止」

スティーヴンは喧嘩を止めようと二人の間にろうとした。彼は喧嘩の場、円の中にって行った。

「やめましょうよ、二人とも」

「スティーヴンは黙ってて」

「そうにゃ」

二人が言ったその瞬間、スティーヴンは背後から抱きすくめられた。

リンダとエレノアがぎょっとする。

「【コレクター】!」リンダがぶ。

スティーヴンが後ろを振り返る前に、【コレクター】はスクロールを2枚開いた。

「アクティベイトお」

が歪む。リンダとエレノアの聲が遠くなる。

「スティーヴン!」

一瞬暗転して後、ふわりとやわらかいものの上に落ちた。スティーヴンはあたりを見てそれがベッドだと理解した。ベッドの周りには棚が備え付けられていて、その中には大量の羊皮紙が詰め込まれている。スクロールだ。

スティーヴンは自分の上に乗っているを見上げた。ぼさぼさの髪が垂れているせいでいつもより顔がはっきり見える。人だ。鼻の周りから額にかけてあるそばかすが印象的。彼は分厚い眼鏡をはずした。目が大きく見えてより一層しさが増した。

はスティーヴンの両腕を押さえつけると顔を近付けた。

「あなたはわたしのものお。私のコレクションにしてあげるう」

くすくすと笑うと、彼は口に何かを含んだ後スティーヴンにキスをした。

何かが口に流れ込んでくる。スティーヴンは吐き出そうとしたが、【コレクター】は舌を上手に使って無理やりスティーヴンに飲ませた。

「何をのませ……あ……」

聲が……出ない。

は――解毒薬だろうか――と水を飲み干すと「ふう」と聲を出した。

「これで魔法は使えないい」

スティーヴンは心臓が冷えるのをじた。

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