《【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】》別れ

初心者用ダンジョンからギルドに戻る道中、スティーヴンは尋ねた。

「【コレクター】はギルドに來ましたか?」

「どうして今【コレクター】の話をするにゃ。ギルドには一か月前に來たっきりにゃ。新しいスクロールがったって報がない限りあいつはかないにゃ」

リンダはそう言った。

今は、【コレクター】ドロシーに出會う直前。ギルドに戻れば彼がやってくる。

スティーヴンはリンダに腕を抱かれながら歩いて行った。リンダは怪訝な顔をしていた。

――……生きたければドロシーについてもっとよく知りなさい。

その言葉が頭の中に響いていた。

ギルドに戻り、マップを更新する。二回目の作業だったが、いつもと変わらない。心は【コレクター】のことで支配されていた。

書き終わり賃金をもらうと、リンダたちのもとへ戻る。

數分後。

「ヒューという冒険者はどこお!」ドロシーがやってきた。全く同じだ。あの時の再現だと、スティーヴンは思った。

「俺だが、おまえ【コレクター】だな?」

ヒューはそう言うと、【コレクター】の前へと出て行った。彼は背びをするとヒューの顔面を両手でべたべたとり始めた。

「おい! 死にたいのか?」マリオンが剣呑な表で剣を抜いた。

「ああ、そんなつもりはなかったんだあ。ただ〈エリクサー〉が使われたと聞いていてもたってもいられなくなってきたんだあ」

はそう言うと首をぶんぶん振ってあたりを見回した。

「で! 〈エリクサー〉を持っているのは誰!」

「誰も持ってない。この顔はスクロールで治したものじゃない」

ヒューは言った。

「じゃあその詠唱をした人を連れてきてえ。おねがいだからああ」彼はヒューにすがるようにして言った。

――……生きたければドロシーについてもっとよく知りなさい。

正直に言ってスティーヴンはもうこれ以上彼と関わりたくなかった。

ドロシーについてもっとよく知る?

知っていることはたくさんある。だがあの子供たちはなんだ?

本當に全て知っているのか?

スティーヴンは自問して首を振った。

はまだ何か隠している。

しかし……。

またあんな目に合うのはごめんだった。

〈エリクサー〉を渡せば縁が切れるだろう。この後、詮索もしないだろう。

スティーヴンはドロシーに近付こうとした。

「ばか、関わらない方がいいにゃ」

「なに!」あの時と同じだ。ドロシーはスティーヴンに駆け寄ってきた。

「あなたがそうなのお?」

スティーヴンは答えた。

「〈エリクサー〉がしいならし時間をくれれば渡す」

「スティーヴン!」

リンダがぶ。スティーヴンはそれを制して言った。

「書くのは一度きり。それでいい?」

「ええ。いいわあ。お願いい」

スティーヴンは寫本係の部屋に向かうとグレッグにいくらか渡して羊皮紙をもらい、〈エリクサー〉のスクロールを書き上げた。インクが滲まないように砂をかけてから巻き、封をすると、グレッグに禮を言って、寫本係の部屋を出る。

ドロシーは足をパタパタと踏み鳴らして待っていた。

スティーヴンはドロシーにスクロールを渡した。

「どうぞ」

「いくら払えばいい?」

「いらない。その代わり、ぼくについて詮索するのはやめてほしい。ぼくたちの関係はこれっきりだ」

ドロシーの目は一瞬だけ察のを見せたが、すぐに元のに戻った。

「〈エリクサー〉を書けるんだものねえ。トラブルが多いんでしょお。タダでもらえるなら言う通りにするわあ。でもほんとうにいいのお?」

「いい。これはなかったことにして、ぼくたちの関係もなかったことにして、これから過ごすんだ。いいね?」

ドロシーは肯くと「ありがとお」と言ってギルドを後にした。

「さようなら、ドロシー」

スティーヴンは呟いた。

その日、彼は酒場に行かず、リンダとエレノアのいも斷って一人、宿に戻った。彼たちは不満げだったが、スティーヴンの様子を見て何かを察したのか、承諾してくれた。

酒場に行けばもしかしたらまたドロシーが來てしまうかもしれない、それが怖かった。

翌日。リンダに尋ねると、

「【コレクター】? 酒場に來るわけないにゃ、あんな奴」

そう言っていた。

運命は曲げられる。

本當に彼との関係はあれっきりになった。スティーヴンは安堵してリンダと別れ、寫本係の部屋にっていった。

しばらく仕事をした後のこと。

マップを書いていると何やら外が騒がしくなった。上司のグレッグも眉間にしわをよせて、機から離れ、付へのドアを開いた。

「スティーヴンというマップ係を探している!」

ドアの向こうからその聲は聞こえた。だ。聞いたことのある聲だった。

「おい、呼んでるぞスティーヴン」

グレッグはドアを開けたまま彼に言った。スティーヴンはペンを置いて、付へと向かった。

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