《【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】》騎士の襲撃
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そして、その日が來た。
空は青かった。風が強く、木々はざわめいていた。
ドロシーと協力して、村人たちを教會から離れた場所に避難させた。戦闘になるのは目に見えている。騎士の殺害対象はドロシーに違いない。
いや、本當にそうなのか?
スティーヴンはその時を待ちながら、考えていた。
確かにスティーヴンが関與しようとしまいと、ドロシーは襲撃に遭い死んだ。それはあくまで運命によるものだと考えていた。しかし実際どうだろう。そこには論理的理由が必ずあるはずだ。運命なんてものではなく、ドロシーを殺さなければならない理由が。
スティーヴンはドロシーに尋ねた。
「この數日で何かやらかしたことはない? 魔師に目を付けられるようなこと」
ドロシーは首を振った。
「思いつかないけどどうして?」
「この襲撃なにかおかしいんだ。はじめはぼくを取り戻すために騎士が襲撃してくるんだと思ってた。でも実際は違った。ぼくが関與しない世界でも、ドロシーは騎士に襲われていた。君が何かをやらかしたと思えば説明がつくんだ」
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「思いつくのは、〔魔王の右腕〕に関する記述を読んだってことくらい」
ドロシーがそう言ったとき、遠くから蹄の音が聞こえてきた。槍を持った騎士だった。先頭を駆けるのは真っ赤な髪の男。
目的の男だ。
彼を捕まえられるのか?
襲撃の後、騎士たちは普通に話ができた。今も話が通じるんじゃないか?
そんな疑問があふれかえった。
スティーヴンはドロシーに尋ねた。
「話し合うことはやっぱりできないのかな」
「その議論はこの前したでしょ。騎士たちはられてる」
騎士たちは全速力で駆けてくる。その目は怒りに燃え、スティーヴンたちを睨んでいる。先頭を走る男だけは冷靜な目をしていたが。
ドロシーだけが狙われているのかどうかわからないが、どちらにせよ騎士たちは突っ込んでくるだろう。
スティーヴンは魔法の発をためらった。相手は魔ではない。人間だ。今までとは違う。相手は騎士だ。
これは殺人だ。
赤髪の男が槍を構えると、後続の騎士たちも構える。馬を超える長さのその武は巨大で、威圧的だ。
「スティーヴン!」
ドロシーがんだ。
騎士たちはすでに村の中にっており、數秒でここまでたどり著く距離にいた。
スティーヴンは下を噛んで、それから、つぶやいた。
「すみません」
スティーヴンは魔法壁を展開した。
赤い髪の男が魔法壁にぶつか――
奴は魔法壁を切り裂いた。握りしめた真っ黒な槍で。先端が特に黒く、太のを反している。
「魔法壁を破壊された」
ドロシーは目を細めて進軍する真っ赤な髪の男の武を見た。
「ドラゴンの刃」
彼はつぶやいた。
「何?」
「スティーヴン。おそらくだけど、あの男を捕らえることはできない」
「それは僕も思ってた」
スティーヴンは魔法壁を何重にも展開したが、先頭の男がことごとく破壊してしまう。
「……あいつらを殺して。じゃないと殺される」
スティーヴンはぎゅっと目を瞑って、それから大きくため息を吐いた。
「アクティベイト」
地面を氷が張っていく。先頭の男の乗る馬が氷を踏んだ。
瞬間、一気に氷が駆け上り、馬は凍った。赤髪の男は馬の背を蹴って前方に飛び、地面に槍を突き立てて、その上に乗った。
彼の後方から來ていた騎士たちは馬ともども氷漬けにされた。氷の襲撃が終わると、赤髪の男は地面に降り立ち槍を抜いた。槍の刺さっていた部分の周囲は円形狀に氷がなくなっていた。
男は周囲を見回して、騎士たちが氷漬けになっているのを見るとため息をついた。
「やってくれたなスティーヴン。騎士たちを殺して心は痛まないのか」
ドロシーはんだ。
「黙れ!」
「怖いな、ドロシー」
赤髪の男は口の端を片方上げ、そう言った。
「お前は誰だ? 魔師と関係があるのか?」
スティーヴンが尋ねると赤髪の男は肩をすくめた。
「いやあ。俺はただの傭兵だよ。今回の任務はお前たちを殺すこと。殺したら、金がもらえる。単純な話だ」
「魔師について知っていることを話せ」
「依頼人の報は話さない主義でね」
赤髪の男は氷のオブジェを見渡すとうなった。
「それにしても、どうも分が悪い。割に合わない。俺は手を引くことにするよ。お前たちのことは、依頼主に報告しておく。仲良く生き殘るんだな」
そう言うと奴はスクロールを取り出した。
スティーヴンは〈アンチマジック〉を『空間転寫』した。
「アクティベイト」
「アクティベイト!」
スクロールは消えたが、奴のはその場に殘った。
「逃がさない」
「おいおい。こんなこともできるのか? 報にないぞ」
男は頭を掻くと仕方ないと言って、地面を蹴った。
恐るべき跳躍をして、氷の像になった騎士の上に著地する。
「走って帰るさ。追い付けまい」
彼はさらに跳躍した。Sランク冒険者マーガレットのごとき速さだった。
「待て!」
ドロシーはんだが既に奴の姿は森の中に消えていた。
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