《【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】》決戦2

時間はさかのぼって前日。

ドロシーの記憶をもとに戻した直後。

はふらふらとギルドを出て行こうとした。

「明日このギルドに來てほしい。必ず」

スティーヴンはドロシーの後ろ姿に聲をかけた。

ドロシーは振り返らず出て行った。

スティーヴンはラルフに言った。

「クエストを発注します。報酬は〈エリクサー〉です。何人でも構いません。できるだけ多く」

「何をするつもりだ?」

「明日、この街を破壊しようとしている張本人を倒します。彼は魔族を飼っています」

街を破壊されたとき、何度死を繰り返しても、あの〈アンチマジック〉を持つ魔が現れた。どこにいてもどう工夫しても奴は現れ、スティーヴンの邪魔をした。

人為的だった。

それに、スティーヴンは記憶を消されている間、見せられていた。エヴァのコレクション――魔族たちを。

総合的に考えれば誰でも気づく。エヴァが魔族を飼っていること。そして、街を破壊するために街のどこかにそれをどこかに隠していること。

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「向かう場所は領主の城です。できるだけ多く人數を集めてくれると助かります」

場所を聞いてラルフは面食らったようだが、何も聞かず、彼は頷いた。

「わかった。だが一つ確認したい。本當に街は破壊されるのか?」

「ええ、理由は……」

スティーヴンはダンジョンが長していること、それが魔師による人為的であることを説明した。明日、マーガレットが話すはずのことをすべて話した。

そのあと、ラルフの額に手を置いた。

「何をする?」

「記憶を戻します」

スティーヴンはラルフの記憶を戻し、領主の妻が魔師であることを説明した。

「クエストを発注しよう」

彼は驚きの表を顔に張り付けたまま言った。

「魔師を殺せば街の皆の記憶が戻ります。魔師は僕が殺します」

エヴァを殺せば記憶が戻る。それは未來のドロシーで証明された。騎士たちも元に戻るだろう。

彼らを救うにはこの方法しかない。

スティーヴンはラルフに言った。

「クエスト、よろしくお願いします」

その夜、酒場でエレノアに言った。

「明日、ギルドと魔師の戦闘が街であります」

魔族と冒険者たちとの戦闘が始まった。

スティーヴンは〈アンチマジック〉を使う魔族を指さしてマーガレットに言った。

「あの魔族を最初に殺してください。あいつは〈アンチマジック〉を使えます。最初に殺さないと、ぼくの魔法が消されてしまう」

「分かった!」

マーガレットは駆けていく。指をしゃぶっている魔族はマーガレットを見ると、口から手を放した。

目がぎょろりと大きくなる。

『**アクティベイト』

『**アクティベイト』

『**アクティベイト』

『**アクティベイト』

『**アクティベイト』

地面にの円ができる。

スティーヴンは五枚の〈アンチマジック〉を『空間転寫』して、奴の魔法を消した。

奴は首を傾げた。

マーガレットが剣を構える。

スティーヴンは別の魔族を見た。

『**アクティベイト』

『**アクティベイト』

『**アクティベイト』

『**アクティベイト』

奴らは同時に魔法を使う。スティーヴンはをひねるようにして周囲を見る。

〈対象の選択〉。

スクロールの発

魔族の魔法が消える。

「魔法はぼくが消します! 魔族の素早さにだけ注意して戦ってください!」

マーガレットが〈アンチマジック〉の魔族に接近する。

奴は強化魔法を使った。

腕にの円ができる。

スティーヴンはそれを消す。

マーガレットの斬撃が魔族の腕を切り落とす。

魔族は悲鳴を上げた。

あろうことか、奴は逃げ出した。もともと弱い種族なのか、逃げ足がはやい。

「待て!」

マーガレットが魔族を追う。

スティーヴンは彼から目をそらす。他の魔族を見る。

を回転させて周囲を探す。魔法の出現ポイントを見極める。

ケガをした冒険者たちを見る。

〈アンチマジック〉と〈エリクサー〉を大量展開する。

冒険者たちは魔族の速度に悪戦苦闘している。奴らの速度は強化魔法のそれではなく、筋によって生み出されている。

スティーヴンは奴らに氷か雷撃系の魔法をかけようとしたが、冒険者たちが巻き込まれそうで使うことができない。

「スティーヴン!」

リンダの聲が聞こえた。

そちらを見ようとした瞬間、赤髪の男が視界にった。

奴はドラゴンの刃を構えている。

スティーヴンはをひねったが、脇腹を切り裂かれた。

が飛び散る。

「スティーヴン。お前を殺さなきゃならねえ。それが雇い主の願いだからな」

スティーヴンは脇腹を抑えてうずくまる。

赤髪の男は短剣を構えた。

「やめろおおおおお!!!」

マーガレットが、頭上から飛んできた。彼は赤髪の男の攻撃を剣でけた。

頭上から魔族の死が降ってきた。〈アンチマジック〉の魔族だった。

「お前か! 厄介なんだよ」

マーガレットと赤髪の男が剣をえる。

スティーヴンは脇腹に〈エリクサー〉を使う。痛みが一瞬で引く。

彼は立ち上がると、急いで戦況を見た。魔族の數は2にまで減っている。

マーガレットと赤髪の男は飛び上がり、壁を駆ける。彼たちは魔族にちかいのではないかとスティーヴンは思う。速度は互いに一歩も引かない。いつの間にか、赤髪の男は長剣に持ち替えていた。斬撃も互角だった。

最後の魔族が、リンダの手によって倒された。

冒険者たちは勝鬨をあげた。が、マーガレットはまだ戦っている。天井を蹴り、メインホールを縦橫無盡に駆けている。

「エヴァは?」

ドロシーがんだ。スティーヴンは周囲を見た。

「いない。逃げたな」

「どうするんだ、スティーヴン」

ラルフが近づいてきて言った。

「どこにいるのかは見當がついています。そこに転移します」

そのとき、城から騎士が何人か出てきた。スティーヴンは顔をしかめた。

「逃げて下さい。エヴァを倒して騎士たちの記憶を戻します」

「わかった。気を付けろよ」

「ありがとうございます」

ラルフは冒険者を連れて、城から出た。

「ドロシー。君もついていくんだ」

は頷いたが、しばらくスティーヴンを見つめていた。

「なに?」

「記憶を取り戻してくれてありがとう」

はそう言うとリンダたちを追った。

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