《【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】》# 20. 捜索
謎の男にオリビアを連れ去られ、〔魔王の左腕〕を失った僕たちはエレベーターに乗っていた。
「あの男に心當たりはありますか?」
僕はアンジェラに尋ねた。彼は首を橫に振った。
「誰かに似ていましたが、誰だか思いつきません。ただ、知り合いではないです。彼は魔師でした。『記憶改ざん』スキルを持っていましたから」
「じゃあ、魔師に〔魔王の左腳〕をまた奪われたのかにゃ!?」リンダはんだ。
「元々彼は【墓荒らし】を探しているようでした。多分彼が〔魔王の左腳〕を持っていたのでしょう。それを奪いに來たのです」アンジェラは親指の爪を噛んで言った。
僕はドロシーを一瞬見てから言った。
「オリビアさんが《マジックボックス》をひらかない限り、魔師にあれが渡ることはないと思います。……要するにそれは、オリビアさんに危険が迫っているというわけで……」
「#######」テリーが言って、リンダがムムムとうなった。
「自業自得、と言えばそうなのかにゃ?」
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「それはそうだけど……」ドロシーはうつむいていた。オリビアのことが心配なのだろう。
「ドロシー、オリビアはすぐに《マジックボックス》を開くかな」
僕が尋ねるとドロシーは首を振った。
「多分そんなにすぐは開けないと思う。けっこう強な子だから。……だから、心配なのよ」
僕たちは地上についた。そこは僕とアンジェラが降りた場所と同じところだった。王都の北に位置する地區で治安はあまり良くなさそうだった。
「どこにむかったんでしょう」僕たちは衛生的ではない路地に出た。ドロシーが言った。
「人を抱えて走るのに表は使わないんじゃないかしら」
アンジェラは頷いた。
「そうですね。ここみたいに人が攫われても誰も気にしないような場所を走ると思います。とにかく人に聞いてみましょう」アンジェラは言って、そばにいたおばさんに聲をかけた。おばさんはひどく面倒そうな顔をして、通りの向こう、さらに治安が悪そうな區域を指さした。
「ありがとうございます」アンジェラは全く気にした様子もなくそう言った。「行きましょう」
◇
「だめにゃ! 見つからないにゃ!」リンダは言った。
あの後、僕は《フライ》を使ってあたりを見回したがそれらしい姿は見つからなかった。アンジェラが人に尋ねるのも限界があった。しばらくは見かけた人を見つけられたが、地上に出た地點を離れるにつれて手掛かりはなくなり、ついに途絶えた。
「マーガレットが一緒にいればすぐ追っかけられたのにゃ!! なんで別行取るのにゃ!! いっつも重要なときにいないにゃ!!」リンダはそう言って頭を掻きむしった。
「マーガレットさんも來てるの?」僕がドロシーに尋ねると彼は答えた。
「ええ。でも、途中で別れたのよ。『このままではスティーヴンに會うことができない』とか何とか言ってたわ」
僕は眉をひそめた。どういう意味だろう。
「######」テリーが機械を取り出して何か言った。その機械は方位磁石のようなものとダイヤルがついていた。方位磁石はひとつの方向を指し示していた。
「マーガレットが近くにいるのかにゃ?」リンダが尋ねるとテリーは頷いた。
「どうしてわかるんですか?」僕は聞いた。
「マーガレットに発信機を持たせたにゃ。あいつすぐ迷子になるからこっちから捜せるようにしたのにゃ」リンダはそう言った。
「マーガレットと合流したほうがいいんじゃないかしら。彼なら私たちより広い範囲を捜せるはずだし」ドロシーの言葉に僕は頷いた。
アンジェラが尋ねた。
「そのマーガレットって人、誰ですか?」
「Sランク冒険者です。高速でいて飛び回れるのでさっきの男を追いかけるのに最適な人ですよ」僕は答えた。
リンダはし不満げだったが言った。
「わかったにゃ。合流するにゃ」
◇
テリーに従って、僕たちは歩く。彼は機械を両手で持って矢印の方向に進んでいく。ダイヤルの數値が徐々に小さくなるに連れて、僕たちは城に近づく。
突然、テリーは立ち止まった。そこは表通りで、人が多かった。瑠璃のに出會った場所とは別の広場が近くにあった。僕たちはその方角に向かっていた。
「どうしたにゃ? テリー?」リンダが聞くとテリーは機械を何度か叩いて、言った。
「######」
「反応が消えたにゃ?」
ドロシーが怪訝な顔をした。
「それってどういう……」
そのとき、上空から何かが落ちてきた。それは布の塊のように見えた。僕たちは驚いて、距離をとった。
落ちてきたそれは、しっかりと著地していた。それは人だった。なくともそのときにはそう見えた。ローブを著たそれは立ち上がり、僕を見た。
そいつが、オリビアを攫った奴ではないかと思っていた僕は、唖然とした。
そいつには顔がなかった。目のあるあたりにぽっかりとが空いていて、それ以外の部分は金屬でおおわれていた。それは、腰から二本の剣を抜くと口(・)を(・)ひ(・)ら(・)い(・)た(・)。
口などなかった。が、突然、口の場所に切れ目がったかと思うと、変形して、牙をむいた。
「スティーヴンですね?」
オートマタは言った。
僕は目をむいた。
「その反応は肯定のサインです」
そう言うと奴は突然、聲にならない咆哮をあげ、僕に突進してきた。
僕はとっさに魔法壁を発した。魔法壁に気付いたそれは、急停止して、魔法壁の直前で止まった。それはバックステップで距離を取った。
アンジェラがんだ。
「オートマタですよそいつ! 危険です逃げましょうよ!! 魔族の類ですよ!!」
彼は駆け出した。
オートマタは僕に剣の切っ先を向けた。すると、そこにのが現れた。
「無詠唱魔法!!」
ドロシーがんだ。
僕は《アンチマジック》で魔法を消す。オートマタは魔法が消えて不思議そうに切っ先を見ていた。
僕はリンダたちに言った。
「こいつの狙いは僕です。逃げてください!!」
僕はオートマタの攻撃に備えた。ドロシーとリンダは心配そうにこちらを見ながら、テリーとともにアンジェラを追った。
オートマタは魔法で僕を攻撃した。が、その魔法はすべて僕が《アンチマジック》で消していく。奴の突撃は魔法壁で封じることができる。
僕は手を振り上げる。大量ののが地面に浮かび上がる。
すべてをよけるのは不可能だ。
地面から棘の生えた植が出現して、オートマタを捕らえた。
オートマタは両手両足を引き延ばされて磔になる。
僕は植を氷で加工して、剣のように鋭く尖らせる。
とがった植はオートマタのを貫いた。
オートマタはがくがくといて、ついに、起停止した。
これで終わりだろうか。僕はあたりを見回して、
そいつを見つけた。
奴は上空から僕の戦闘を見下ろしていた。
彼のローブがはためく。
僕は奴の左腳を見て、はっとした。
「そんな……」
彼の腳には、〔魔王の左腳〕が裝著されていた。
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