街に転移すると人々がどよめいていた。ギルドから冒険者たちが出てきて、煙の方を見ていた。

その方角には、教會があるはずだった。

「ドロシー……」

僕は呟いて、すぐに、教會へと転移した。

教會は、崩れていた。鼓が速くなる。

ドロシーは？

「スティーヴン！！」ドロシーがんだ。彼は外に出ていて、子どもたちも一緒だった。

「無事だったのか」僕はため息をついた。

「ええ。他のシスターも大丈夫。屋が壊される音がして、不審に思って外に出たのよ。そしたらみるみるに破壊されて」

「どうしてこんなことに」僕が言うとドロシーが指さした。

その人は宙に浮かんでいて、僕たちを見下ろしていた。ローブを來て、深くフードをかぶっていた。

マーガレットが遅れてやってきて、その人を見上げた。

「アムレン」彼はそう言った。

彼のローブがはためく。僕は目を見開いた。

そこには〔魔王の左腳〕があった。

「どうして？」

どうして彼が〔魔王の左腳〕を持っている？

あれは守護者たちに渡したはずだ。

いや、違う。

厳には僕はアンジェラに渡した。

彼が裏切ったのか？

かすかにじていたほころびが徐々に大きくなっていくのをじた。

僕が狼狽しているにローブの男はゆっくりと降りてきて、教會の瓦礫の上に降り立った。彼は腕を振った。すると、〔魔王の左腳〕がを帯びて、ダヴェド文字がらせん狀に現れた。

魔法が発する。

瓦礫が一瞬浮遊して、即座に塵と化して消えた。

教會は更地になってしまった。

ローブの男は守護者、レンドールの置いた封印裝置のそばによると、左腳でそれを踏み砕いた。

あっけなく裝置は砕けた。

僕ははっとしてんだ。

「封印されている〔右腕〕を奪おうとしてる！」

ドロシーは言った。

「でもあれは、封印されているのよ？　エヴァだって十年に一度のあの日にしか解除できなかったのに？」

僕は言いよどんでから言った。

「わからない。わからないけど、〔魔王〕の一部が持っている力は規格外なんだ」

僕はうつむいた。すべては順調にいっているように見えた。

それは僕がそう思っていただけだった。

僕が勝手にそう思って、誰にも相談せず、勝手に行して、勝手に終わらせただけだった。

事実、どうだ？

僕はローブの男を見た。

彼が何をしようとしているか知った冒険者たちが、彼に攻撃を仕掛けている。が、その攻撃は無意味だ。矢も、剣も、彼の作った魔法壁によって跳ね返されてしまう。魔法もすべて、のの段階で消されてしまう。

そして、彼の魔法は《アンチマジック》で消すことができない。

マーガレットは混していた。

「アムレンは守護者だ……。どうしてあれをつけている？　どうして教會を破壊している？」

ローブの男は左腳をし上げて、裝著した〔魔王の左腳〕で、封印場所を思いきり踏んだ。

地面に大きな亀裂がる。

僕たちは後ずさる。

放狀にびていた亀裂が、時空がゆがんだように、ひねられ、渦を巻いたような模様に変わる。

亀裂が一點に収する。

〔魔王の左腳〕の直下に真っ黒な球が出現して、地面を、穿った。

ローブの男はふらりとよろける。

穿たれた地面から、封印されていたはずの〔魔王の右腕〕が飛び出して、宙に浮かんだ。

ローブの男はそれを手にした。

僕はそれをただ見ていた。そうすることしかできなかった。

恐怖していたわけではない。僕は僕の過ちと、そこから來る罪悪に苛まれていた。

僕は今まですべて勝手に、それでいいと思って、誰にも言わずにやってしまった。

その結果がこれだ。

僕は間違えた。多くのことを間違えた。

それは僕のせいだった。

ローブの男は満足したように〔魔王の右腕〕を見る。

彼は顔を上げて、こちらを見た。

彼は何かに気が付いた。

ローブの男の顔がゆがむ。そこに現れたのはかすかな怒りの表だった。

〔魔王の左腳〕が赤くる。

のがいくつも出現する。

そして、僕を殺したあの真っ黒な槍が出現した。

槍の周りには炎のようにを屈折する明な紫の帯があって、ふわりと漂っていたかと思うと瞬時に槍にまとわりついた。

「逃げろ！！」マーガレットがんだ。

《テレポート》を使えば……。いや、だめだ。近くにいる人が多すぎる。

《アンチマジック》は大量展開して発できたが、それは一度に大量に発していたわけではなく、発し、消えた部分に新しいスクロールを転寫して、また発するというサイクルを繰り返していたからだ。

《テレポート》を僕が発する以上、真っ先に式の対象となるのは僕だ。他人だけを転移させるのは不可能だ。一度に數百というスクロールを同時に発しない限り全員を救うことはできない。

あの槍は地面に刺さった後も近くにいる人間を殺す。

僕はそこで思いだした。あの槍は地面に刺さっていた。

理的に反できるのではないか？

僕は魔法壁を多重展開した。

槍が飛ぶ。

その槍は僕の方に飛んでくるとばかり思っていた。

彼が敵対ししているのは僕だとばかり思っていた。

でも違った。

その矛先は、マーガレットに向かっていた。

アムレンはマーガレットの家族を殺した。おそらくその生き殘りである彼を殺そうとしている。僕はそう思った。

とっさに、僕は魔法壁を彼の前にさらに追加した。

真っ黒な槍が魔法壁に衝突する。

槍は、反されなかった。衝突した瞬間、紫の帯が緩んで、そして、もう一度黒い槍にまとわりついた。槍が回転する。

魔法壁が、破壊される。

僕はマーガレットを突き飛ばした。マーガレットが驚いて僕を見ている。

すべては僕の過ちだと、そう思った瞬間、

槍が僕の頭をつぶした。

――――――――――――――――――――――――XIII

聲がする。

ただ、その聲は、壊れていた。

――繝ヲ繝九?繧ッ繧ケ繧ュ繝ォ縲醫そ繝シ繝悶い繝ウ繝峨Ο繝シ繝峨?峨ｒ逋コ蜍輔＠縺セ縺吶?

――譛?蠕後↓繧サ繝シ繝悶＠縺溷?エ謇?縺ク謌サ繧翫∪縺吶?

――繧醫ｍ縺勵＞縺ァ縺吶°?

僕は「NO」と言った。

――蜿苓ォセ縺勵∪縺勵◆縲

――繧ケ繝ュ繝?ヨ縺ョ驕ク謚槭↓遘サ繧翫∪縺吶?

目の前にスロットが表示される。ただ、何かがおかしかった。僕はスロットのひとつを選択した。それは壊れていた。どのスロットも、ザザザという雑音と真っ暗なイメージしか浮かばない。

すべてのスロットが、同じように雑音と暗闇に包まれていた。

僕は頭を抱えた。