《【書籍化】解雇された寫本係は、記憶したスクロールで魔師を凌駕する ~ユニークスキル〈セーブアンドロード〉~【web版】》# 32. 白と黒1

「もう一つ話しておかなければならないことがあるんです」

僕はマーガレットを見て言った。彼は涙を拭きながら言った。

「なんだ?」

「アムレンはあなたの父親です。そして僕の父親の仲間でもあります」

は涙の乾ききっていない目で僕を見た。

「……どういうことだ? では、どうしてアムレンは私の家族を殺した? てっきり、彼は魔師に敵対していて、それでおじいさまとお母様を殺したのだとばかり……。それに君の父親が関係している?」

僕はマーガレットに手をばした。

「詳しい話はドロシーとしましょう。彼ならきっと、僕たちには考えもつかないような答えに導いてくれるはずです。今日の夜、教會に行きましょう」

マーガレットは僕の手を取った。

「ああ、わかった」

夜。僕とマーガレットは教會の前にいた。昨日と同じように屋裏から燈りがこぼれていた。

ドロシーが僕たちに気づくと、屋裏の燈りが揺れて消え、しばらくして、教會の扉がひらいた。

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ドロシーはシスター姿のままだった。彼は言った。

「待ってたわ。って、まだわからない部分もあるけど、一応考えを整理したつもり」

僕たちはドロシーに従って屋裏に向かった。何枚かの羊皮紙がテーブルの上に置いてあった。インクはまだ乾ききっていなかった。僕は文字が読めないからはっきりとはわからないが、もしかしたらそれは思考の跡なのかもしれない。僕たちが來る直前まで考えていたのだろう。

僕とマーガレットは椅子に座ってドロシーと向かい合った。

「マーガレットはどこまで聞いたの?」ドロシーが尋ねた。僕はマーガレットに伝えたのは僕が未來から戻ってきたこと、それからアムレンとワーズワースの家系についてだと言った。

ドロシーは頷いた。

「じゃあ、確認も含めて、私が理解している範囲で、スティーヴンがたどってきた経緯について話すわね」

ドロシーは第一ループ、第二ループそれぞれについて話した。

「何か間違っているところはある?」

僕は首を橫に振った。

「マーガレットは……ああ……混しているだろうけど、何が起こったか――というより何が起こるのかだけど――わかった?」

マーガレットは目を強くつぶった。

「ああ。一番ショックな部分はスティーヴンに話してもらったからな。大はわかったよ」

マーガレットは目をひらくと僕をみた。

ドロシーが言った。

「そう。なら、話を進めるわね」ドロシーはテーブルから羊皮紙を持ってきて、膝の上にのせた。彼はそれを見ながら話はじめた。

「まず、今後の目標として、私たちがしなければならないのは『〔魔王の左腳〕が魔師陣営の手に渡らないようにすること』と定める。この陣営という言葉は勢力とかチームとかに読み替えてもらって構わない。要するに魔師と、それに味方する人たちのことを言うわ。これはいい?」

僕は頷いて、それから尋ねた。

「その味方する人たちっていうのは、記憶を改竄されている人ってこと?」

ドロシーは首を橫に振った。

「ここでは、記憶の改竄のあるなしに関わらず、味方する人って意味。話を聞いてれば意味がわかるから」

僕は頷いた。ドロシーは続ける。

「でね、じゃあ誰が魔師陣営なのかって話になるんだけど、ソムニウムのメンバー、つまり私たちは全員白なのよ。魔師陣営じゃない。過去に魔師と対抗しているしそれに記憶を改竄されている心配もない」

マーガレットが言った。

「私は〔魔王〕の族だ。それは……」

そこで、ドロシーが制した。

「ええ。それはわかってる。でもあなたは魔師に加擔していないでしょ? 生まれがそうってだけ。魔師ってのは、要するに、〔魔王〕を信仰している勢力のことなのよ。伝説から持ってくれば原義はそうなるわ。あなた〔魔王〕を信仰しているの?」

マーガレットは首を橫に振った。

「まさか」

「じゃあ違うわね」

マーガレットはほっと息をついて、僕を見た。彼が笑みを浮かべたので、僕も返した。

ドロシーは羊皮紙をれ替えた。

「話を戻すわ。王都のメンバーの誰が魔師陣営なのか考えないといけない。ただ、數日後にここにやってくるアンジェラとレンドールはおそらく白ね」

僕の中にはアンジェラが裏切ったのではないかという考えがあった。第二ループで彼に渡した後見ていないからだ。僕は尋ねた。

「どうしてそう言えるの?」

「アンジェラは『記憶改竄』スキルを見るたびに報告しているでしょ? 魔師陣営だとは考えられないわね」

僕は苦笑いした。確かにそうだった。それどころかアンジェラは自分が守護者であることもぽろっと話してしまうし、〔魔王の左腳〕を探していることも口に出そうとしていたのだった。

「レンドールはティンバーグから〔魔王の左腳〕を奪ったっていう話を聞いて激昂してる。魔師なら不自然な反応ね」

僕は頷いた。確かにそのとおりだと思った。

ドロシーはシスター服の頭巾を外して、髪をほどき、首を振った。

「ここまではいいのよ。問題はロッドとアムレンね。とくにアムレンが……難しい」

ドロシーは息を吐いた。

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