オートマタは口をひらき、しゃがみ込んで、それから、突撃してきた。僕は魔法壁を張った。が、そのオートマタが右手をばすと、魔法壁が消えた。

「《アンチマジック》！？」

僕は慌てて、ドロシーを背に隠した。

影ができる。

マーガレットが剣を抜いて、オートマタの突撃を止めた。

オートマタはマーガレットの剣にぶつかるとバックステップで距離を取った。

ロッドはもう一のオートマタに言った。

「他のも呼び出しなさい。５くらいで十分です」

そのオートマタは同じく無詠唱で魔法を発しようとした。僕は《アンチマジック》で応戦する。魔法が消えると、マーガレットに突撃したオートマタが反応した。奴は、また、マーガレットに突撃した。人間とは異なる捨ての攻撃で、に傷を負うことをいとわない分、踏み込みも威力もまるで違うように見えた。

マーガレットが後退する。僕は彼にぶつかる。マーガレットとオートマタのでロッドの姿が見えない。

それはつまり、ロッドの近くにいるオートマタの魔法が見えず、《アンチマジック》が使えないことを意味する。

僕はドロシーを背に隠したまま、ロッドが見える位置にこうとした。が、マーガレットと戦闘するオートマタが、僕の目的がわかるように、マーガレットをかして、僕の視界を狹めた。

リンダがんだ。

「スティーヴン！　なんか機械がぞろぞろ出てきたにゃ！！」

マーガレットが一目のオートマタを破壊する。僕の視界が開ける。

五のオートマタが一斉にこちらに向かっていた。

僕は魔法壁を多重展開する。五のオートマタが一斉に《アンチマジック》を発する。

魔法壁が片っ端から割られていく。

最後の一枚が割れて、オートマタが突撃してくる――。

視界の端に何かが映る。

瑠璃のそれは、オートマタたちに橫から突撃して、隊列を崩した。

「デイジー！？」

マーガレットがんだ。

アムレンがその後ろから追撃する。

オートマタたちのあたりがスパンと斬られる。

オートマタはよたよたと歩いてたがいにぶつかり、倒れた。

ロッドを見ると、すでに新しいオートマタを準備していた。その數、十。おそらくもっと隠し持っているだろう。

僕はドロシーをリンダの近くまで下げると前線に戻った。

「キリがない」マーガレットはつぶやいた。

「どうして、王都で《テレポート》が使えるんですか？」僕はアムレンに尋ねた。

「あれは《テレポート》じゃない。《マジックボックス》だ。ロッドはオートマタを一瞬だけ起停止させる機能を作った。起停止したオートマタはいわば仮死狀態だ。《マジックボックス》にれられるんだよ」

僕は思いだす。

――この前も新しい機能追加してたじゃないか。ええと、なんだ……

――起停止した數秒後にすぐに起できるやつ？

確かにそんなことを言っていた。

デイジーの転移もすべて《マジックボックス》だったのか……。

そこで、僕は気付いた。

「オリビアさん！！　オートマタの《マジックボックス》のパスワードを読み取ってください！！」

リンダの後ろに隠れていたオリビアが言った。

「なんで読み取れること知ってんの！？」

「いいから早く！！」僕は十のオートマタを食い止めるべく魔法壁を大量展開しながらんだ。

「もうとっくに読み取ってる！！　私の能力舐めるんじゃない！！」

オートマタを外に出してはいけない。外に出した瞬間、起してしまうだろう。仮死狀態にならない限り、オートマタは《マジックボックス》にらない。

じゃあどうすればいいか。

デリクが言っていたではないか。

――あのはこの技を利用して《マジックボックス》同士をつなげる論文を書いた。二つの別々のパスワードからなる《マジックボックス》を用意して、一方からもう一方にを移する。一度も外に出さずにな。何につかえるかは知らん。だが研究とはそういうものだ。

オリビアはその方法を知っている。一度もを外に出さずに、《マジックボックス》の間でやり取りする方法を知っている！！

「じゃあいつものように『盜んで』ください！！　論文に書いたように、《マジックボックス》の外にオートマタを出さずに！！」

「なんでそんなことまで知ってるのよ！！　それに羊皮紙もペンもインクもない！！」

オリビアがそうぶので、僕は自分の《マジックボックス》からそれらを出して、オリビアに投げつけた。

「早くしてください！！」

「わかってる！！　急かさないで！！　羊皮紙もう一枚頂戴！！」

僕は追加で彼に投げ渡した。オリビアは、リンダの後ろで、スクロールを書き始めた。初めは『転寫』を使って《マジックボックス》を二枚書いて、そのあと二つのスクロールをつなげるように何かを書いていた。

その間にもオートマタたちの攻撃は続く。リンダやテリーも応戦して數が減っていく。

その時一のオートマタが、僕たちの上を飛び越えた。

取りこぼした！

奴がリンダとオリビア、そして〔魔王の左腳〕を持つドロシーの方へと駆けて行く。

マーガレットが振り返る。

彼は走り、オートマタに追いついた！

そのを後ろから斬り裂く。オートマタは前のめりにたおれた。

「お、おお、助かったにゃ、マーガレット」

リンダはを小さくしたまま言った。

「ああ、引き続き後衛頼む」

マーガレットはつづけた。

「……頼りにしている」

リンダはその言葉に一瞬揺したが、すぐにニッと笑って言った。

「任せろにゃ！」

マーガレットが前線にもどったとき、オリビアがんだ。

「できた！　アクティベイト！！」

僕はちらと振り返る。オリビアの眼前がし揺らいでいるのが見える。どんな魔法なのか僕は知らない。うまくいってくれるといいが。

オートマタに魔法を邪魔されないよう、奴らをはじき返し、突き刺す。

「終わり！！　さすが私！！」

オリビアが自畫自賛している。

オートマタは殘り三。一はロッドの近くで《マジックボックス》を発しては首をかしげている。

マーガレットとアムレンが一ずつ破壊する。

を斬り落とされたオートマタたちがゆっくりと倒れた。

アムレンはロッドに漸近して、最後のオートマタを切り倒すと、ロッドの首元に剣を突き付けた。

「どうしてなんだ、ロッド」アムレンは息を切らして言った。