《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》18 タバサってなんでもしっててすごいのです
いけ好かない茶會から連れ出して、部屋に戻ってからのアビゲイルの第一聲が「お水のみたいです」だった。
そうだな。君が気にしないのはわかってる。けれどむかむかしてどうにもならん。
ソファに當たるようにを沈めてむかつきを抑えた。
「タバサ、よく知らせてくれた。助かった」
「いいえ、先れもなく急なおいで……使いをだすことしかできませんでしたから」
俺の隣にちょこんと座ったアビゲイルに、タバサが水差しから注いだ水を渡してため息をつく。
「ああ、ついて行ってくれたほうがありがたかったからな。……義姉上が嫁りのときにもああだったか?」
サーモン・ジャーキーを茶會の卓に並べるのは、この領のが特定のをつるし上げるときによくやるらしい。一度口にいれればなかなか呑み込めないそれは、報換の場である茶會で出されることは普通ない。そもそもあれは酒のつまみだしな。ただそんな場にあえて出されることに意味がある。並べられた側はそれでその場の空気を理解するわけだ。黙ってつるし上げられてろと。
Advertisement
……まあ、アビゲイルは確かに黙ってた。うん、期待にはこたえたのかもしれん。単純に味しそうに食べてただけだが。
夜會でアビゲイルの挨拶を遮ったことといい、先れのないいといい、何か母らしくもない雰囲気に嫌な予がして慌てて駆けつければこれだ。
酒のつまみに好まれるこの領の特産品をつかって、よくもまあ領主夫人がやったものだと思う。
「いいえ、ステラ様のときにそんなことは……大奧様もステラ様も政略結婚ですしお互いわきまえたお付き合いという、か、あんな下位貴族がするよう、なこと」
珍しくタバサが小刻みにを震わせ、堪えるように俯いた。足元も危うい。
「ただ、そう、大奧様もまさか……くっ……奧様の迷いのなさに揺したら、しく」
「どうひまひたかタバシャ」
サーモン・ジャーキーの端っこをもぐもぐくわえながら見上げるアビゲイルに、タバサがごふっと崩れ落ちた。アビゲイルは驚いたのかぴょんと小さく跳ねてからしゃがんでタバサを覗き込んでる。
嗚咽のような笑い聲が全然おさえきれてない。タバサお前もか。やめろ。じわじわうつる。
「……まだ持ってたのかそれ――気にったのか?……そうか。それはよかった」
タバサに寄り添ったまま俺を見上げて頷くアビゲイルは、サーモン・ジャーキーを離さない。
一いつの間にどこに隠し持ってたんだ。
くそ、腹が立ってるのに、あの貴族然とした母が揺したであろう姿が目に浮かんできてじわじわくるんだが!ほんとやめろタバサ!
やっと立ち直って目に浮かんだ涙を拭くタバサに、茶會の様子を改めて詳しく聞いた。
アビゲイルの育った環境とは比ぶべくもないほどに恵まれてはいるが、侯爵家はごく平均的な貴族家であって、市井でいわれる理想的な家(・)族(・)とはいいがたい。俺自、軍で平民出の部下との流で知るまではそれが普通だと思っていた。
がないわけではないし、善き領主と夫人として敬もしている。けれど、彼らは父母というよりは侯爵夫妻であり、俺にとっては実母よりタバサやイーサンのほうがずっと近しくじられる存在だった。あからさまでこそないが俺は次男で、嫡男である兄上よりも期待されていないことをじ取っていたせいもあるとは思う。
もちろんこの年でそんなことに文句などない。
ただ、だからこそアビゲイルにとった態度は解せない。アビゲイルと合うか合わないかといえば合わないだろうが、そうであれば適切な距離を保つと思っていた。兄上の妻であるステラ義姉上とそうしているように。
「アビゲイルの天恵(ギフト)のことはどうやら想定以上にあまり伝わっていないようだ。詳細こそ知らなくても、侯爵領がけた恩くらいは把握できてると思ったんだがな……おかしいだろう。父上は何をしてるんだ」
アビゲイルの天恵(ギフト)は王家に囲い込まれても不思議ではない。むしろ黙っていれば謀反すら疑われかねないだろう。まあ、だからいっそ侯爵家にも詳しくは伝えていないわけだが。
「――大奧様はずっと貴族令嬢、そして侯爵夫人として生きてこられた方ですから」
「だからといって、俺の妻を侮っていい理由にはならん」
一瞬窓の外を遠く見つめたタバサが振り返って、俺に目を細めてみせた。
【よくできました】と、折々の節目でのい俺の振る舞いを褒めるときの目で、この年でそれは居心地が悪い。
「主様はほんとうによき夫に育ちつつあるようで、タバサは無量です」
「……いつまでも未者(腰抜け)と呼ばれているわけにもいかんだろう」
タバサは、いつもと同じにすっと背すじをばしてから、アビゲイルからサーモン・ジャーキーの殘りをとりあげ、ぱんっと両手を打ち鳴らした。
まだ食ってたのか。なんだその陶然(とうぜん)とした顔は。
「さあ、奧様、晩餐にそなえて武裝しますよ!」
「ぶそう」
「大奧様はただ貴族夫人の在り方を他にご存じないだけでございます。ええ、大丈夫ですとも。奧様は誰よりもお強いのですし、このタバサがついております」
「……はい!タバサすごい!私強いんですよ!」
なんでわかりましたかと囀るアビゲイルの手をひくタバサ。
いや絶対わかってない溜(・)め(・)があったぞ今。
更新セーフです!セーフですよ!
6/15発売【書籍化】番外編2本完結「わたしと隣の和菓子さま」(舊「和菓子さま 剣士さま」)
「わたしと隣の和菓子さま」は、アルファポリスさま主催、第三回青春小説大賞の読者賞受賞作品「和菓子さま 剣士さま」を改題した作品です。 2022年6月15日(偶然にも6/16の「和菓子の日」の前日)に、KADOKAWA富士見L文庫さまより刊行されました。書籍版は、戀愛風味を足して大幅に加筆修正を行いました。 書籍発行記念で番外編を2本掲載します。 1本目「青い柿、青い心」(3話完結) 2本目「嵐を呼ぶ水無月」(全7話完結) ♢♢♢ 高三でようやく青春することができた慶子さんと和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。 物語は三月から始まり、ひと月ごとの読み切りで進んで行きます。 和菓子に魅せられた女の子の目を通して、季節の和菓子(上生菓子)も出てきます。 また、剣道部での様子や、そこでの仲間とのあれこれも展開していきます。 番外編の主人公は、慶子とその周りの人たちです。 ※2021年4月 「前に進む、鈴木學君の三月」(鈴木學) ※2021年5月 「ハザクラ、ハザクラ、桜餅」(柏木伸二郎 慶子父) ※2021年5月 「餡子嫌いの若鮎」(田中那美 學の実母) ※2021年6月 「青い柿 青い心」(呉田充 學と因縁のある剣道部の先輩) ※2021年6月「嵐を呼ぶ水無月」(慶子の大學生編& 學のミニミニ京都レポート)
8 193【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ感謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」
※書籍版2巻でます! 10/15に、gaノベル様から発売! コミカライズもマンガup で決定! 主人公アクトには、人の持つ隠された才能を見抜き、育てる才能があった。 しかしそれに気づかない無知なギルドマスターによって追放されてしまう。 數年後、アクトは自分のギルド【天與の原石】を作り、ギルドマスターの地位についていた。 彼はギルド構成員たちを次から次へと追放していく。 「鍛冶スキルなど冒険者ギルドに不要だ。出ていけ。鍛冶師ギルドの副支部長のポストを用意しておいたから、そこでせいぜい頑張るんだな」 「ありがとうございます! この御恩は忘れません!」 「(なんでこいつ感謝してるんだ?)」 【天與の原石】は、自分の秘めた才能に気づかず、理不盡に追放されてしまった弱者たちを集めたギルドだった。 アクトは彼らを育成し、弱者でなくなった彼らにふさわしい職場を用意してから、追放していたのだ。 しかしやっぱり新しい職場よりも、アクトのギルドのほうが良いといって、出て行った者たちが次から次へと戻ってこようとする。 「今更帰ってきたいだと? まだ早い。おまえ達はまだそこで頑張れる」 アクトは元ギルドメンバーたちを時に勵まし、時に彼らの新生活を邪魔するくそ上司たちに制裁を與えて行く。 弱者を救済し、さらにアフターケアも抜群のアクトのギルドは、より大きく成長していくのだった。
8 184「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無雙しようと思います~【書籍化&コミカライズ】
ソロでCランク冒険者のアウンはその日、運よく発見したダンジョンで魔剣を獲得する。しかし、その夜に王都から來たAランク冒険者パーティーに瀕死の重傷を負わされ魔剣を奪われてしまった。 そのまま人生が終わるかと思われたアウンだったが、なぜかゾンビ(魔物)となり新しいスキルを獲得していた。 「誰よりも強くなって、好きに生きてやる!」 最底辺の魔物から強くなるために進化を繰り返し、ダンジョンを形成するための核である『ダンジョンコア』を食い、最強を目指して更なる進化を繰り返す。 我慢や自重は全くせず無雙するちょっと口の悪い主人公アウンが、不思議な縁で集まってきた信頼できる仲間たちと共に進化を繰り返し、ダンジョンを魔改築しながら最高、最強のクランを作ることを目指し成り上がっていきます。 ※誤字報告ありがとうございます! ※応援、暖かい感想やレビューありがとうございます! 【ランキング】 ●ハイファンタジー:日間1位、週間1位、月間1位達成 ●総合:日間2位、週間5位、月間3位達成 【書籍化&コミカライズ】 企畫進行中!
8 121貴族冒険者〜貰ったスキルが最強でした!?〜
10歳になると、教會で神様からスキルを貰える世界エリシオス。エリシオスの南に位置するリウラス王國の辺境伯マテリア家に1人の男の子が誕生する。後に最強の貴族として歴史に名を殘す男の話。
8 198転生したら軽く神王超えてました
學校に行く途中トラックに轢かれそうな幼馴染女の子を助けて共に死んでしまった。 目を覚ますと白い空間に居た…
8 83FANTASY WAR ONLINE
『FANTASY WAR ONLINE』通稱『FWO』主人公である龍血昴流はVR技術の先駆者である父親の友人から世界初のVRMMOを手に入れる。しかも、家族全員分。人族と魔族の陣営に分かれて戦うこのゲームで龍血家は魔族を選択し、『FWO』の世界へと足を踏み入れる。
8 87