《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》24 わたしはだんなさまのつまなので

壇上からは広場の様子がよく見えます。

中央にあった大きな焚火臺を取り囲んでいた人々は、まだ賑やかに踴ったり笑ったり。

けれど広場の外周からじわじわと、侯爵家の私兵と侍従たちが人垣を穏やかに崩していきます。文句を言ってる人も見えますが、さほど混もしていないようでした。

そして私の額に口づけてからタバサから離れるなと言った旦那様も、その人波をするりするりと抜けて義姉へと近づいていってます。

あの火を消す魔法はおおきすぎるから義姉を捕まえた方がはやいそうです。

「奧様、こちらへ」

タバサは私の腕をひくのですけど。

義姉は自分がゆっくりと侯爵家の護衛や、ロドニー、旦那様にとり囲まれていくことなどに気づきもせず、ただ、人垣をかきわけ、押され、躓(つまづ)きながらも焚火臺へと向かってます。

よろめくたびに、握りしめている枯れた花束からぱらぱらと欠片が落ちていくのが見えました。

「――奧様っ」

城へ向かいますよと繰り返すタバサを見上げると、引き締めた口元がし震えています。

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「だって旦那様はつよいです」

侯爵家の人たちも、旦那様もロドニーも慌ててますけど。

旦那様お強いから、逃げなくてもいいと思うのです。

でもタバサたちは知らないのかもしれません。だからですね。きっと。

「アビゲイル様っ」

ステラ様も私の手をとってひきます。

ステラ様もタバサもよわいのに。

きっと自分たちがよわいのしってるからこわいみたいなのに。

なぜわたしをおいてにげないのでしょうか。

わたしはつよいですのに。たぶんつよいです。

やっぱりにんげんはちょっとわからない。

「――っ!――――!!」

護衛にとらえられた義姉が、言葉になっていないびをあげました。

花を奪おうとする護衛の腕に噛みついたりして大暴れです。……ああいうにんげんだったでしょうか。

なんだかいつもおすまししようとしては失敗していた気はするのですが、今は罠にかかったたぬきみたいになってます。

私の腕や手をつかむタバサとステラ様の力が抜けました。

義姉を捕まえたのが見えたからでしょうか。

とりおさえられた義姉とおさえてる護衛や旦那様たちの周りからにんげんが離れていきます――あ。

「奧様、もう大丈夫でしょうが、主様たちはまだかかるでしょうから城へ戻りましょう?」

「風、ふきます」

びぅっとつよいかぜがそらからおりてきます。

おおきなたき火からちるちいさな火がいくつもいくつも、ひっぱられるようにそらたかくとんでいきます。

私はとても目がいいので、散ってしまった魔寄せの花の欠片がちゃんと見えるのです。

義姉たちの周り、広場のあちこちに欠片は散らばっています。

ああ、義姉の手から取り上げられた花束も、ばらばらと崩れて風にのりました。

旦那様とロドニーの手が、崩れた花を追いかけてびます。

おおきなたき火はつよいかぜにあおられて、ぶわっとさらにおおきくふくらみました。

崩れた花束のうち大きな欠片のいくつかを、旦那様とロドニーが摑みましたが、あ、二人で転びました。

――小さな欠片がいくつもいそいそと火に飛び込もうとしています。

「――奧様?」

力の抜けたタバサとステラ様の手をほどいて、舞臺の端へと向かいます。

侯爵夫人は義務だとおっしゃいました。

夫人は妻ってことなので、私もノエル子爵夫人で妻なのです。

旦那様は領地をもたないけれど、私がドリューウェットで起きることを教えると嬉しそうにするのです。

旦那様が嬉しそうにすると、なんだかちょっとくすぐったいです。

旦那様が褒めてくれると、おいもをもらったときよりほかほかします。

私が妻のお仕事をちゃんとしたらきっともっと褒めてくれるでしょう。

「私は旦那様の妻なので、旦那様のお仕事をお手伝いするのです」

それに、あれがもえたらまものたちがきます。

――こっちにはつよいにんげんがいるのでまものはきちゃいけません。

森が燃えた時は、空気っぽいかんじのをぎゅっとした塊を落としました。なんかできたので。

だけど、どんってしたら、焚火のすぐそばにいる旦那様もつぶれちゃいます。

でもだいじょうぶ。

アビゲイルになってから、お勉強もしたので火の消し方も知ってます。

すぅっと大きく息を吸い込んで。

アビゲイルのではやったことはなかったけれど。

魔力をの中でぐんぐん回します。

はやくはやく

つよくつよく

耳の中できぃんきぃんと何かが鳴っています。

タバサの聲が聞こえる気がしますけど、何を言ってるのかはちょっとわかりません。

大きな焚火を囲うように

おなべに蓋をするように

――ぽんっ

軽い音を立てて、大きな焚火は消えました。

できた!火は閉じ込めたら消えるのです!知ってます!

人間になって初めてつかった魔法は上手にできました!魔王の時より上手かもしれません!

ふらっと立ち上がった旦那様が火の消えた焚火臺を見つめて、ばっとこっちに顔を向けました。

「――アビゲイル!!」

火が消えたぞなんだどうして火がってざわざわしている人たちを押しのけて、旦那様がこっちに向かって走ってきます。

大きな聲でアビゲイルと繰り返し繰り返しんでます。あら?タバサも橫で奧様奧様言ってます。

鼻がちょっとむずむずしたので、手で拭いたら真っ赤ながいっぱいつきました。

真っ赤なことがちょっとあれ?って思ったけれど、そういえば今人間でした。

あっという間にやってきた旦那様が壇上にいる私の傍に立ちます。

「旦那様」

「あ、アビゲイル、くなよ、そのまま」

「鼻でました」

「――お、おう、おいで」

そうっとそうっと旦那様の腕が私のを囲んで、ふわっと抱き上げてくださいました。

いつもとちがってちょっと橫になるように。

タバサが橫からハンカチで何度もそっと顔を拭いてくれながら、醫者を、治療師をと誰かに伝えています。

「……っ痛いところはないか」

痛いところ。どうでしょう。あ、腕と背中が痛いです。そう答えたら、めまいは?吐き気は?と続きます。

きかれるたびに、ないですって答えました。次々聞かれるので、筋痛ですって言う暇ないです。

魔王が思ったことや考えたことは覚えてませんけど、味しかったり味しくなかったり熱かったり冷たかったり痛かったりは覚えてるのです。

いっぱいの槍に刺されたときのほうがずっと痛かったから平気です。あ、あと食べ過ぎておなかいたくなったときのほうも痛いです。

「アビゲイル、アビゲイル、アビー」

旦那様の青い目からぼろりぽろりと涙がこぼれて、そのまま私の頬にすりすりっとするからくすぐったい。

お仕事ちゃんとできたけど、いっぱい褒めてくれるのはまだでしょうか。

いつもごひいきありがとうございます!豆田です!

ここここのたびこの元魔王、書籍化・コミカライズが決定しましたー!

詳細はまた決まり次第はりきってお知らせします。まじで!?まじで!きゃー!

短編予定だった?いや知りませんね!いいましたかそんなこと!

長編ですこれは長編なのですええそうですとも!

これも応援してくださったみなさまのおかげです。ありがとうございます!

ただ、そんなわけで更新頻度はもうちょっとしたら落ちてしまうかもしれません。

毎日更新はさすがに厳しいなと。あと數回更新後に更新頻度をおとします。

そのときはまたお知らせしますね。

どうかまだまだおつきあいくださいますように!

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