《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》1 ちょっとしっぱいしてもだいたいよければだいじょうぶです

今日は半年かけて準備してきた結婚式とお披目なのです。

タバサだって、義母上だっていっぱい々教えてくださいました。ドレスのサイズ測るときの姿勢とか、布や石を顔や首のあたりにあててが合うかどうかを確認するとか、お出しするお料理の選び方や會場の飾りつけにはテーマを決めていくといいとか。々です。

私は綺麗だとかかわいいとかそういうのは、まだちょっとわかりませんけど、味しいのはわかるのでちゃんと選べました。全部味しかったです。

魔王は誰かに何かを教えてもらうことはありませんでした。だって魔法は勝手に使えたし、何かを知る必要もなかったと思いますし、一緒に過ごすものもいなかったので。

ロングハーストでは家庭教師がついていましたから、読み書きとか令嬢の所作とかそういうのは習いました。こうしなさい、っていうのと、あとは本をくれておしまいです。

私はこうしなさいって言われればちゃんとできますから、それで問題はありません。

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でもタバサや義母上から教えてもらうのは全然違うのです。私とお話しながら教えてくれます。ちゃんとできたら褒めてくれるし喜んでくれます。きっとこの結婚式もお披目もちゃんとできたら、いっぱい褒めて喜んでくれます。

それに、結婚式は旦那様がしたかったことなので、妻の私はちゃんとお手伝いしたいので、ちゃんとこのお披目が終わるまで、おすましとにっこりをしたいと、思ってたのです。だからちゃんと、いつも通りに、食べてもいいですよって、くらいのお料理しか、食べてないのに――。

「……アビゲイル?どうした」

大きなケーキも食べて、ご挨拶回りもちゃんとして、招待客リストにあった人たちには、もう全部ご挨拶終わったはずです。ダンスをしている人たちもいれば、余興でお呼びした道化がとりどりのいくつものボールをるのとか、あ、すごい。ああ、でも、あともうちょっとしたら新郎新婦は退場してもいいくらいのはずだからあともうちょっと。

「お、おい、アビゲイル、アビー?」

旦那様がそっと抱き寄せてくれました。ちょっと慌てた小聲です。旦那様が抱えてくれるこの場所はいい場所で――おなか、いたい……。

◆◆◆

侯爵家の王都邸(タウンハウス)は、プライベート用の東棟と客をもてなすための西棟で別れている。披目を行っていた広間は當然もてなし用の西棟で、そこの喧騒はこの部屋がある東棟までは屆かない。

化粧をしていてもわかるほどの気がひいた顔に気づいたときは、久しぶりに慌てた。

以前はよく調をいきなり崩してたし、そういうときはいつの間にかどこかに隠れに行ってしまってたものだけれど。

わずかに足元をふらつかせながらも習ったとおりに花嫁らしく振舞っているアビゲイルを、待ちきれないとばかりな新郎の表をつくって広間から連れ出した。そのまますぐに抱き上げれば、張がほどけたようにを預けて額を肩にすり寄せてきたから、隨分と頑張ったのだろう。

まあ、新郎新婦は元々途中退場するものだし、あとは母たちが引きけてくれているから問題などない。

化粧を落とされて寢臺で眠っているアビゲイルの顔は、やっとしよくなってきてはいるけれど、まだが無い。頬と首にかかる髪を、左手ででながら耳の後ろへ流してやった。右手はアビゲイルが袖口をしっかり握ってるままだからかせない。

艶のある赤髪よりも濃い赤の、真っすぐな長いまつがふるりと揺れて、ぼんやりと焦點の合わない金の瞳が薄く覗いて見えた。

「……だん、なさま」

「起きたか。合はどうだ?」

ゆっくりと目を瞬かせながらも、じっとかないまま記憶をたどっている。そのうち「あ」とつぶやいて、し眉が下がった。

「旦那様、私失敗しましたか。どうしてでしょう。ご飯食べすぎてないのに」

「いいや。失敗してないぞ。頑張ったな」

「はい。頑張りましたけども」

頬をでてやれば、その手を小さな手で摑んで、ひとしきり頬ずりしてから、そっと自分のつむじに導いた。そうか。そこもか。うん。頑張ったもんな。

通りに巻きのまだ殘る髪を梳きながらでる。手れの行き屆いた髪がらかで気持ちいい。

「ドレス替えたときに、コルセットも締めなおしただろう?タバサがいなくて侯爵家の侍にしてもらったんだってな」

「……お著替えはタバサではなかったです」

「うん。タバサは忙しかったからな。いつもよりコルセットがきつかったみたいだ」

アビゲイルは普段コルセットをしていない。必要ないほど細いのもあるが、見栄えよりも健康を優先していた。確かにうちにきたばかりの一年前よりはずっと健康になっているけれど、それは當初と比較しての話であって、いまだに虛弱ではあるのだ。なぜか本人は絶好調の元気いっぱいになっていると思っているが。

だからコルセットをするときには、整う程度にしか締めていないし、今日もそうしていたと聞いている。それなのにドレスだけを著替えている予定のはずが、大抵の貴族はぎちぎちに締めるものだと気をまわした侍が締めなおしていたと、倒れたアビゲイルの著替えをさせたタバサが靜かに怒っていた。

「旦那様がしたかった結婚式になりましたか」

「ああ、俺の妻はさすがに有能だ。ありがとう」

「はい!」

満足気にくふんと小さく鼻を鳴らし、アビゲイルはもぞもぞと寢臺の奧へとずれて俺との間を空けた。

「どうした?」

「ご褒を!」

「お、おう」

寢臺にしのりだして、いつも通り額に口づければ、ぽんぽんと自分がずれて空いた場所を叩いて違うという。あー、いやまあな、そりゃあ俺も初夜のやり直しを目論んでた。ああ、そうだとも。でもさすがにこの狀態でそれはない。ないのに、そうこられるとだな。そんなに目をきらっきらさせられてもな!あー!もう!

寢臺の空いた場所にり込んで、アビゲイルの首の下に腕を通して。

軽くれるだけの口づけをにひとつ、瞼にひとつ、頬にひとつ。

うっすら上がった口角にひとつ。

真っすぐに俺の目をとらえたままの金が、うっとりと溶けていく。

鼻と鼻を軽くり合わせて、またひとつ、ふたつ、をついばむ。

ほぉっと、好みのハーブティを堪能するときのため息をついたと思えば、すやぁっと安らかな寢息が続いた。

だろうな!うん!わかってた!

お久しぶりです豆田です。

ストックつくるのにお休みしますよ宣言したくせに案の定大したストックできなかった豆田です。ごきげんよう!

本日より二章を開始します。月・木の朝6時すぎくらいに投稿予定です。

どうぞまたよろしくおつきあいくださいませ。

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