《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》2 ほっぺのおいしいうしはみるくのおいしいうしとはちがううしらしいです

王都でのお披目はちょっと失敗しました。

旦那様は失敗じゃないって言ってくださいましたからいいのですけど、やっぱりちょっとだけ失敗だったと思います。本當なら領地でのお披目のために義父上たちと一緒に向かうはずだったのに、おなかを痛くしてしまったばかりに私たちだけ一日出発を遅らせたのですから。

今度コルセットをタバサ以外が締める時は、ふんっておなかに力をれることにします。私は同じ失敗をしないのです。

前にドリューウェット領へ向かった時は金だった麥畑も、見渡す限り春の緑です。

予定より一日遅れてしまいましたけれど、ちゃんとお披目の日までゆとりはあるので、前と同じにゆっくり馬車で向かっています。旦那様と二人一緒の馬車で、ロドニーとタバサは別の馬車です。家令のイーサンは今回もお留守番で殘念ですが、お土産を持って帰ろうって旦那様が言うのでそうしようと思います。何がいいかちゃんと帰るまでに考えなければなりません。

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向かいの座席に足をのせて寛ぐ旦那様の膝の上から眺める窓の向こうは、麥畑から草原へと変わっていきます。

なんだか四角いじのがたくさんいて、それらはのんびりと草を食んでいるようでした。図鑑でみたことあります。あれはもしかして。

「旦那様!あれ!あれが牛ですか!?白黒のと茶のがいます!」

「牛だな」

「ほっぺの味しい牛ですか」

「えーっと、多分、茶のがそう、かな。確か……」

「茶がほっぺの味しい牛……で違うんですね……さすが人間の牛。角もちっちゃい」

「何と比べてる。牛っぽい魔ってなにかいたか……?」

「泥蝸牛(マッドコクリア)います」

「大きくくくったな!?……角の形は似てるかもしれない、か?」

泥蝸牛は沼地にいる六つ足の魔です。大きな角や背骨が大きく飛び出てて、背中に巖をいくつも乗せたみたいになってますけど、の他の部分はぬるぬるしてるのです。あれはぐにぐにしてて味しくありません。牛ならイーサンも好きでしょうか。

「旦那様旦那様」

「おう」

「お土産に牛はどうでしょう」

「おみやげにうし」

旦那様は馬車の窓の外に目を向けて、それからまた私を見て。

「お披目の後は新婚旅行だ。王都に戻るまでに時間もたっぷりある。ゆっくり考えて選ぶといい。他にもきっと々あるぞ」

確かにその通りです。新婚旅行はドリューウェット領都から馬車で三日ほどの港町で過ごすのです。初めての海ですし、きっと見たことないものもたくさんあるに違いありません。

窓の外にみえる牛たちのきはとてものんびりとしています。飼われているからでしょうか。野生ならすぐに食べられてしまうにきまってます。

「はい。牛は歩くの遅そうですから帰りにします」

「やっぱり一頭まるごとか。うん、じっくりよく考えてくれ」

ドリューウェットのお城まで馬車で六日の予定ですから、途中は宿場町でお泊りします。前に行った時にも寄ったこの町は、酪農で栄えてると習いました。さっき見た牛たちもこの町の牛だそうです。

ロングハーストもかな領だったはずですが、ドリューウェットより小さな土地でしたので、酪農はそれほど盛んになりませんでした。といいますか、あそこは領地面積こそ伯爵領としてそこそこの広さはありましたけど、魔王の森が大きく占めていて、人間の手がっている部分はさほど大きくないのです。他領に比べて人口もないですし。

畑の大きさの割に多い収穫量がかさの理由です。あと小さめの鉱山もありました。領地経営のお手伝いしてましたからね。知ってます。

ドリューウェットは土地もたくさんあるし、海もあるし、人間もいっぱいいるそうです。だからきっと々なものがあちこちにあるのでしょう。葡萄とかサーモンジャーキーとか。

今日お泊りする宿は一階が食堂ですが、前にお泊りしたときはお部屋でご飯を食べました。食堂は平民が多くて賑やかすぎるからって。ちょっと遅い時間の到著だったからでしょうか。本當に賑やかです。香ばしいスパイスや脂の焼ける匂いがこもっています。味しそうな匂い。

「旦那様旦那様あれはなんですか」

「ピザのことか?あー、そういえば屋敷で出たことなかったか」

ホールからカウンター越しに廚房が見えるのです。料理人がぽーんぽーんって白いタオルみたいなのを空中で回してます。なぜ廚房でタオル干しますか。あ、くるくるってしました!くるくるって!え、あのタオルどんどん大きくなる!

気が付いたら廚房のよく見えるテーブルについてました。いつの間に。旦那様がもう注文もしてくださったみたいです。傷だらけだけど磨かれてがっしりとした丸テーブルの向かいではなく、私の橫に座った旦那様が「食べたいんだろう?」と笑いました。タバサたちは違うテーブルにいます。

「タオルです」

「ピザだ」

タオルじゃないらしいです。あれはピザ。パンの薄い奴だって教えてくださいました。

葉っぱがしゃきしゃきのサラダと、玉ねぎのスープをいただきながら、ピザが來るのを待ってると、旦那様の両手でも隠れないくらい大きな木のお皿が來ました。え、大きい。あ、でも薄い。ほかほかで湯気が立っています。薄黃のはチーズ?チーズの匂い!とろとろに広がったチーズの下から覗いている赤いのはきっとトマトで、あっ、ベーコンもある!

テーブルの真ん中におかれたピザの上に、金屬の丸い車を旦那様がころころとらせます。なんですかそれ!カッター?転がるそれをじっと見ていたら、私にもやらせてもらえました。でも切れてるんでしょうか。車型の刃が通り過ぎたところにまたチーズが流れて、切れてるのかどうかわかりません。教えられた通りに車らせ終えると、旦那様は私の取り皿に一切れ取り分けて、わあ、チーズがとろーんってびます!切れてました!

「手で持って食べていいぞ」

三角になったピザをぱくりと食べて見せてくれた旦那様は、な?と親指で口元を拭います。お行儀は気にしなくていいってことです。湯気も収まったのできっと熱くないだろうと、私もピザを持っ……あっあっチーズがっチーズが落ちます!慌ててピザの先から口にれたのですけど、びます。ピザと口の間のチーズがびます。これ、どうやったらこのびたチーズを口にれられるでしょうか……。

けなくなっていましたら、橫を向いて震えてた旦那様が、びたチーズをフォークですくってくれました。そのチーズはそのまま私の口にります。味しい!とろとろだったのに、ぎゅっとした歯ごたえもあります。トマトはドライトマトですね、濃い甘みでほっぺがきゅうってして、ベーコンの脂でまろやか!トマトソースは多分々スパイスとかハーブはいってます。にんにくがってるのはわかりました。

味いか」

「ふぁい!」

もう一枚きっと食べられると思いますって言ったら、「デザートのアップルパイがらなくなるぞ」って、それは!とても困ります!

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