《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》11 まだいっぽんしかたべられませんでした

ざぁざぁと風の走る音が耳に心地よいです。

森の中で丸くなって眠っていたころを思い出しますが、鳥の鳴き聲はみゃーみゃーと聞き慣れませんし、まだ嗅ぎ慣れない匂いも流れてきています。

けれど、しっとりと吸いつくようなのにあたたかくて、もっとふんわり私を包むみたいないい匂いもする。

穏やかな風に押されるままにゆらゆら揺れてる時と同じに、中どこもかしこもゆったり緩んで気持ちいい。

「……ん、起きたのか?まだ夜明け前だぞ」

もぞりといたら、低く響く、でもし眠たげで掠れた聲が頭の上からしました。

あたたかいのはやっぱり旦那様のおかげでしたけれど、いつもよりあたたかいのは寢を著てないからでしょうか。弾力のあるらかなにほっぺをすりつけたらぬるってしました。よだれ!また口のお行儀悪かったです!旦那様の肩と腕をこっそりお布団の端っこで拭きましたけど、ぶふぉって吹き出されたので、もしかしたらばれたかもしれません。

「旦那様」

「ジェラルド」

「ジェラルド」

「うん、なんだ?」

旦那様は時々ジェラルドと呼ぶようにって前からこっそり言ってはいたのですけど、私はどうしてもなかなか慣れないのです。だって旦那様ですし。私は妻ですし。

おでことおでこをくっつけて覗き込む旦那様の青は、いつもよりもっとらかい気がします。まだ眠いのでしょうか。せっかく早くベッドにりましたのに、結局眠ったのはもっと遅かったですし。

「船に乗るのです」

「覚えてたか……んー、ちょっと立ってみろ」

「はい!」

巻きついていた腕がほどけたので、ベッドの端まで転がってから降りましたら、すとんとそのまま床に座ってしまいました。旦那様は「だよなー」と笑いながら抱き上げてベッドの元いた位置に戻してくださいます。

「旦那様おかしいです。足に力がはいりません」

に負擔がかかるって言ったろう」

「からだにふたん」

「まあ、そういうものだ」

お布団が肩にもしっかりかかるように掛けなおしてから、ぽんぽんってして、それから私の頭が肩にのるようにきゅっとして、私のつむじに頬ずりをします。

「もうし眠ろうな。船は明日だ」

ちゅっちゅっとしてが掠める程度に重ねたままで言われて、ぽんぽんもされて、そうしたらとろとろと力が抜けてきま――あら?

「旦那様、何かごりっとしたのあります」

「そういうものなので気にしないように。起きて平気そうだったら市場に行くか」

「市場!」

「だからちゃんとを休めよう」

「はい!」

よし、と旦那様は髪を梳くようになでてくれます。

ふわふわしてあたたかくて、市場も行けるし、とても気分がよくて、するっとすぐに眠ってしまいました。市場にはまたうにとなまこがあるでしょうか。

次に目を覚ました時にはもうお晝に近い時間で、朝ごはん食べられなかったと思いましたけど、すぐにタバサが朝ごはんを持ってきてくれました。ガウンを羽織った旦那様が、なぜかご機嫌に鼻歌しながらベッドテーブルをセットしてくださいます。私もいつの間にか寢をちゃんと著てました。同じように鼻歌を追いかけたら、もっとご機嫌に笑ってサイドチェストにあるお花の飴をひとつ口にいれてくれます。ガラスのフードカバーをかけたお花の飴は、いつも必ずお部屋に飾ってくれているのです。パンやスープや果を、ベッドテーブルに並べてくれているタバサもにこにこしています。あ!そうです!

「タバサ!タバサ!私ちゃんと閨できました!」

「――っ、あ、あび」

「あらあらあらまぁまぁ!それはようございました」

「でもやっぱり習ったのとちょっと違「アビー!これ食べてみるか。バナナ」バナナ?」

旦那様が見たことない黃い皮の細長い実を見せてくれました。果し変わった甘い匂いがします。本當は食べ方のマナーもあるんだけどなと言いつつ、するすると厚みのある皮を手でむいてくれます。なんて簡単。あの皮は分厚くて食べにくそうですし、簡単にむけるのは便利でいいです。

タバサがなんだかじっと旦那様を見つめてますけど、旦那様は知らんぷりで皮がむけたバナナの白い実を、私の口に近づけてくれたので一口齧りました。もこもこ!噛んだららかで甘い!

味いか?」

二口目がまだ口にってましたので頷きました。味しい!

「……坊ちゃま、まさかと思いますがご無「してない。南方の果でな、今までもドライフルーツでってきてはいたんだが、船の改良で航海日數が短されたから、最近は生のままでも運ばれるようになったんだ。俺が手伝っているドリューウェットの事業も関わってるんだぞ」」

「旦那様のお仕事!」

「気にったのなら、王都にも屆くように手配しような」

「はい!イーサンも食べれます!旦那様、次は私が皮をむきたいです」

「奧様、朝食が先ですよ」

まだ一本の半分殘ってますけど、パンとオムレツとスープを食べるまでお預けされました。仕方ありません。タバサの言うことはきかないといけないのです。

朝食を食べた後に、バナナの殘り半分を食べたらおなかいっぱいになってしまいましたので、旦那様が食べるバナナの皮をむいてさしあげました。簡単!

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