《【書籍化・コミカライズ】さないといわれましても~元魔王の伯爵令嬢は生真面目軍人に餌付けをされて幸せになる》14 なにかをえらばなくてはならないことはかならずおきるものなのです

苺飴の薄い殻となった飴を舐めながら歯でこそいでいくと、さくっと酸っぱい苺が出てきました。飴で甘くなった口の中が酸っぱさで一瞬きゅっとなります。溶けた飴の甘さと爽やかな甘酸っぱさがちょうどいいじ!味しい!でも苺は一口で食べられちゃう大きさですし、あっという間になくなってしまいました。木串に垂れた飴が固まってついているのでそこをちろちろ舐めながら考えます。

「旦那様。さっきのケバブは何のおですか」

「ん?ああ、あー……………………羊だな」

ロドニーと何かお話していたようですけど、旦那様はちゃんと教えてくださいました。羊。知っています。図鑑で見ました。そしてドリューウェットでも飼ってる地域があるのも習いました。牛がいたところの近くです。地図では近かったと思います。

「帰り道に羊飼ってるところ通りますか。牛のとことは違いますか。近いですか」

地図で見るのと本當に馬車で移するのとでは、方向とか距離とかが違ってじるのを來るときに気が付きましたので、旦那様にちゃんと確認します。森とか山の中ならびしっとわかるのに。びしっと。

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「……近い、かな。いやどうだったか」

「何言ってるんですかー主。牛って、あの放牧していたところでしょうー?隣街じゃないですか」

「ば、ばっかおま」

近いということは、お土産に買って帰れるということです。

「旦那様。イーサンは羊も好きでしょうか」

「やっぱりそうくるか……」

「え、奧様、父がどうかしましたか」

「ほっぺの味しい牛はイーサンも好きだと思うのですけど、あのおっきなおもきっとイーサンは好きなんじゃないかと思います」

「おっきなおは、羊じゃなくても……まあ、ええ、好きだと思いますよー。年の割には健啖家なんでー」

「旦那様」

呼びかけると旦那様はきりりとしたお顔で木串を持つ私の手を両手で包みました。

「アビー、どっちかだ」

「どっちか」

「え、え、なんの話ですか」

「そう、牛と羊、どっちかだ」

「どっちか……」

それは悩みます。どっちがいいでしょう。牛のほうが羊より大きいはずです。図鑑ではそうでした。でも牛の一番味しいところはほっぺです。ほっぺはちょっとしかありません。そうすると羊のほうが……旦那様とロドニーが何かこしょこしょお話してますけど、ロドニーは牛の方が好きなのでしょうか。でもイーサンへのお土産だから。

「丸ごと!?丸ごとって言いました!?今!」

「う、うるさい!あれだ、あとで送ってもらえばいいだろ!」

「旦那様。羊は足速いですか」

「連れて帰る気満々じゃないです!?」

「アビー、ちょっと羊の足の速さは俺にはわからんが、屋敷に送ってもらえるように手配」

「え!駄目です!お土産はただいまと一緒です!」

「だ、駄目なのか!?だ、だがな、牛はともかく羊を荷臺に乗せるとしても」

「だって旦那様はいつもただいまってするときにお土産をくれます」

お仕事から帰ってくると旦那様はお土産をくれて、それはいつもとても楽しい。

でもお土産にいただいたお菓子と同じのを、おやつの時間用に買ってきてもらってもちょっと違ったのです。味しいのは同じだけど、ちょっと違います。

「お土産は旦那様のただいまと一緒だから楽しいのです」

そう教えてあげましたら、旦那様は両手で顔を押さえてベンチの背もたれにおでこをくっつけてしまいました。ロドニーは「丸ごと……」って呟いていて、護衛たちはこっちを見ていませんけど、肩がし震えています。

「――っまだ、時間はあるからゆっくりどっちか考えなさい」

「はい!」

ノエル邸には、ドリューウェットよりはずっとないけれど、使用人はいっぱいいます。庭師のお爺は飴をくれるし、料理長はその時つくってる料理の味見をさせてくれるし、キッチンメイドもランドリーメイドも休憩の時のおやつを一口わけてくれます。一口なのはおなかいっぱいにしちゃうとタバサに怒られるからです。

だから屋敷でお留守番してる使用人にもお土産は必要です。そういうきづかい?も主人の仕事だって義母上も言ってました。

「旦那様!あのきらきらした貝殻はどうでしょう!」

屋臺の屋の端にぶら下がる紐には、いくつも貝殻が結わえられて揺れています。貝殻の裏側が虹みたいにゆらゆらぴかぴかってました。食べを扱う屋臺にはなぜか大飾ってあるのです。何かの目印かもしれませんけど、ぴかぴかだからちょうどいいのでしょう。

屋敷の者たちは私と同じできらきらとかぴかぴかしたのは好きです。私がお飾りとかつけるとみんな可いとか綺麗っていいますから、きっとそうです。

「あー、あれかあ……うん。貝殻の細工を扱ってるとこあったよな」

「……っ、えぇ、勿論。評判のいい店もおさえてます」

「でも、あれはぴかぴかで」

「アビー、殘念だがあれは売りじゃない……あれはほら、こう、ぴかぴかで……鳥避けになるから、なくなったら店も困るだろう。貝殻細工の店の貝もちゃんとるぞ」

「そうですか……わかりました!私選べます!」

お店ではやっぱり全部同じに見えましたけど、選ぶのを旦那様とロドニーが手伝ってくれました。旦那様がここからここまでと決めて、ロドニーはそこから一種類ずつって。だから手前にあるのを選びました。ばっちりです!

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