《【書籍化進行中】斷罪された悪役令嬢は、元兇の二人の娘として生まれ変わったので、両親の罪を暴く》17.狂のヘレナ
とても痛々しい、というのがセシリアの抱いた想だった。
三十代半ば、見た目ならば四十代にすら見える、くたびれたが、十代の子學生のための制服を著ているのだ。
それは単に似合う似合わないといった、見た目だけの問題ではない。著たいから著ているといった前向きな気持ちがあれば、こうもおぞましさはなかっただろう。
ヘレナからは、現実から目を背け、かつての輝きを取り戻そうと必死にあがいている、いわば狂気のようなものがうかがえた。
「ヘ……ヘレナ……?」
上った聲がローガンの口かられた。
だが、ヘレナはローガンにちらりと視線をやると、首を傾げる。
「……殿下のご親戚の方? まるで、殿下がそのままお年を召したようだわ」
中まで學生時代に戻ったかのように、ヘレナは不思議そうに呟く。
誰かわかってもらえなかったローガンは愕然としたまま、何も言えないようだった。
「でも……確か、殿下と私は結婚して、子どもが……いいえ、夢よね。長い、長い夢。だって、私は學園に通って……あら、アデラインさま?」
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獨白していたヘレナだが、ふとセシリアに気づくと目を大きく見開いた。
しかも、呼んだのはセシリアではなく、アデラインの名だ。
驚くセシリアの元に、ヘレナは安心したような笑みを浮かべて近づいてくる。
「ああ、よかった、生きていらしたのね。私たちののせいで命を絶ってしまうなんて……悪い夢を見たものだわ。アデラインさまがご無事で本當によかった」
無邪気な笑顔を浮かべて、ヘレナは椅子に座るセシリアの前で屈み、その手を取る。
かさりと乾いたが伝わり、セシリアはぞくりと背筋に冷たいものが走る。
どうやらセシリアのことをアデラインと勘違いしているようだ。
娘のことすら忘れてしまった薄者と取るべきか、それともアデラインの生まれ変わりであることを見抜いた慧眼と取るべきか、セシリアにはわからない。
だが、芝居ではなく、本気でそう思っているらしいヘレナの手を振りほどくことは、セシリアにはできなかった。
どうするべきか迷っているうちに、ヘレナはそっと手を離して立ち上がる。
「殿下、殿下はどこにいらっしゃるの?」
そして、ヘレナは再びローガンを探し出す。
當のローガンも、セシリアも、エルヴィスすらもが、何も言えずにヘレナを見守る。
「私、よいことを思いついたの。アデラインさまに第二妃になっていただけばよいのだわ! 過去にそういった事例があったと聞いたの。アデラインさまなら、公務をそつなくこなせるもの。そうすれば、私は殿下の隣で微笑んでいるだけでよいわ! このことを早く殿下にお伝えしないと……!」
うろうろと歩きながら、天啓を伝えるかのように晴れがましく、ヘレナは聲を張り上げる。
しかし、その容は非常に勝手なものだった。
第二妃とは正式な王妃に健康上の問題があり、かつ後継者となれるような近しい王族がいない場合にのみ認められる、特例だ。
決して、公務の肩代わりをさせるための存在ではない。仮にアデラインが塔で亡くならず、そのまま生きていたとしても、認められなかっただろう。
「殿下はいつも、アデラインならこれくらい簡単にできた、なんてアデラインさまのことばかり。頑張れって口では応援してくださるけれど、口だけなんですもの。こんなことで喧嘩したり、周りから々言われるくらいなら、アデラインさまが第二妃になる程度のこと、我慢しますわ」
だが、続く言葉でヘレナも追い詰められていたのだろうと、セシリアは察する。
田舎から出てきたヘレナは、ローガンだけが頼りだったはずだ。
ところがローガンは、ろくにヘレナを支えようとしなかったのだろう。
周囲からはいじめられ、頼りのローガンからは見放されて、心を病んでいったようだ。
もっとも、王太子妃となるのが大変なことだとは、わかっていたはずだ。
があれば乗り越えられると思っていたのだろうが、そうではなかったらしい。
しかも、第二妃にしようとしているアデラインの気持ちや立場といったことは、一切考えていないようだ。
哀れといえば哀れなのだが、その勝手さに同はできないと、セシリアは冷めた目でヘレナを見つめる。
「だっ……誰か! 早くヘレナを連れていけ!」
慌てながら、ローガンがぶ。
すると、離れて様子をうかがっていた侍たちが、ヘレナに近寄っていった。
「ヘレナさま、殿下はあちらにいらっしゃるそうですよ。行きましょう」
「あら、そうなの」
侍に促され、ヘレナは素直に歩き出す。
ヘレナが部屋を出ていくと、沈黙が周囲を包んだ。
「そ……その……ヘレナは々病を患っているんだ……」
あらぬ方向を見ながら、ローガンはごまかすように口を開く。
「それは……ご心痛のほどお察しいたします。確かに、王宮周りは々空気が淀んでいますからね。空気の良いところでご靜養なさったほうがよろしいかもしれませんね」
エルヴィスはじた様子もなく、答える。
「そ……そうだな。それよりも、婚約誓約書に署名をしてしまおう。こういうことは、早いほうがよい」
焦りながら、ローガンは話を切り替える。
ヘレナのせいで、せっかく得ようとしている後ろ盾を失いかねないとでも思っているのかもしれない。
正式な婚約を急ごうとするローガンだが、それはセシリアもエルヴィスもむところだ。
用意された婚約誓約書に、それぞれ署名をしていく。
必要なのは當人と、その家の當主の署名であるため、この三人が署名すればそれで完となる。
あとは神殿に提出するだけだが、慣例として新郎側の家の當主が提出するため、エルヴィスが婚約誓約書を持つ。
「これで、婚約は結ばれた。では、僕はこの後に急ぎの用事があるので、これで失禮する……」
ローガンは逃げるように部屋を出ていった。
どことなく白けた雰囲気が漂う中、それでも婚約は結ばれたのだった。
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