《【書籍化進行中】斷罪された悪役令嬢は、元兇の二人の娘として生まれ変わったので、両親の罪を暴く》41.幸福な時間の終わり

ローズブレイド公爵領の屋敷には、平穏が戻ってきた。

以前のように屋敷や庭を自由に散策できるようになり、セシリアはようやく窮屈な思いから解放された。

ほんの數日間だけだったが、王都にいるときのような息苦しさだったのだ。

もっとも、それはこの地で楽な空気に馴染んでしまったためかもしれない。

穏やかな気候や味しい食べといった素晴らしいものに囲まれ、周りに人の探しに明け暮れる険な人間もいない。

エルヴィスの仕事の手伝いを始めたが、それも大変ではあっても、王都でじた閉塞とは無縁だ。

午後の穏やかな時間に、エルヴィスと一緒にお茶を飲むのも日課となっている。

今日も、ゆったりとした楽なドレスでセシリアはお茶を楽しむ。

アデラインの生きていた時代は、普段著でももっとしっかりとしたドレスが主流だったが、今は著心地が良く優雅なものが好まれている。

ちなみにこの流行の発端となったのは、王太子妃ヘレナが苦しいドレスを嫌がったことらしい。楽なドレスを作れと命じたという。

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まるで下著だと眉をひそめる年配者も多かったが、若い令嬢を中心にれられ、定番になっていったそうだ。

セシリアもこのドレスに関しては、よくぞ広めてくれたとヘレナを評価している。

こうしたことで支持者を得ていけばよかったものを、ヘレナはそういった立ち回りが苦手だったらしい。

もったいないことだと、セシリアは苦い思いが浮かぶ。助言してくれる者もいなかったのだろう。

療養という名目で未だ幽閉されているヘレナとは、しばらく顔を合わせていない。

かけらも會いたくはないが、ドレスのことからふとヘレナを思い出したセシリアは、そっとため息をらす。

「國王夫妻は相変わらず、あちこちに視察に赴いているそうです。ですが、王位代の気配はないようですね」

お茶を飲みながらエルヴィスが持ち出した話題も、王家に関することだった。

「王位代が急がれていないのは、こちらの狀況としては歓迎すべきことなのでしょうけれど……大丈夫なのかしら……」

セシリアは思わず、不安の聲をらしてしまう。

相変わらず、各地では災害が起こっているようだ。たいした被害がないのは、やはりローズブレイド公爵領だけらしい。

ちなみに、隣國王ケヴィンが連れてきた技者は、おかしなきもなく、熱心に取り組んでいるという報告があった。その甲斐あってか、これまで以上に被害が抑えられているという。

「國王がこれほど王位にしがみついているとは、々予想外でした。後継者を決めかねているのかとも思いましたが、在位五十周年まで持たせたいらしいです」

王位代までの時間が稼げるのは、セシリアとエルヴィスの目的のためには良いことだ。

しかし、各地で災害が起きている狀態で在位年數を気にするなど、のんきなことだとセシリアは呆れる。

「さすがに側近からも、王位代の準備を進めるよう、ほのめかされているそうですが、それでかえって意固地になっているところもあるようですね。死ぬまで王位を譲らないくらいの勢いだそうです」

「なんというか……困った方ですね……」

ずっと王位を手放さないのも、今となっては目的のために困るのだが、それ以上に國王としての在り方が問題だ。

國民のことよりも、自分の在位年數が大切とは、セシリアは頭が痛くなる。

「さすがに、もうし時間が経って頭が冷えれば、ましになるとは思いたいですが……。それと、第二王子との話し合いですが、々難航しています。第二王子は乗り気なのですが、第二王子妃が渋っているようなのです」

「マリエッタ叔母さまが渋っているのですか……そういえば、前に警告じみたことを言われたことが……」

以前、エルヴィスとの婚約がり立ったとき、セシリアはマリエッタから祝いの言葉を贈られた。

だが、それはローズブレイド公爵夫人という立場で満足し、それ以外を一切むなといった警告にもけ取れるものだったのだ。

「警告、ですか。そういえば、前に聞いたことがありましたね。……やはりハワード家にも何かが伝わっているのでしょうか。それとも、妃に伝えられるというものか……何にせよ、最も何を考えているか読めない相手ですね」

エルヴィスは眉を寄せ、息を吐く。

「もうじき學園の休暇も終わりますし、そろそろ王都に戻ることになります。ここに滯在することによる効果も得られましたし、戻っても問題ないでしょう」

「……もう、そんなに経つのですね」

王都に戻ると聞いて、セシリアは気分が沈んでいく。

ローズブレイド公爵領での滯在は快適すぎた。そのため、時間が流れていくのもあっという間だ。

幸福な時間も終わりかと、寂しさに包まれる。

學園に通うのは嫌ではない。休暇が終わるのは殘念だが、それは割り切れる。

だが、王太子宮に戻るのだと考えると、セシリアの心には重りがずっしりとのしかかってくるようだ。

「そこで、王都に戻ってからなのですが、ローズブレイドの邸宅から學園に通うことにしませんか? 王太子宮では、王太子や第二王子が簡単に接できてしまいます。あなたを守るためにも、王太子宮から離れたほうがよいと思うのです」

「それは願ってもないことですけれど……大丈夫なのですか?」

「あの王太子なら、それらしい理由を並べれば納得するでしょう。正式に結婚する前から婚約者の家に滯在してしきたりを學ぶことなど、珍しくもないのですし」

王太子宮に戻らず、ローズブレイド公爵邸で暮らすのだと思うと、セシリアの心はすっかり軽く晴れ渡っていく。

セシリアにとって何も良い思い出がない鬱な場所に戻らなくてすむのもそうだが、何よりもエルヴィスと一緒にいられる時間が多くなるのが嬉しい。

「……もっともらしいことを述べましたが、一番の理由は、あなたと一緒にいたいからですよ」

エルヴィスは、まるでセシリアの心を読んだかのようにそう言って、微笑みかけてきた。

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