《【書籍化進行中】斷罪された悪役令嬢は、元兇の二人の娘として生まれ変わったので、両親の罪を暴く》45.茶番

エルヴィスは警備兵に監視されたまま、王城にった。

先ほど引き離されたセシリアのことが気にかかるが、彼に危害を加えようという様子はなかった。おそらくは幽閉されるのだろう。

不安だっただろうに、心配させないようにと気丈に振る舞っていた姿を思い出すと、エルヴィスの心にはしさがわき上がってくる。

早く片付けて迎えに行かねばと、エルヴィスは気を引き締める。

通されたのは、第三謁見室だった。

豪華ではあるがさほど広さはなく、國王が人數と謁見するときの部屋だ。

第一謁見室に呼ばれたのならば、大勢の臣下を並べて糾弾する準備が整ったということだっただろう。だが、まだそこには至っていないようだ。

エルヴィスは空っぽの玉座を眺めながら、國王の狙いと落としどころについて思いを馳せる。

ややあって、國王が現れた。

どっしりと玉座に腰掛けるが、エルヴィスのことは立たせたままだ。

神の代理人であらせられる國王陛下にご挨拶申し上げます」

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うやうやしくエルヴィスが禮をすると、國王は鷹揚に頷く。

「うむ、ローズブレイド公爵とは婚約披の場以來か。セシリアのことをまことに大切にしていると聞く。二人がローズブレイド公爵夫妻として國を支えてくれるのなら、これほど心強いことはない」

「セシリア姫のことは心からしております。臣下としてこの國を支えることは、何よりの喜びにございます」

國王の口から出たのはお決まりの挨拶ではあるが、すでに探りがっている。

エルヴィスは臣下という言葉を強調して答えた。王位を奪うつもりはないという意思表示だ。

「ローズブレイド公爵の忠誠は喜ばしく思う。だが、々気になる話を聞いたものでな。確認したいと思い、來てもらったのだ」

探り合いを捨て、國王は率直に話を切り出した。

いきなり本題かと、エルヴィスは表面上には出さないものの、し驚く。どうやら國王はかなり焦っているようだ。

「巷ではセシリアの王即位をむ聲が高まっていると聞く。だが、セシリアはおとなしく、そのような重責を背負えるようなは持ち合わせておらぬ。自らむとは思えぬ故、誰かに踴らされているのではないかと心配なのだ」

「民衆とは無責任に騒ぎ立てるものでございます。我がローズブレイド領に災害の被害がないことから、セシリア姫のご威であると広まったのでございましょう」

「それが気にらぬ」

むくれた顔で、國王は一言吐き捨てる。

「一介の王、しかも王家の末席に過ぎぬ小娘が、國王である余を差し置いて威だなどと……民衆の愚かさには吐き気がする」

ぶつぶつと呟く國王を眺めながら、エルヴィスは心呆れ返っていた。

自分よりもセシリアに人気があるのが、気にらないということか。

ここのところ、度重なる災害により國王の人気は低迷している。そこに、セシリアが救世主のように言われているのだから、面白くないのだろう。

気持ちとしてはわからなくもないが、國王という立場でそれをあからさまに出してしまうのは、いかがなものだろうか。

「そなたがセシリアを使い、そうなるように仕向けたのであろう。セシリアを王とし、己が王配として権力を握るためか? それとも、セシリアを足掛かりとして自が王となるつもりか?」

取り繕うことをやめ、國王は敵意をむき出しにしてエルヴィスを睨みつける。

「滅相もないことでございます。私ごときに至高の座、あるいはその傍らが分不相応であることは、己自がよく存じております。私のみは、するセシリア姫と共に、臣下としての道を正しく歩むことでございます」

エルヴィスは心外だといった表で、切々と訴える。

実際のところ、エルヴィスは王配の座も國王の座も興味はない。セシリアを王にというのも、過去の事件を調査するために都合がよいからであって、権力の座に固執しているわけではないのだ。

それよりもエルヴィスの願いは、過去のしこりを解消し、セシリアと共に幸福な人生を築いていくことである。

「……ならば、そなたに叛意はないと申すか」

しだけ、國王の態度が和らいだ。まだ顔は不機嫌そのものだったが、聲が勢いを失っている。

「さようでございます。私は……」

「僕からも尋ねたいことがある!」

畳みかけようとエルヴィスが口を開いたところで、それを遮るように扉が開け放たれた。そして、王太子ローガンが姿を現す。

突然の登場だったが、國王はローガンを問いただすこともなく、ただ黙っている。

「ローズブレイド公爵領の被害がないのは、災害への対策を行っているからというではないか。それをセシリアの手柄であるかのように吹聴したのは、叛意があるからに他ならないだろう!」

先日は言いくるめられて帰っていったローガンが、再び糾弾してきた。

しかも今回は、前回のような思い込みの論ではなく、事実を持ち出してきている。

いったい何があったのかと、エルヴィスは訝しむ。

「私自が吹聴したわけではございません。民衆の間から……」

「うるさい! 黙れ! よくも僕を騙したな! 父上、この件に関しては徹底的に調査を行い、爵位を剝奪するべきです!」

ローガンは大聲で喚きたて、エルヴィスの聲を打ち消す。

禮を失した暴な態度ではあったが、國王は咎めることなく頷く。

「うむ、そのとおりだ。衛兵! ローズブレイド公爵を懺悔の塔に連れていけ!」

國王の命令で、部屋の前に控えていた衛兵たちがエルヴィスを取り囲む。

最初から仕組まれた茶番だったかと、エルヴィスはため息をらす。

エルヴィスを懺悔の塔に放り込むのが目的だったのだろう。

だが、それにしてもきが急すぎる。

罪狀も曖昧で、勢いで押し切っているだけだ。この程度のことでローズブレイド公爵を懺悔の塔送りにするなど、を引き起こすようなものだろう。

國王と王太子の背後に、何者かの影をじる。

もっとも、今ここで暴れたところで、どうにもならない。エルヴィスはおとなしくれる。

衛兵たちはエルヴィスを拘束することもなく、ただ共に歩き出す。従順な態度でいるためではあるだろうが、それでも彼らのほうが目の前の國王や王太子より、よほど高貴さがうかがえた。

「當然、セシリアとの婚約も破棄だ! おとなしく沙汰を待つのだな!」

部屋から出ていくエルヴィスの背中に向け、勝ち誇ったローガンの聲が響く。

いつかは場もわきまえず、大勢の前で婚約破棄を宣言したというが、閉ざされた場所で言うとは、しは長しているらしい。

エルヴィスは振り返ることなく、冷笑を浮かべた。

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