《【書籍化進行中】斷罪された悪役令嬢は、元兇の二人の娘として生まれ変わったので、両親の罪を暴く》58.たどり著いた黒幕

王都の付近は、暗闇に包まれていた。

空が黒い雲で覆い盡くされ、晝も夜もわからない。

本來はまだ明るい時間帯でありながら真夜中のようで、明かりが燈されている。

神が狂ったように嘆いているわ……」

セシリアには、そのことがはっきりとじられた。

心に直接訴えかけてくるように、嘆きが響く。

「……私もおそらくは限定素質の持ち主なのでしょうが、不吉なじはするものの、そのようにはわかりません。やはり、それが全素質の力なのでしょうか。正直なところ、あなたをこれ以上危険な目に遭わせたくはありませんが……」

わずかに眉を寄せながら、エルヴィスが呟く。

セシリアは途中の宿でを清め、ボロボロになった時代遅れのドレスも、今風のドレスに著替えていた。傷もほとんど治っていて、傷薬の効果に心する。

それでも、エルヴィスがセシリアを見つめる目は、心配そうだ。

だが、セシリアは王都に行かねばならないとじていた。

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王都からは逃げ出す人々もいるようだ。

悲痛な聲が上がり、混狀態に陥っている。

出て行くのではなく、ろうとするのはセシリアたちくらいのものだった。

「まさか……ローズブレイド公爵閣下と……王殿下! よくぞお戻りくださいました!」

王都のり口で、駆け寄ってきた警備兵が歓喜の聲を上げる。

「王殿下がお戻りになられたぞ!」

「王さま! どうかお助けください!」

「セシリア姫さま! 我らの聖さま!」

たちまち、セシリアを呼ぶ聲が響き渡っていく。

熱狂的に歓迎され、セシリアは戸う。エルヴィスも、狀況がよくわからないようだ。

そこに、馬に乗った騎士が近づいてくる。第二王子の部下だと、エルヴィスがセシリアに囁く。

「王殿下、公爵閣下、どうぞ神殿へいらしてください。向かいながら、ご説明いたします」

第二王子の部下は、馬車に馬を寄せるとそう言った。

エルヴィスは頷き、神殿に向けて馬車は走り出す。

「ジェームズ殿下は、國王と王太子を捕らえました。國王が墓を掘ったのです。追い詰められつつあった國王は、災害を鎮めればよいのだと、神の加護を復活させようとしました。しかし、それが神の逆鱗にれたようで……」

そう言って、第二王子の部下は空を見上げる。

「災害を鎮めるどころか、王都は暗闇に包まれることになりました。明らかな怪異に、それまで國王に従っていた者たちも翻意したのです。彼らによって、國王と王太子は捕縛されました」

國王と王太子を制圧するという目的を達しながら、第二王子の部下の聲には誇らしさといったものは、かけらもうかがえない。

「ですが、國王を捕らえても怪異はおさまりません。王家の法を知るジェームズ殿下でも、もはや神の怒りを鎮めることは葉いませんでした。ですが、王殿下ならば可能がある、と……」

そう言って、第二王子の部下はすがるような眼差しを向けてくる。

怪異をおさめるなど、セシリアは知らない。

だが、神殿が近付いてくるにつれ、神の嘆きがより鮮明にじられるようになっていく。

エルヴィスは第二王子の部下の言葉に考え込み、眉間に皺が寄っていたが、それだけだ。神の嘆きはじ取っていないらしい。

人々から熱に浮かされたような聲を浴びせられつつ、馬車は神殿に到著する。

すると、すでにセシリアが戻ってきたことが伝えられていたのか、神や貴族たちがずらりと出迎えていた。なりからして、上位の者たちだろう。

「最も力ある王族として、早く神の怒りをお鎮めください! 愚かな國王とは違うのだと、お示しください!」

「暗愚の王に代わり、どうか王とおなりください! そして一刻も早く國にを!」

「今こそ、聖としてのお力を我々に示すときです! 愚王など足元にも及ばない、王にふさわしい姿をお見せください!」

好き勝手なことを言う神や貴族たちに、セシリアは苛立ちを覚える。

民衆からすがられたときは戸ったものの、このような不快はなかった。

今、目の前にいるのは、これまでセシリアのことを知りながら、顧みなかった者たちだ。民衆とは違い、その気になればセシリアに手を差しべられただろう。

セシリアが苦しんでいたときには誰も助けようとしなかったくせに、セシリアが彼らを救うのは當然のことと思っているようだ。

「……隨分と勝手だな。國王を罵っている者たちの中には、もともと國王派だった顔もなくないようだが、立派な忠誠心をお持ちのようだ」

エルヴィスが嘲ると、彼らは言葉につまる。

「こ……こちらをご覧ください!」

無視して進もうとしたところで、セシリアとエルヴィスの足下に、一人の男が突き出された。

それは縄をかけられた王太子ローガンだった。聲を立てられないよう口に布を押し込まれた彼は、怒りと屈辱に満ちた眼差しをセシリアに向けてくる。

「私どもは、元から反國王派でした! 王殿下への忠誠の証として、癡れ者の王太子を捧げます! どうぞいかようにも……!」

貴族たちの一派が、そうしてを売ろうとする。

だが、セシリアの心は晴れない。それどころか、暗く沈んでいく。

「……ヘレナは、死にました」

セシリアは、ローガンに向けて一言だけ発する。

すると、怒りと屈辱に満ちていた目が、驚愕に見開かれた。聲を出せるのなら、まさか、何故だ、とでも言っていただろうか。

微笑みがセシリアの顔に浮かんでくる。

「あなたがんでいたことでしょう?」

優しく囁くと、ローガンがをよじり始めた。違う、と言っているのだろう。

ローガンの目に宿っていた激は消え、焦りや恐怖といったものに取って代わられている。彼は地面に突っ伏すと、震え始めた。

セシリアはローガンから目を離すと、歩き出した。エルヴィスと共に神殿の中にっていく。

や貴族たちは黙り込んで道を空け、呆然と二人を見送った。

神殿の中は靜まり返っていたが、セシリアの心に屆く悲痛なびは、より強く訴えかけてくる。

誰もいない廊下を、セシリアは奧へ奧へと進んでいく。

道は知らなかったが、嘆きが伝わってくる方向はわかる。そちらへと向かっていくと、やがて大きな扉の前にたどり著いた。

扉の前には、憔悴しきった様子で床に座り込んでいるジェームズと、凜と立って待ち構えているマリエッタがいた。

「マリエッタ……叔母さま……」

セシリアは、憤りと憎悪がに渦巻いていく。今にもあふれ出しそうな激をこらえ、拳を握り締める。

目の前にいるのがアデラインを殺し、セシリアも殺そうとした張本人だ。

ようやくたどり著いたと、セシリアは黒幕に向き合った。

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