《【書籍化進行中】斷罪された悪役令嬢は、元兇の二人の娘として生まれ変わったので、両親の罪を暴く》65.二人の始まり(完)
早々と王を退位したセシリアだったが、そのまま簡単に解放されることはなかった。
天変地異はおさまったものの、災害の危険は殘っている。
國王と王太子が失腳し、第二王子であるジェームズが王位に就いたことによる制の変化もある。
セシリアは殘った王族の一人として、また神と直接対話した者として、働かざるを得なかった。
神の加護を失ったことにより、様々な対策が必要となってくる。
ローズブレイド公爵領は災害対策が行われているので、それを國全に広めることで、災害への備えはひとまず目処が立った。
だが、それだけではない。他國からの侵略にも備えねばならない。
今は最も可能の高い隣國ローバリーが混狀態だが、十年後にどうなっているかは不明だ。
やるべきことは山積みだった。
これから、この國は真価が問われることとなる。
セシリアはふと、もしこの國が滅ぶことがあれば、マリエッタへの復讐になるのだろうかと思い浮かぶ。
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だが、すぐにその考えを打ち消した。
いくら良い思い出がほとんどないとはいっても、セシリアの生まれた國だ。できることなら、神の加護がなくとも立派な國として続いていってほしい。
エルヴィスがローズブレイド公爵領をいつでも獨立させられるよう、こっそり準備を進めていることは知っているが、それはそれだ。
それでも、出だしの最も忙しい時期はどうにか乗り越えた。
ようやくセシリアは自分の周りに目を向けることができるようになってきた。
「セシリア、卒業おめでとうございます」
「ありがとうございます。でも……卒業試験って、あんなに簡単ですのね」
學園の卒業もその一つだ。
今は早期卒業制度がある。最初の頃はなかったが、十年ほど前にできたという。
セシリアはこの制度を利用して、無事に卒業試験に合格し、めでたく卒業となったのだ。
もっとも、學園に通う最も大きな目的が、貴族間での人脈作りであるため、この制度を利用する者は滅多にいない。
「これで、結婚式の準備を進められますね」
エルヴィスに囁かれ、セシリアはし恥ずかしくなりながら頷く。
滅多に利用者がいない早期卒業制度を利用したのは、このためだった。
二人とも、早く正式に結ばれたかったのだ。
しばし二人で見つめ合った後、セシリアはそっと目を伏せる。
「実は……私には自分以外の、ある人の記憶がありました」
ふと思いついたように、セシリアはさらりと口を開く。
言うのなら今だろうという気がしたのだ。
「……そうでしたか」
頭がおかしいと思われても仕方のない突然の発言だったが、エルヴィスは何ら疑う素振りも見せずに頷いた。
やはりエルヴィスは気付いていたのだろう。
「でも、神の怒りを鎮めたとき、その人の記憶は失いました。あのとき、封じられていた神と一緒に、その人も空に帰っていったのです」
空に帰っていったとは言いつつ、セシリアは未だに時々守られているような気配をじることはあった。
『空に帰るまでのしの間、守ってあげる』と言っていたような気はするが、まだ空に帰っていないのか、それとも殘り香のようなものかは、よくわからない。
「……実は、私は最初にあなたとお會いしたとき、ある人の面影を見たのですよ。たまたまし似ていただけだろうと思いましたが、その後もあなたと話していると、その人の記憶があるのではないかという気がしてなりませんでした」
エルヴィスは懐かしそうに目を細める。
「もしや、ある人の生まれ変わりか、あるいは何かの拍子に記憶がり込んだのか……疑問に思いましたが、あなたと共に過ごしていくうちに、どうでもよくなっていきました。私は他の誰かではなく、セシリアという一人のをしたのです」
まっすぐにセシリアを見つめ、エルヴィスは真剣な表で囁く。
「あなたが、その記憶を持っていようと持っていまいと、どうでもよいのです。私は今のあなたをしているのです」
「エルヴィス……」
本當にセシリア本人のことをしてくれているのだと、に喜びが広がっていく。
セシリアはエルヴィスを見つめ返しながら、うっすらと涙がこみ上げてきた。
「それと……その人が神と共に空に帰っていったというのは、とても喜ばしいことです。無念を晴らすとは言いつつ、それは私の自己満足に過ぎないことには気付いていました。でも……本當の意味で、救われたように思います」
エルヴィスはさすらじさせる笑顔を浮かべた。
やや寂しそうながらも優しい表だ。セシリアがアデラインの記憶を失ったときの覚に近いのかもしれない。
これでやっと、彼は背負わされた咎から解放されたのだと、セシリアは慨深さがわき上がってくる。
「ただ……その記憶を失ったということは、ローズブレイドのしきたりといったこともお忘れでしょうか?」
「いえ、その記憶で一度思い出したことは、自分の記憶として覚えているのです。ローズブレイドのしきたりといったものも覚えています」
かつてはセシリアの中にあり、いつでも読めたアデラインの生涯という本は、今はもう読むことはできない。
しかし、一度読んだ箇所はセシリアの記憶として殘っているのだ。
罪を暴くためにアデラインの記憶は有用だと思い、記憶が蘇ったときからなるべく思い出そうとした。そのため、大のことは一度思い出しているといってもよい。
実は今のエルヴィスが聞いたら、壁に頭を打ち付けながらび出してしまいそうな、彼のい頃の思い出も記憶にある。だが、それを口に出すのははばかられた。
「それでしたら、學び直すようなことは必要ありませんね。……正直を申せば、その記憶を失ったということで々安心してもいます。い日の恥ずかしい思い出を暴されたら、自分でも何を仕出かすかわかりませんから」
にこにこしながら語るエルヴィスだが、セシリアの背筋には冷たいものが走る。
考えなしにい頃の思い出を口にしないでよかったと、心から思う。
セシリアは何も言わずに微笑み、流そうとする。
何にせよ、これで前世の悔いは解消することができた。
これからは、ただセシリアとしてだけ生きていくことができる。
エルヴィスもアデラインの殘した呪縛から解放され、二人の本當の未來はここから始まるといってもよいだろう。
「……これから、二人で幸せになりましょうね」
セシリアはエルヴィスを見上げながら、彼の頬にそっと手をばして微笑む。
「ええ、もちろんです。すでに十分幸せではありますが、さらに幸せだと思っていただけるよう、努力は惜しみませんよ。これからも、私の幸福はあなたと共にあります」
過去は終わったのだ。この先には新しい二人の道が広がっている。
二人はどちらからともなく顔を近付けていき、が重ねられた。
これにて完結です。
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