本日は朝の9時、晝の12時にも投稿しております。

まだ未読の方はそちらからご覧ください。

「…………っ！？！？」

本當に味しい食べというものは、言葉よりも先にでリアクションしてしまうものらしい。

やけに広いリビング。

その中央のテーブルで、ロイドが作った“ポトフ”とやらを口にした途端クロエは目を限界まで見開いた。

一口目に食べたベーコンの塊は噛んだ瞬間じゅわりと脂が染み出して、スモーキーな香りが鼻腔を駆け抜けていく。

二口目のにんじんはじっくりと煮込まれているのかほろりと溶けて、素材本來の甘味を存分にじられた。

三口目の玉蔥も四口目のウィンナーもどれも絶品で、すっからかんだった胃袋が歓喜に震えた。

どの材も下地となるコンソメスープをふんだんに吸っていて、程よい塩味と材から染み出した旨味が食を掻き立てる。

クロエは夢中で、ポトフをはぐはぐとかき込んだ。

「そんなに味しいか？」

対面に座るロイドが、クロエの飢えた野獣の如き食いっぷりをしげしげと見つめて言う。

「……っ！！」

クロエは慌てて口の中のものを呑み込み頭を下げた。

「はしたないところを、ごめんなさい……二週間ぶりのまともなご飯に、つい……」

実家で出ていた、家族が食べ殘したご飯がまともだったかという問題はさておき。

二週間、冷たくてい保存食や川でとれた魚、木の実や葉っぱや木のっこを食べていたからすると、文明のご飯はの深いところに染み渡っていくような味しさだった。

加えて、いつも自分が作ってばかりの立場だったから。

誰かが作ってくれた、という心の調味料がっているのもあった。

「こんなに味しいもの……ありがとうございます……」

心の底からのお禮をするクロエに、ロイドは何やら心地悪そうに頭を掻く。

「ただ材を切って煮込んだだけのズボラ飯なんだがな……そんなされるとは思わなかった」

そう言って、ロイドは黙考した後。

「ほら」

「えっ」

すっ、と自分の分のポトフをクロエの方へ。

「で、でもこれはロイドさんの……」

「大丈夫だ、まだ手をつけてない」

「え……いや、そっちではなくて……ロイドさんの分が無くなってしまうのではと」

「なんだ、そんなことか。尚更気にしなくていい。二週間は流石にないが、職業柄三日三晩水だけの生活など普通にあったからな。それに、腹が減ればまた作ればいい」

相変わらずの読めない表で、どこかズレた事を言うロイド。

ただ返してもけ取らんぞと言わんばかりの圧を放っていたし、正直なところクロエにとっては非常にありがたい提案ではあった。

ぐきゅるるるう……。

コラ！　腹の蟲！

「は正直だな」

ふ、とロイドが小さな笑みを口元に浮かべる。

クロエは今すぐにでもがあったらりたい気持ちであった。

「ありがとう……ございます……」

恐る恐る、ロイドの分のポトフもけ取る。

時間が経ってし冷めているはずなのに。

何故だががとても溫かくじられた。

自分の分を食べ終えた後、二つ目のにもスプーンをれる。

「……おいしい」

先ほど自分が食べた一杯目よりも、ずっと味しい気がする。

「本當に、おいしい……」

今度はゆっくりと、味わうように食べる。

するとその時、クロエの瞳の奧に熱が燈った。

心の奧の方から、何かが込み上げてくる覚。

脳裏に、実家での苦痛の日々が。

この二週間、何度も命を落としかけた経験がフラッシュバックする。

じわりと、視界が滲んだ。

「お、おい……どうした？　何か苦手なものでもっていたか？　いや、だったら一杯目で気づくはずだよな……」

「ちがっ……違うんです……」

初めて揺を浮かべるロイド。

ぽろぽろと涙をこぼしながら、クロエは言う。

「味しくて……味しく、て……ほんと、それだけで……」

ベーコンも、人參も、ウィンナーも、玉蔥も、スープも。

ちゃんと味をじられる。

（私はちゃんと、生きている……）

その事に、心の底からほっとしたし。

何よりも、嬉しかったのだ。

「……気にせず、ゆっくり食べろ」

こくりと、クロエが頷く。

今までずっと、人にする側だったから。

誰かに優しくしてもらう事も本當に久しぶりで、それもクロエの涙腺を緩ませていた。

先程よりもしょっぱくなったポトフを、クロエは嗚咽をらしながら食べ進めた。

クロエが食べ終わるまで、ロイドは何も言わずじっと待ち続けてくれた。

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