《【書籍化・コミカライズ】実家、捨てさせていただきます!〜ド田舎のげられ令嬢は王都のエリート騎士に溺される〜》第17話 私は何をしたいのか

「好きにしろ、って言われても……」

ロイドが家を出た後、クロエは呟く。

がらんとした部屋に一人、自分は何をするべきなのかを考える。

「……とりあえず、顔を洗って……著替えて……」

朝のルーティンを一つ一つ口にしながら実行する。

洗面臺に置かれた水桶で顔を洗い、カバンから替えの服を引っ張ってきて著替えた。

カバンは雨に濡れたとはいえ、雨よけの布を上から被せていたため中のものは無事だ。

天気の変わりやすい田舎の必須アイテムが役に立って良かったとクロエは安堵する。

「さて、と……」

朝のルーティンは終わった、次は……。

ぐう……。

腹の蟲がご飯の要求をしてきた。

必然的にやる事が出來たと、クロエはほっとした。

リビングへ移する。

機の上に、昨日のあまりのポトフとパン、ベーコンやウィンナーを焼いたもの、エトセトラエトセトラ。

何やら見たことのない、ブロック狀の固形もお皿に乗せられている。

その橫には“攜帯食”とパッケージされた小さな箱もあった。

箱を開けると、ブロック狀固形がいくつもっていた。

なるほどこれは攜帯食と呼ばれる料理らしい。

見たことのない料理に、クロエの胃袋がきゅっと音を立てる。

「いただきます」

手を合わせて、ロイドが殘していった料理を一つずつ味わっていく。

味しい……これも味しい……」

味よりも効率を徹底重視したシンプルご飯のオンパレードだったが、今のクロエにとっては超ご馳走だった。

攜帯食とやらも齧ってみる。

(甘味控えなクッキーみたい)

パサパサで単一的な味だったが、味わったことのない新食でちょっと面白い。

「ご馳走様でした」

あまり食べすぎると、けなくなってしまう。

まだいけるぞと意気込む胃袋に待ったをかけて、クロエは食事を終えた。

「……さて」

困った、やる事がなくなってしまった。

リビングのソファに座って、考える。

「私は、何をしたいんだろう」

聲に出してみるも、浮かばない。

実家にいた頃は常に誰かに命令されて家事手伝いやら書類仕事やらしていたし、その他の時間は疲れ果てて寢てばかりだった。

特段趣味に費やせるような時間もなく、自分が何をすれば楽しいのか、嬉しいのかが全くと言ってわからなかった。

でも、確かに変わった事はあった。

それは、自分が何をしたいのか、じっくり考える時間が出來たということ。

ソファの上で天井を見上げて、クロエは自分の気持ちにそっと耳を澄ませた。

最初は何も聞こえてこなかったけど、しずつ、徐々に自分の求が形を帯びてきた。

(ロイドさんの役に立ちたい……)

自分だけで完結するのではなく、助けてくれたロイドのために何かをしたい、と思った。

そしてあわよくば……。

「ロイドさんに褒められたい……」

言葉にしてみたら、のあたりがむずくなった。

ソファに顔をばふんっと墜落させてから、じたばた。

う〜〜……あ〜〜……と、突然急上昇した顔の溫度をたっぷりと時間をかけて宥め、落ち著いてからを起こす。

「……よしっ」

の前で拳を握る。

やることは決まった。

まずは……。

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