ローズ王國の王都、リベルタ。

その王城の第一騎士団の訓練場。

控室で剣の手れをするロイドは仕事著である甲冑姿。

一見すると真面目な表でいつも通りに見える。

しかし彼は心、非常に悩んでいた。

（さて……どうしたものか……）

悩みの種は目下、昨日助けたクロエというについてだ。

正直、助けたのは勢いだった。

王都の騎士団に所屬しているというだけあって、ロイドも強い正義と優しさを兼ね備えている。

下衆な男三人の餌食になろうとしているを放って置けるはずもなく、非番でありながら救出した。

そこまでは良かった。

問題はその後で、気絶した上に調が悪そうなクロエを放っておけず、さほど遠くない家に連れ帰った。

調が回復次第、憲兵に引き取ってもらう予定だったが……話を聞いた所かなり深い訳がありそうで、引き渡すよりもしばらく保護をする方向の方が良さそうだと判斷した。

もちろん、國に仕えるとしては褒められた行為ではないことは重々承知だ。

國に対する忠誠心も規律の持ち合わせもロイドには充分にあったが……過去、國の命にだけ従った結果、助けられた命も助けられなかった時の事も思い出し、この判斷に至った。

それに加え……。

（なんというか……放って置けないんだよな……）

いつも流し込むように食しているポトフを味しい味しいと泣きながら食べた彼。

初めてのお風呂に目を輝かせていた彼。

子供のように目をり眠そうにしていた彼。

王都という都會では、どこかれた人ばかりだ。

その中で、クロエというは純粋で真っ直ぐで裏表のない、ロイドからすると珍しい人間に映っていた。

相當な田舎から出てきたと言ってたから、納得ではあったが。

そんなクロエの様子を見ていると、のあたりが溫かくなる。

もうし彼を観察していたい、そんな気持ちを抱いたのだ。

理ではよい狀態ではないと思いつつも、ではもっと彼と一緒にいたいと思っている。

これまで剣一筋で生きてきた彼にとって、初めてのであった。

自分がの起伏がなく表に出ない質で本當に良かったと心底思う。

もし表に出てしまう格だったら、昨日今日で數多の間抜け面を披してしまっていたに違いない。

兎にも角にも、ずっと今の狀態のままというわけにはいかない。

どうするのが最善手か考えているものの中々良い落とし所が見つからず悩んでいると。

「さっきからずっと同じ所しか磨いてないけど、何をぼーっとしてんだ？」

息をついてから振り向く。

長めの金髪、澄んだブルーの瞳。

関係では一秒たりとも困ったことはないのだろうと想像に容易い容姿。

「なんか悩み事か？　ん？　人生経験富な副団長様になんでも相談してみ？」

いつもの軽薄そうな笑顔を浮かべて、第一騎士団の副団長フレディはそう言った。