《【書籍化・コミカライズ】実家、捨てさせていただきます!〜ド田舎のげられ令嬢は王都のエリート騎士に溺される〜》第22話 よくやったな

ロイドが仕事に出て、晝食を食べた後。

好きにしろ、と言われてクロエが最初にしたいと思ったのは家の掃除であった。

多忙な男の一人暮らしだと仕方がないのかもしれないが、ロイドの家はお世辭にも掃除が行き屆いているとは言えなかった。

目を凝らさなくてもわかる床の埃、汚れ、水垢の多い臺所、散らかった機の上エトセトラエトセトラ……。

実家では毎日、ただっぴろい屋敷を掃除し清潔を保っていたクロエにとって、この家の狀態はいただけない。

子供の頃から日々やらされてきた掃除に関しては、クロエはかなりのスキルを持っていた。

……それだけに、極限の狀態だったとは言え自分の痕を拭き殘してしまったのは未だに悔やまれる失態である。

それはともかくとして。

ロイドの役に立ちたい、その一心でクロエは掃除を敢行した。

実家の屋敷よりかは全然コンパクトとは言え、二階建ての一軒家全てを掃除するのは時間が足りない。

なのでまずは玄関、廊下、リビング周りを中心に掃除を行った。

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探して見つかった掃除道だけでは限界があったが、それでもぱっと見で「綺麗……」とわかるくらいにはピカピカに磨き、散らかっていたものを片した。

一通り掃除を終える頃にはも傾きかけていて、達と充実と共に額の汗を拭っている時。

(ロイドさん、きっとお仕事でお疲れだろうな……だからお風呂を溜めて……そうだ、夕食も作ろう、騎士団という事でく仕事でしょうから、小麥とか多めで元気が出る料理を……)

考えていたら、もっともっと々してあげたいと思うようになり、気がつくと使用人さながらのきを取ってしまっていた。

その振る舞いだけを見ると実家にいた頃と同じだったが、機が違う。

今までずっと命じられるがままにいてきたが、自分から“してあげたい”と思ってくのは初めてのことであった。

それゆえに。

「やけに家が綺麗になってる気がするのだが、掃除をしてくれたのか?」

ロイドが気づいてくれた事は、とても嬉しかった。

「あ、わかりますか? 玄関と廊下、リビング周りを掃除したんです」

弾んだ聲で言うクロエに、ロイドは不思議そうな顔をする。

「好きにすればいい、と言ったと思うのだが」

「これが私の“好きなこと”でしたので」

にんまり笑うクロエに、ロイドは深く考え込んだ。

「……これほどして貰った以上は、何か禮をしなければならないな」

「いえいえ、お気になさらず。これも一宿一飯の……」

「風呂に飯、掃除と、もう一宿一飯以上の事はしてもらっている」

「そんなことは……」

ないと思うクロエ。

しかし家事全般崩壊マンのロイドにとっては、クロエにやって貰ったことはとても大きな価値を持つとじていた。

真面目な顔でロイドは言う。

「騎士たるもの、恩には報いるべし。何か俺の出來る事で、して貰いたいことがあったら言ってくれ」

「して貰いたこと……」

急に言われても、思いつかない。

別に何かお禮をしてしいと思ってやったわけではない、だけど……。

──ロイドさんに褒められたい。

そう思った記憶が蘇ってきて。

「じゃあ、その……もし、私のお料理やお掃除が、助かったなって思ってくださったのなら……」

半ば勢いに任せて。

もじもじと恥ずかしそうに、クロエは申し出る。

「よくやったな……って言ってください」

自分でも何を言ってるんだって、思う。

変な子だと思われるんじゃないかという心配もあった。

でも、が抑えきれなかった。

「……そんなものでいいのか?」

「それがいいんです」

よくわからんが、助かったのは事実だし、それで良いのなら……といった顔をして、ロイドは口を開く。

「よくやったな」

人を褒め慣れていないロイドの口調はどこかぎこちないものではあったが。

それでもその言葉は、クロエの心にじわりと染み込んだ。

今までやって當たり前だと言われ続けてきた。

なんならやったとしても罵倒されたり暴力を振るわれたりしてきた。

だから、自分のやったことがちゃんと評価されて、助かったと思ってもらえて、褒めてもらえる。

こんなに嬉しいことはなかった。

「……えへへ」

もう、頬の緩みは抑えきれなかった。

の奧底から嬉しいが溢れて止まらなかった。

こんな些細な言葉で、にまにまと心底嬉しそうにを揺らすクロエを見て。

ロイドのがまた、きゅうっと締まった。

(まただ……またこの覚だ……)

そっと、ロイドは自を押さえた。

……その時、ロイドの頭にある提案が浮かんだ。

この提案をすればもしかすると、クロエにとっても自分にとってもウィンウィンなのでは、という打算的な提案。

でもきっとそれは、ロイド自がまだクロエという人間を見ていたい、一緒にいたいと言うから出てきた提案でもあった。

本人の自覚があったかは、定かではないが。

「……一つ提案があるのだが」

「はい、なんでしょうか?」

クロエの目を見て、ロイドは尋ねた。

「うちで家政婦を、やってみるつもりはないか?」

ロイドの提案に、クロエは目を瞬かせた。

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