《【書籍化・コミカライズ】実家、捨てさせていただきます!〜ド田舎のげられ令嬢は王都のエリート騎士に溺される〜》第28話 朝ごはん

「……おはよう」

「おはようございます!」

リビング。

ちょうど朝ごはんが出來たタイミングで、ロイドが起きてきた。

寢起きはあまり得意では無いのか、どこかボーッとしているように見える。

「あっ」

クロエが何かに気づき、ロイドのそばに駆け寄った。

「ロイドさん、寢癖ついてますよ」

「む……」

ロイドの頭の斜め上らへんでぴょこんと跳ねた黒髪を、クロエは見上げてせっせと直す。

「はい、これでよし」

「……気付かぬ寢癖は剣士の恥」

「なんですか、それ」

くすりと口に手を當てて笑うクロエ。

一方のロイドは何故か、先程のぼんやりとした瞳が完全に醒めていた。

「朝ごはん、いつもはどうしています?」

「食べないか、攜行食を丸齧りか」

「よくそれでお仕事持ちますね……」

「問題ない、ジャングルでは三日三晩飲まず食わずなどザラだった」

「ジャングルで度々ひどい目に遭ってますね……簡単ですが朝食を作ったので、良かったらぜひ」

「作ってくれたのか?」

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「ええ、せっかくなので」

ロイドは驚いたように目を丸めた後、言う。

「なら、いただくとしよう」

テーブルに著くロイドの前に、深めの丸皿を持ってくるクロエ。

丸皿には何か、荒い狀のの上に蜂的なものがたっぷりかけられている。

ほかほかと湯気だっていて溫かそうだ。

何やらふわりと甘い香りが漂ってきて、空っぽだったロイドの胃袋をきゅっと刺激した。

「どうぞ」

スプーンを手渡され、一口。

ロイドのスプーンが口の中にったまま止まった。

「ど、どうでしょうか……?」

張気味に聞いてくるクロエ。

一口目をゆっくり堪能し、味わってからロイドは一言。

味いな、これは」

ザクっとした食の後に蜂とバターの味が流れて來たかと思うと、ほのかにチョコの風味が鼻を抜ける。

まだ起ききっていない朝の脳に最適で、これからかすとしては最高の栄養が固まっているようにじた。

「良かったです!」

喜びと安堵の表を浮かべるクロエ。

「多分ですが、コーヒーとも合いますよ」

「……なるほど」

いつの間にか淹れられていたコーヒーも啜ってみる。

「これは……合うな」

甘みが強いのと水分を取られるので、苦味のあるコーヒーはベストマッチだった。

マリアージュとはまさにこの事だろう。

ザックザックと食べ進め、コーヒーを啜るロイド。

ふと、思う。

「しかし、こんな食材、家にあったか?」

「あ、それ攜行食です」

「……。……!?」

ぱちくりさせた目を、ロイドは見開いた。

「出勤時間がわからなかったので、簡単に作れてかつ素早く食べれるものにしました。味としては薄いチョコクッキーみたいなじでしたので、一度々に砕いてからバターと蜂をトッピングした後、溫めてみたのです。甘いものが味しい朝に食べるにはちょうどいいかなと」

「魔法みたいなことをするな、君は」

なんでもない風に解説するクロエに、ロイドは賞賛の言葉を贈る。

実家ではコックの怠惰によって本來仕れられる予定だった食材が未荷、なんて事が多々あったので、殘りやありあわせて新しい料理を作るのはクロエのお手のものであった。

この味とこの味を組み合わせたら味しくなる、ならないは大決まっているので、今回もその応用をしたのである。

「ま、魔法だなんて、大袈裟な……」

言いつつも、ぽりぽりと頬を掻き嬉しそうにするクロエ。

「ちゃんと自分の分は食べたか?」

「はい、もちろん」

「ならいい。……昨日は、しっかり眠れたか?」

「あ……はい、お様で……」

急にぶっこまれたが、昨晩の事もあったのでロイドの気遣いからきた質問なのだろうと思う。

「あの、々とご迷を……」

謝罪を口にしようとするクロエを、ロイドが制した。

「謝るようなことはしていない。だから、謝らないでいい」

「……はい、えっと……ありがとうございます」

「それでいい」

ふ、とロイドは口元に笑みを浮かべ朝食に戻った。

あまり見られないロイドの笑みに、なんだか得したような気分になる。

そんなやりとりをしつつ、ロイドはあっという間に朝食を平らげた。

「ご馳走様、朝から味いものをありがとう」

「どういたしまして」

クロエは笑顔で応えた。

誰かのために作った料理をおいしいと言ってもらえるのは、それだけで幸せな事だ。

改めて、クロエは噛み締めるのであった。

その後、仕事著に著替えたロイドが戻ってくる。

「あ……」

腰に差さった剣を見て、思わず聲をらすクロエ。

「すまん、配慮不足だった」

「ああ、いえいえ……!!」

後ろに剣を隠そうとするロイドにクロエは慌てて言う。

「鞘に収まっていたら大丈夫みたいなので……多分、尖った刃のギラギラしたじがダメなんだと思います……」

「……なるほど」

ロイドが剣を元の位置に戻す。

「お気を遣わせてしまってごめんなさい」

「問題ない。また、対応策はゆっくり考えればいいのだからな」

クロエとしても、昨日発覚したトラウマゆえ何がダメで何が大丈夫なのか、正確にはわかっていなかった。

昨日のシチュエーションだと、心構えがない狀態で急に刀が見えたからパニック癥狀が出たのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

この辺りはこれから探っていく必要がある。

そんな事を考えながら、玄関までロイドを見送るクロエ。

「今日も夕方くらいに帰る。君は?」

「昨日仰ったように、せっかくなので生活に必要なを諸々買いに行こうかなと」

「そういえば、そんな事を言ったな。……大丈夫か?」

「これでも人しているですよ、晝間に一人でお使いくらい大丈夫です」

「そうか……それなら、この家を出て左の通りをずっと行ったところにある商業地區で買うといい。貴族用達の店が多いし、見回りも充分に巡回しているから治安もいい」

「わかりました、ではそこで買い揃えてきますね。教えて頂きありがとうございます」

「問題ない。そうだ、金は……」

ロイドは懐から、金貨と銀貨を何枚か取り出しクロエに渡した。

「これだけあればおそらく足りるだろう」

「じゅ、充分過ぎますね……」

「給料の前金だと思ってくれ。余った分は好きに使っていい」

「わかりました、何から何までありがとうございます」

「気にするな。では、行ってくる」

「行ってらっしゃいませ」

小さく手を振って、クロエはロイドを送り出した。

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