《快適なエルフ生活の過ごし方》01:始まりは突然に

朝起きたらエルフになっていた。

なんのことやら分からないと思うが私も何が起こってるのか分からない。

昨晩、歓迎會とやらでしこたま飲んだ。それはまあいい。私は新社員だったから支店長が奢ってくれた。やたらとセクハラしてくる係長も居たけど先輩が一緒だったからなんとかなった。

その後カラオケ。私はお酒がるとびたくなるタイプなので聲を張り上げて歌った。なんか若干ドン引きされてる様な気もしたがそれはいい。……いや、良くないな。先輩には謝っとこう。

じゃなくて!

そう、それから確かネトゲのボーナス目當てにログインしてそのまま寢落ちた。うん、間違ってない。

朝の目覚めがスッキリしていた事に驚いたが眠い目をりながら鏡を見た瞬間に固まった。顔は私の顔だ。何しろ20年の付き合いだからそれは間違いない。

ただ、私の耳が、その、橫に長くびていた。いわゆるエルフ耳だ。

寢惚けてた頭が覚醒してまずした事は……會社の上司に電話。

「あの、支店長。おはようございます。ちょっとエルフになったので會社をお休みさせていただきたいのですが……」

どうしよう、何を言ってるのか自分でも分からない。

「はあ? 何を言っとるんだ? エルフ? なんだそりゃ? 寢言言っとらんで早く會社にこい!」

まあどんな事があろうとも會社に行くのは社會の歯車たる私たちの使命。手早く支度をして會社に向かう事にした。朝ごはんは食べてる暇無かったよ!

支店までは徒歩で行ける距離なのでその辺は幸いだった。

「おはようございます」

分厚いドアを開けて店る。

「あ、霜月さんおはよ……う?」

聲を掛けてくれたのはいつも一番に來て掃除をしてる同期社の太田君。語尾がおかしかったのでそっちを見るとほうきとちりとりを持ったまま固まっていた。

「うん、太田君、おはようございます」

私の言葉で再起が掛かったのか、太田君は掃除道を取り落として駆け寄って來た。

「どどどどどどどど」

「落ち著いて」

「どうしたの、その耳!? 會社にコスプレしてきちゃまずいよ、さすがに!」

あー、そう思うよね。私は耳をピクピクかしながら言った。

「あのね、朝起きたら生えてたの」

「はぁー?」

まあ無理もない。私だって逆の立場なら「何言ってんだ、コイツ」ってなるもの。

「おはよう、二人とも。相変わらず早いね」

副支店長が來た。うちの副支店長は朝早くに來る。……家に居場所がないのかな? いかにも定年間際というオーラがバリバリ出てる穏やかな人だ。定年後は縁側でお茶を飲みながら貓を抱いてそう。だいたいにおいて支店長を宥めてくれる人徳者だ。

「おや霜月さん、今日はなんかじが違うねえ」

えっ、その程度?

「はあ、実は……耳が……朝起きたらびてまして」

たどたどしくも説明する。

「おたふく風邪かね? 調は大丈夫かい?」

いや、さすがにおたふく風邪はないでしょ! でも一応上司だからちゃんと答えないと。

「あ、はい、熱とかは特にないと思いますし、くしゃみとか咳とかもありません」

「なら、いいんじゃないかな」

「……いいんですかね?」

アカン、なんかこの人と話してるとゆっくり時空に引きずり込まれる! ……まぬけ時空じゃないよ?

「支店としては仕事してくれればそれで十分だよ。さあ、準備続けようか」

そうこうしているうちに支店のみんなが出社してきた。テラーの先輩は開口一番「なにそれウケるー」だった。係長はけしからん!と文句を言っていたが本であるし自分も困ってるというと「ワシが知るか!」とそのまま席についてふんぞり返った。他の人たちは……特に話しかけて來ることも無く淡々と作業をしている。田舎の小さな金融機関の朝は忙しいのだ。

支店長の車が著いたのでみんなでお迎えの準備。いっせーのでさんはい。

「おはようございます!」

「ああ、おはよう……ん? 霜月さん、ちょっと」

支店長に呼ばれてしまった。一どうなるんだろう……

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